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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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楽しい夜更かし準備と枕戦争

「じゃあ、先に湯を使ってくるね」

「おう、ごゆっくり」

 部屋に運んでもらった大量のメモを整理していたマークとキムは、湯殿へ向かうレイの背中を見送ってから揃ってため息を吐いた。

「まあ、予想はしていたけど竜騎士隊の皆様方、ましてやアルス皇子殿下と夕食会をご一緒させていただく日が来ようとはなあ」

「だよなあ。冗談抜きで、何を食べたのかの記憶が曖昧だよ」

「それは俺も同じだよ」

 顔を見合わせた二人は、そう言ってもう一度揃って大きなため息を吐いたのだった。

「うん、とりあえずこのメモを片付けよう」

「そうだな。とりあえず出来る事から片付けよう」

 元々それなりに整理していたので、温まって赤毛に負けないくらいの真っ赤になったレイが湯殿から出て来た頃には、大量にあったメモはほぼ片付けられていて、手伝う気満々だったレイを残念がらせたのだった。



「ただいま戻りました〜〜〜!」

「二人とも早すぎ。兵舎とは違うんだから、もっとゆっくりしてきてくれてもいいんだよ」

 本当にあっという間に湯を使って戻ってきた二人を見て、笑ったレイは壁際に置かれたソファーに座って読みかけていた本を閉じて顔を上げた。

 この部屋の本棚はほぼ空っぽだったのだが、気を利かせたラスティがレイが好きそうな旅行記や物語などを何冊も用意してくれてあったのだ。

「おお、部屋の模様替えか」

「これは遊びがいがありそうだな」

 部屋を見回した二人が苦笑いしながらそう言い、壁面のソファーに戻ったレイの隣に並んで座った。

 今、この部屋には数名の執事達が来ていて、枕戦争に備えた追加のソファーや衝立を部屋に配置してくれている真っ最中だ。

 なので二人が湯を使っている間、レイは執事達のお仕事の邪魔をしないように、壁面のソファーに避難して大人しく本を読んでいたのだ。

 元々この部屋にはベッド以外はテーブルと椅子、それから壁面に作り付けられた大きな本棚くらいしかないので、追加のソファーや衝立を置いてもまだかなり余裕がある広さだ。これなら思いっきり遊んでも大丈夫だ。

 座っていたソファーから立ち上がったレイは、追加の大きなソファーを運んでくれている執事の邪魔をしないように壁沿いに動いて、とりあえず読んでいた本を本棚に戻した。

 マークやキムと一緒にこの瑠璃の館に泊まる時に使うのは、普段レイの自室にしている部屋ではなく、もっと大きなベッドが二台置かれたこの広い部屋だ。大きなベッドを二つくっつけて用意してくれてあるので、三人が並んで寝ても余裕の広さになっている。

 この部屋は、今回のように二人が泊まる時だけでなく、枕戦争をする前提でも用意されている部屋なのだろう。

 あっという間に片付いた部屋を見て、レイ達は笑顔で拍手をしたのだった。

 壁際に並べられたワゴンには、冷えたカナエ草のお茶だけでなく様々なお酒やおつまみ、お菓子や果物などがたくさん用意されている。

「それでは我ら一旦下がらせていただきます。どうぞ、存分に枕戦争と夜更かしをお楽しみください」

 笑顔のアルベルトがそう言い、執事達が揃って一礼してから下がっていった。

「いいねえ。大人数でやるならこうでなくっちゃな」

 広い部屋に置かれたやや不自然な配置のソファーや衝立を見て満足そうにキムがそう呟き、レイとマークも満面の笑みで揃って大きく頷いたのだった。



「おお、もう完璧に準備万端整っているな」

 その時、ノックの音がして枕を抱えたロベリオ達若竜三人組が揃って入ってきた。

 その後ろには同じく枕を抱えたルークとマイリー、そして二つの枕を抱えて満面の笑みなティミーもいる。

「これで全員集合だね! えっと、じゃあこの人数だし先にチーム分けをする?」

 そう言ったレイが、壁面のワゴンのところへ行って人数分のマドラーを取りに行った。

「レイルズ、それならせっかくだから班を三つに分けよう。三色取ってくれるか」

 笑ったルークの言葉にレイも満面の笑みで頷き、言われた通りに三色のマドラーを三本ずつ取って戻ってきた。

「じゃあ、班分けをするから一本ずつ取ってください!」

 嬉しそうなレイがそう言って、布で先を包んだマドラーを差し出す。それを見た全員が次々にマドラーを取っていった。



「あ、俺は青が出たぞ」

 ルークがそう言って、先の青いマドラーを上げて見せる。

「はい、俺も青です」

「あ、僕も青ですね」

 マークとティミーがそれぞれ先の青いマドラーを手にルークの側へ行く。

「僕は黄色でした!」

 笑顔のレイが、そう言って先が黄色のマドラーを高々と掲げた。

「はあい、黄色で〜す」

「俺も黄色だよ」

 そう言ってレイの側に来たのはロベリオとマイリーだ。

「じゃあ赤チームはこの三人だな」

 笑ったユージンの言葉に、タドラとキムが笑って先の赤いマドラーをそれぞれ上げている。

「はあい、じゃあマドラーは危ないので回収しますね〜〜〜」

 笑顔のレイがそう言い、ガラス製のマドラーを急いで回収してワゴンに戻す。

「では、枕戦争開始! 最後までベッドを占領した班が勝者だ!」

 ルークの宣言と同時に、それぞれ手にしていた枕を振り回す。

 大急ぎで戻ったレイは、歓声を上げて大きく枕を振りかぶって近くにいたルークに殴りかかり、笑ったルークも手にしていた枕でレイを殴り返した。

 マイリーとロベリオは、二人揃ってユージンとタドラに殴りかかり、さすがにマイリーを殴る勇気のなかったキムが慌てた転がって逃げたところにマークとティミーが二人がかりで襲いかかった。

 あちこちから吹き出す音と、堪えきれないような笑い声と共にボスボスと枕で殴り合う間抜けな音が部屋に響く。



「よし、これでいいな。誰に行く?」

「そりゃあ、まずは主催者をおもてなししないと!」

 何故か壁面の本棚に積み上がっていたシーツを手にしたルークとマークが、揃って満面の笑みでそう言うとレイの背後からシーツを広げて飛びかかった。

 完全に死角からの攻撃だった為に気づかなかったレイが、あっという間にシーツでぐるぐる巻きにされる。それを見て、二人だけでなくほぼ全員が満面の笑みで飛びかかって、悲鳴を上げて床に転がるレイをくすぐり始めた

「待って! 無理無理無理!」

 両手を胴体ごとシーツでぐるぐる巻きにされたせいで、全く抵抗出来ないレイが情けない悲鳴を上げる。

「まあ、一応同じ班だし助けるべきかな?」

「そうですねえ。一応助けましょうか」

「一応じゃあなくて、すぐに助けてください!」

 笑ったマイリーとロベリオの言葉にレイが慌てたようにそう叫ぶ。それを聞いてまたしてもあちこちから吹き出す音が聞こえ、最後は全員揃っての大爆笑になったのだった。

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