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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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小物作りの開始!

 翌日から、レイは張り切って人形用小物の制作準備に入った。

 ルークが配慮してくれて、最低限の夜会などへの参加で済んでいるので時間を気にせず動く事が出来た。

 まずはロッカの工房へ行き、彼に実際の人形を見せながら説明して、人形用に使えそうな小さな金具の製作をお願いした。

 これは、ロッカの工房に最近入ったのだという新人の子が担当してくれて、レイの話を聞きながらどういった小物が良いか、実際にデッサンを描きながら一緒に考えてくれ、数日のうちには試作だと言って本当にごく小さくて見事な金具をいくつも作って届けてくれた。

 彼はどうやら小物作りの才能があったらしく、出来上がったそれに大感激したレイを見て、これは一大産業になると確信したロッカにより、工房内にミニチュア部門が急遽設立されたのだった。

 それから、モルトナの工房へも行き、様々な革の端材や小物作りに使えそうな紐や接着剤。あるいは道具などを幾つも貰ってきた。

 それ以外にも、ガルクールのところへ行って小物作りに使えそうな布を何枚か貰ってきたのだが、ここでもガルクールがその人形に興味を示して、ドレスや服作りに名乗りを上げてくれた為、レイは急いでブレンウッドにいるバルテン男爵に、モルトナやロッカ、それからガルクールにも急遽追加の人形を一通り送ってくれるようにお願いしたのだった。



「えっと、まずは何を作ろうかな」

 小物用の金具がロッカの工房から大量に届いたところで、レイは準備した様々な材料を前に割と真剣に考え込んでいた。

 蒼の森から送ってきてくれたものは、何着ものドレスや簡単な仕様の軍服、それ以外だと男性の人形用の簡単な防具一式と剣、大小の肩からかける形の鞄。それからごく細い蔓で編まれたバスケットなどだった。

「ううん、やっぱりトランクが欲しいな。トランクなら色んな大きさがあっても大丈夫だもんね」

 やや分厚めの革を手に、考えながらそう呟く。

 トランクは、長期の移動の際に使われる荷物を入れるための角ばった鞄で、固い革製の物が主流だ。

 実際には使った事はないが、ゴドの村にいた頃に行商人がラプトルが引く荷馬車に積み上げていたのを何度も見た事がある。

「ううん、でも細かい部分の仕様が分からないなあ。あ、そうか。見本を見せてもらえばいいんだよね!」

 そう呟いて手を打ったレイは、ラスティに相談して見本用にトランクを用意してもらうようにお願いした。

「待っている間はどうしようかな? ベルトなんかは実際に作る大きさに合わせて作らないと駄目だしね」

 小さくそう呟き、少し考えたレイは、笑顔で手を打った。

「あ、あれを作ってみよう!」

 そう言って、戸棚からミレー夫人とイプリー夫人にもらったあの裁縫箱を持ってきた。

「これなら作れそう。よし、やってみようっと」

 嬉しそうに裁縫箱を見てそう呟き、用意した紙にまずは型紙を描き始めた。

 何度も描き直し、なんとか形になったところでハサミを使って切り取る。そのあとは、実際に型紙を折り曲げて形を確認し、ずれた部分を直していく。

 しばらく格闘してようやく満足のいく型紙が出来上がった。

「じゃあ、一度作ってみようっと!」

 嬉しそうにそう呟き、机の上に革を裁断する際に使う専用の革を敷く。これはごく分厚くて硬い革を重ねて貼り合わせたもので、網状になったごく細い金属が革の間に挟まれているので、少しくらいナイフで切っても下まで切れないようになっているらしい。

 大量にある革の端材から良さそうな厚さの革を取り出し、目打ちと呼ばれる先端が細い針のようになったもので、革に当てた型紙の形をなぞって書き写していく。

 小さくて切るのは少し難しかったがなんとか切り終え、接着剤を片手に組み上げていく。

 形が出来上がったところで、革の表面に用意した布を貼っていく。

 個人的には革のままでもいいと思うのだが、きっと女の子達ならこっちの方が喜ぶだろう。

 もらったレースを蓋に貼り付け、本体と蓋にごく小さな穴を開けて可愛いリボンで取り付ければ完成だ。



「よし! 一つ出来た!」

 満足そうにそう呟き、何度か蓋を開け閉めして硬さを調節していると、不意にブルーの使いのシルフが作業しているテーブルの上に現れた。

「あ、ブルー、ねえ見てよ。裁縫箱が出来上がったよ。今から中にも布を貼って、上側にトレーも作るよ。どう?」

 得意げなその言葉に、裁縫箱を覗き込んだブルーの使いのシルフは満足そうに頷いた。

『うむ、初めてにしてはなかなかの出来栄えのようだな。きっと女の子達は喜ぶだろう』

 ブルーの声でそう言われて、レイは満面の笑みで頷く。

「ハサミは、ロッカの工房で試作に作ってくれたのがあるから、とりあえずそれを入れておくね。あとはきっと彼女達が考えてくれるよね?」

『ああ、中身は自分達で考えるだろうから、レイが作るならこういった外側の、いわば箱の部分だな』

「やっぱりそうだね。じゃあここに入れるトレーを作ろうっと」

 嬉しそうにそう言って、型紙用の紙を取り出す。

 レイが知っているのはあくまでも刺繍をするための道具だけで、他のお裁縫をする際に何が必要なのかが分からない。なので、作るのは箱のほうだ。

 また定規を使って内側部分の幅を確認しながらまた型紙を作り、分厚い革を切って本体上部に乗せるトレーを作った。これは、そのまま取り外しが出来るようになっている。

「よし、上手くいった。じゃあ次はトランクだね!」

 ちょうどラスティが台車に載せて運んできてくれた大小様々な大きさのトランクを見て、嬉しそうにそう言ったレイだった。

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