瑠璃の館へ!
「はあ、それじゃあ僕は書斎にいますね」
「かしこまりました。お二方がお越しになれば、お知らせいたします」
一礼するアルベルトに、レイは何か言いかけて口をつぐんだ。
『ん? いかがした?』
ふわりと現れてレイの右肩に座ったブルーの使いのシルフが、そんなレイを見て少し心配そうに顔を覗き込んだ。
「えっと、せっかくだからお出迎えしたかったんだけど、寒いしお任せすべきだよね」
小さな声でそう言ったレイに、ブルーの使いのシルフは納得したように笑って頷いた。
『それなら、彼らが近くまで来たら知らせてやる故、今は書斎へ行って本を読んでいるといい』
「あ、そうだね。じゃあよろしく」
嬉しそうに笑ったレイは、立ち上がって大きく伸びをするとそのままラスティと一緒に書斎へ向かった。
「ううん。何度見てもすごい量だね。これが全部僕の本だなんて夢みたいだ。だけどこれを全部読むのは一生掛かっても出来ないよね」
書斎に入ったところで立ち止まり、びっしりと本棚に詰まった様々な本を見たレイが嬉しそうにそう呟く。
前回の屋敷のお披露目会の際にティミーのお母上やガンディからまた新たな本を贈られた本棚は、前回よりもさらに本の量が増えている。
本棚を端から端まで見て満足のため息を吐いたレイは、精霊魔法に関する本が並ぶ一角で立ち止まり、その中から光の精霊魔法に関する本を数冊手に取るとソファーに座って読み始めた。
レイの右手首に座ったブルーの使いのシルフは、何も言わずに一緒になってその本を覗き込んでいたのだった。
「かしこまりました。では、今からそちらへ向かいます」
くるりと回って消えていく伝言のシルフを見送ったマークとキムは、顔を見合わせて笑顔で頷き合った。
今のは、ラスティが寄越してくれた伝言のシルフで、レイルズが待っているのでいつでも来てくれていいとの知らせだった。
もちろん、いつでも出発出来るように準備万端整えて待っていた二人は、それを聞いて嬉々として立ち上がった。
「よし、じゃあ行こうか!」
「おう、またあの書斎の本を読ませてもらえるのかと思うと、もう楽しみで仕方がないよ」
手を叩き合った二人は、それぞれに用意してあった包みを書類の入った木箱の上に置き、木箱を抱えて部屋を出て行った。
事務所に立ち寄り外泊届を出してから厩舎へ向かい、ラプトルを借りて手早く鞍と手綱を取り付ける。
鞍の後ろに取り付けた荷物入れに木箱を無理やり突っ込んで覆いを被せ、反対側にもう一つの包みを突っ込む。
「では、行ってまいります」
笑顔で見送ってくれる顔見知りの第二部隊の兵士達に敬礼したマークとキムは、そのままラプトルに飛び乗り、ゆっくりとラプトルを進ませて厩舎を出て行った。
「うう、寒い!」
「確かに寒いな。厚手のマントくらいじゃあ防ぎきれないって」
駐屯地の敷地の外を大きく迂回して一の郭へと続く道を早足でラプトルを進ませていた二人だったが、あまりの寒さに胸元をかきあわせて首をすくめる。
すると、火蜥蜴が二人の指輪からそれぞれ出てきて彼らの胸元に来て止まった。
驚く二人に、彼らの火の守り役の火蜥蜴達は得意そうに目を細め、口を開けてごく小さな火の玉を一瞬だけ吐いて見せてからそのまま胸元に潜り込んでいった。
その直後に胸元がほんわりと暖かくなってさらに驚く。
「うわあ、これっていつもレイルズがやっている、あれだよな?」
「多分そうだと思うぞ。ええ、俺達の火の守り役の火蜥蜴達まで出来るようになったんだ」
驚くマークとキムが、お互いの顔を見てからそれぞれの胸元を見た。
レイルズが一緒の時には、彼の火の守り役の火蜥蜴がレイルズを暖めているのを見て二人の火蜥蜴達もそれを真似て彼らを暖めてくれた事が何度かあるが、レイルズがいないのに暖めてくれたのは初めてだ。
「そうか、レイルズの火蜥蜴がやっているのを見てやり方を覚えてくれたんだな。暖めてくれてありがとうな」
「ありがとうな。おかげで寒くなくなったよ」
二人はそれぞれ胸元をそっと叩いてから嬉しそうにそう言い、もう一度顔を見合わせて揃って吹き出してから早足でラプトルを進めたのだった。




