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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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怪我の手当てとのんびりな朝食の時間

「全く、相変わらずですねえ貴方達は。いい加減、レイルズの頭突きの威力を理解しなさい。それとも、頭突きされるのが趣味なんですか?」

 ベッドに横になったキムの額に湿布を貼ってくれたハン先生が、呆れたように笑ってキムの腕を叩く。

「いや、誓って趣味なんかでは有りませんって! これは事故です! 事故なんですって!」

「まあ、本人がそう言うのなら、そういう事にしておきましょう」

 真顔で首を振るキムの言葉にもう一度呆れたように笑ったハン先生は、キムの隣に座るレイを見た。

「そして、貴方のミスリルの頭蓋骨も健在のようですね」

「ミスリルの頭蓋骨!」

 揃って吹き出したマークとキムの叫びに、遅れてレイも吹き出す。

「ハン先生酷い! 僕だって……えっと、ちょっとは痛いのに!」

「ちょっとかよ!」

 キムの抗議の叫びにまたマークが吹き出し、レイも遅れて吹き出す。

「まあ、仲が良くて結構な事です。それにしても、お泊まり会があると聞いて来ましたが、やはり正解でしたね。まあ、いきなり今朝から出動するとは思っていませんでしたけれどね」

 テーブルに広げていた湿布の準備を片付けながら、笑ったハン先生がそう言ってベッドを振り返る。

「あはは、どうしてこんなに早くハン先生が来てくださったのか不思議だったんですけど、やっぱりそうだったんですね。いつもありがとうございます!」

 笑ったレイが嬉しそうにハン先生にお礼を言う。

「お前が言うな!」

「そうだぞ。諸悪の根源!」

 マークとキムの左右からの抗議の叫びに、堪えきれずにハン先生が豪快に吹き出す。

「酷い! 諸悪の根源とか言われたし〜〜〜」

 ベッドに倒れ込んだレイの抗議は、残念ながら誰にも聞き入れられずに笑い声にかき消されたのだった。



「はあ、朝から大騒ぎだな。ええと、とりあえず顔洗って来るよ……って、これがあったら顔洗えないんですけど、どうしたらいいですか? 貼ったばかりだけど、外してもいいですか?」

 ベッドから起き上がり、立ち上がったキムが今更気がついたと言わんばかりに自分の額を指差してハン先生を見る。

「ああ、湯を用意してくれていますから、貴方はここで顔を拭いておいてください」

 控えていた執事がワゴンに乗せた木桶を示すのを見て、キムが情けない声を上げる。

「ええ、そんなわざわざ申し訳ない」

「いいから、そっちを使ってよ。僕らは洗面所へ行ってくるからさ」

 笑ったレイがキムの背中を叩き、マークと一緒に洗面所へ駆け込んでいく。

「お待ちくださいレイルズ様。お手伝いします。今朝の寝癖もなかなかに豪快ですよ。それにマーク軍曹の寝癖もも」

「それを言うなら、キム軍曹の髪もなかなかですよ。では交代しますので、あとはよろしく。後ほど、朝食の際には、せっかくですから私もご一緒させていただきます」

 笑ったハン先生は、そう言って控えていた執事と交代する。

 キムは、結局寝癖を直したレイ達が洗面所から戻ってくるまでの間に、執事が用意してくれた湯で顔を拭き、執事に寝癖を直す手伝いをしてもらうという、ある意味貴重な体験をする事になったのだった。



「はあ、良かった! 今朝も昨夜と同じだ!」

「ああ、本当だ! よし、これならゆっくり食べられるな」

 全員が寝癖を直して身支度を整えたところで、待っていてくれたハン先生と一緒に別室に案内されたマークとキムは、昨夜と同じように部屋の壁面に用意されたテーブルに並んだ朝食とは思えないような豪華な料理の数々を見て喜びの声を上げた。

「あはは、確かに今回はのんびり出来ていいね。でも、せっかく礼儀作法を勉強しているんだから、少しくらいは改まった場があってもいいと思うんだけどなあ」

「いやいや、勉強はあくまでも勉強だからさ」

「そうだぞ。そもそも農家出身の田舎者に何を期待するんだよ」

「俺達には、こういうのが性に合っているんだって」

「だよなあ。料理の味がしないような改まった席なんて、考えただけで胃が痛くなりそうだよ」

 真顔のキムとマークがそう言い、揃ってうんうんと頷いている。

「えっと、でも……」

 確か、昼食は両公爵とアルジェント卿を招いての昼食会だったはずだ。

 マークとキムは、お披露目会の後もまだしばらくここにいてくれると聞いているので、当然彼らも昼食会に参加するのだと思っていたレイは、戸惑うようにそう呟いてラスティを振り返った。

 レイが言いたい事を理解しているラスティは、にっこり笑って頷くと口元にゆっくりと指を立てた。

「逃げられてはいけませんからね」

 ごく小さな声でそう言われて、その瞬間にラスティの言いたい事をこちらも理解したレイは満面の笑みで頷いた。

「ん? どうしたんだ?」

 満面の笑みで頷くレイに気づいたマークが、不思議そうにそう言ってレイを覗き込む。

「なんでもない。ほら、取りに行こうよ!」

 誤魔化すように笑ったレイは、用意してくれてあったお皿を手に取ると嬉々として料理を取りに行った。

「ああ、俺も取る〜〜!」

「待って待って、俺も取るよ!」

 レバーフライをまとめて取るレイを見て、マークとキムも慌てたようにそう言ってお皿を手に後に続いたのだった。

「おやおや、皆朝から元気ですねえ」

 呆れたようにそう呟いたハン先生は、空のお皿を持ったままそう呟き、彼らの料理争奪戦が一段落するまで笑いながら待っていたのだった。

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