大切な仲間
「なんて、なんて尊い友情なのかしら……」
「国を支えるほどの事業を、共に生涯をかけて育てるなんて、そんな友が得られたらどれほど心強く幸せな事か……」
ニーカとジャスミンは、胸元に手を握りしめて感動に打ち震えている。
「ありがとうございます、サマンサ様!」
声を揃えてそう言ったジャスミンとニーカは、握った手を額に当てて深々とその場で頭を下げた。
「その尊きお心と行いに、心からの感謝と尊敬を捧げます」
「サ、サマンサ様、僕、僕サマンサ様を心から尊敬します! 本当にありがとうございます!」
そして、同じくらいに感動に打ち震えているティミーがそう言って深々と頭を下げ、目を輝かせたレイは、隣に座ったサマンサ様の手を思わず取って深々と下げた自らの額にそっと当てて感謝を表した。
「皆、顔を上げてちょうだい。国の未来を担う子供を守るのは、私達大人の役目ですよ」
嬉しそうに目を細めてそう言ったサマンサ様は、そっとレイを抱きしめてその額にキスを贈った。
「さあ、パイが冷めてしまうわ。遠慮なく食べてね。まだまだおかわりもありますから」
顔を上げたサマンサ様の言葉に笑顔で頷き合い、レイは改めて居住まいを正した。
「どうぞ」
執事がカナエ草のお茶を入れ直してくれたので受け取り、レイ達はナッツのパイにそっとナイフを入れたのだった。
その後は、ティア妃殿下の普段の様子を伺ったり、妊婦の日常がいかに大変かといった話をマティルダ様やサマンサ様から聞いたりして過ごした。
そして途中からは退屈した猫達が乱入してきて、ニーカとジャスミンは大喜びで猫達を抱き上げてはその重さに驚きの声を上げ、ふわふわな毛を撫でてはご機嫌で笑い合った。
猫のレイは、ずっとレイの膝を占領してご機嫌で喉を鳴らしていたのだった。
「いいなあ。私も猫を飼ってみたい」
猫のタイムを抱きしめながら、ニーカが少し寂しそうにそう言ってふわふわな毛に顔を埋める。
一応、汚れ防止の前掛けのようなものを付けてお茶をいただいていた彼女達だが、それでもせっかくの竜司祭の衣装が猫の毛だらけになっている気がする。それはいいのだろうか?
レイは若干心配になりつつ彼女達を見たが、皆笑っているだけで誰も猫を抱き上げるニーカとジャスミンを止めないので大丈夫なのだろう。多分。
もしかしたら、衣装担当の方が後で真っ青になるかもしれないが。
「猫達に会いたくなったら、いつでも来てくれていいのよ。そうだわ。今度奥殿で女性だけのお泊まり会をしましょうよ。夜更かしして、ベッドに並んで寝転がってお菓子を食べながら皆で好きなだけお話をするの。どう? きっと猫達が来て一緒に寝てくれるわよ」
「まあ、それは素敵ですね。是非ご一緒させてください!」
「素敵! ねえ、私と一緒に寝てくれるかしら?」
ティア妃殿下の満面の笑みの提案に目を輝かせたジャスミンが笑顔でそう言い、最初こそ驚きに目を見開いていたが、途中からは満面の笑みになって何度も頷きながら抱いていた猫のタイムに真剣に話しかけているニーカだった。
そして、まるでニーカのお願いに返事をするかのようにニャーと鳴いたタイムを見て、ジャスミンとニーカだけでなく、ティア妃殿下までが一緒になって揃って吹き出したのだった。
「まあまあ、なんて楽しそうな提案なのかしら。私も参加したいくらいだわ」
「是非!」
笑ったサマンサ様の言葉に、こちらも満面の笑みになったティア妃殿下が胸元で手を握ってそう言い、部屋は暖かな笑いに包まれたのだった。
「長生きはするものね。こんなに楽しい時間をもらえるなんて……皆、仲良くするのですよ」
嬉しそうに目を細めたサマンサ様の言葉に、レイ達が揃って返事をする。
「はい! もちろんです!」
「はい! ティミーには本当にいろんな事を教わっているんです!」
「はい! もちろんですわ」
「はい! ジャスミンは、本当に頼りになる先輩なんです!」
妙に一致したその返事に、顔を見合わせた四人が揃って吹き出したのはほぼ同時だった。
「まあまあ、皆それぞれに頼れるところがあるのね。素晴らしいわ。お互いに足りない部分を補い合い、支え合ってしっかりと成長するのですよ」
笑顔のマティルダ様がいい感じにまとめてくださり、レイ達はもう一度揃って元気な返事をしたのだった。




