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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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贈り物のミスリル鉱石

「うわあ、確かにあれは銀鱗の館ですね。凄い。本当に綺麗だ……」

 ゼクスを止めたレイが思わずそう呟いて見惚れる通り、燻し銀の輝きを放つまるで竜の鱗のような丸みを帯びた陶器のタイルに覆われたその館は、確かに銀鱗の館と呼ぶに相応しい外観をしていた。

 レイの呟きを聞いて、ルーク達もラプトルの足を止める。

「レイルズの瑠璃の館と同じで、以前はちょっと荒れた印象だったけどなあ。手をかけると、古い屋敷でもここまで綺麗になるんだ」

「ううん、確かに素晴らしいね。以前の荒れた屋敷を知っているだけに、これはちょっと感動するくらいに本当に綺麗になったね。いやあ見事だ」

 ロベリオとユージンが、顔を見合わせてそう言いながらうんうんと頷き合っている。

「確かに、予想以上に綺麗になっているなあ。ううん、これはさすがはカウリだって言っていいのかな?」

「カウリは、屋敷の改修には奥方の意見を最大限に取り入れたって言っていたからね。一般出身だったけど、奥方の趣味がかなり良いんだろうね」

「そうだな。これは屋敷の中を拝見するのが楽しみになってきたな」

「僕も楽しみです!」

 笑ったルークの言葉に、若竜三人組も笑顔で頷いている。レイも、同じ事を思っていたのでそう言って満面の笑みで何度も頷く。

「ちなみに、あの屋根瓦や壁に使われている陶器のタイルって、マイリーの故郷のクームスで作られているらしいよ。宝石鉱山があるのとはまた別の山の、ごく一部の地域でしか採取出来ない特殊な土を使っているんだって。そのタイル自体が、クームスのドワーフギルドが管理する独自製法なんだとか。だから、カウリがあの館を拝領した後、修理の際にはマイリーが色々と口利きをしたって聞いているよ。まあ、今日その辺りも詳しくカウリが教えてくれると思うぞ」

 ルークの詳しい説明に、そういった知識が皆無のレイはただただ感心していたのだった。



「お、ご当主自らお出迎えだね」

 館の大きな門は、今は全開の状態で止められている。

「ようこそ。お待ちしておりましたよ」

 門の前まで出てきてこっちに向かってにっこり笑って優雅に一礼するカウリは、いつもと同じ見慣れた竜騎士の制服に身を包んでいるのだが、何故か普段よりも立派で格好が良く見える。

「屋敷のお披露目会にお招きいただき、ありがとうございます。そして姫君のご誕生、おめでとうございます」

 ラプトルから降りたルークが、代表してそう言ってこちらも優雅に一礼して見せる。

 顔を上げてしばし無言で見つめ合った二人が、ほぼ同時に吹き出す。

「うああ、やっぱり無理〜〜〜! 背中が痒くなるよ」

「そこは最後まで顔を作れよ。お父上様」

 顔を覆って叫ぶカウリに、笑ったルークがそう言って背中を思い切り叩く。いつもの情けない悲鳴をあげて仰け反るカウリを見て、遅れてレイ達四人も揃って吹き出す。

「相変わらずだなあ。でもまあ、それがカウリだって事だよな」

 笑ったロベリオの呟きに、レイ達も揃って何度も頷いていたのだった。



「おお、ここに置いたんだな」

「うわあ、これは見事だ」

「確かに凄いね」

「ううん、誂えたみたいにぴったりだねえ」

「ああ、ここに置いてくれたんだね。嬉しいです!」

 ラプトルを執事に預けて中に入ったレイ達は、広い玄関の正面部分に置かれたミスリル鉱石を見てそれぞれに声を上げた。

 これは、カウリの結婚祝いにレイが贈ったギードの鉱山で採掘されたミスリル鉱石で、クッキーが用意してくれた個性的な木製の飾り台の上にその石が置かれている。

 一見すると地味なその石は、ある角度から見るとその表面に遊色効果と呼ばれる見事な虹色の輝きが現れ、全く別の石になったのではないかと思うほどに違って見えるのだ。

 ちょうど正面から見た時にその遊色効果が現れるように置かれたそれには、その石自体を久しぶりに見たルーク達も感心しきりだった。



「これをカウリに届ける時に、ルークやロベリオ達も一緒に見てくれたんだったよね」

 嬉しそうな笑顔のレイの呟きに、皆も笑顔で頷く。

 実はあの後、彼らは個人的な贈り物としてミスリル鉱石が欲しい時にはギードと直接連絡を取り、ブレンウッドのドワーフギルドを経由して、何度かギードからミスリル鉱石をドワーフギルドが指定する正規の値段で購入している。

 オルダムのドワーフギルドで購入するものよりも更に見事なそれらの石は、どれも最高の贈り物として喜ばれ、その結果、ドワーフギルドにあの鉱石はどこの鉱山の物なのかといった問い合わせが殺到する事となったのだった。

 もちろん、その問いにギードの名前が出される事は一切なく、あれは個人所有の鉱山からの採掘品で、数はそう多くないものの希望があればドワーフギルドの仲介での購入が出来ると知らされ、当然購入希望者が多く出る事態となり、ギードは予定外の定期的な収入に驚く事になったのだった。

 そして、ドワーフギルドに支払われたそれらのお金は、実はギードの希望でそのほとんどがレイの口座に振り込まれていて、今度はその口座を管理しているラスティやルークが突然の振り込みに驚く事になっていたのだった。

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