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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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本読みの会の終了

「ふああ。楽しい時間は、本当にあっという間に過ぎちゃうものなんだね」

 枕を抱えたレイの呟きに、戦い終えてあちこちに転がっていた全員から笑い声と同意の声が上がったのだった。



 本読みの会最後の夜は深夜を過ぎた時間で一旦終了となり解散したのだが、当然のように湯を使って着替えた全員がレイ達の部屋に枕を持って集合して、最後の枕戦争を心置きなく楽しんだのだった。

 今回は特にチーム分けもせずに戦ったので、レイ達三人はしっかりチームを組んでベッドを自陣として戦い、マイリーとヴィゴの即席チームと、ベッド横の衝立を挟んでなかなかに激しい攻防戦を繰り広げたのだった。

 若竜三人組とルークとカウリの自称知的コンビもソファーを挟んだ戦いを繰り広げていたが、その後若竜三人組がレイ達の方に味方して、ルークとカウリがマイリー達の側につき、最後は大人組対若者組での激戦となって若者組の勝利で終わったのだった。



「それじゃあ、おやすみ」

「おやすみ、もう早く寝ろよ」

「はあい、おやすみなさい!」

 激戦を終えて笑顔で部屋に戻る竜騎士達を見送ったレイ達は、改めてもう一度湯を使って早々にベッドへ潜り込んだ。

「いやあ、思った以上に長居させてもらったけど、本当に楽しかったし勉強になったよ」

「だよな。資料作りだけじゃあなくて色々と今後の方針も決まった事だし、本部に戻ったら、またやる事が山積みだぞ」

 レイを挟んで左右に寝転がり、揃って天井を見上げながらマークとキムがそう言って笑っている。

「そうだね。僕も本当に楽しかった。ぜひ、またやろうね」

「おう、よろしく」

 左右から声のそろった返事が返る。

「次はまた、瑠璃の館で開催してもいいかもね。あっちにもたくさん本があるからさ」

「ああ、そりゃあいいなあ。ぜひお願いするよ」

「あの豪華なお屋敷の書斎にも相当な量と質の蔵書が揃っていたからなあ」

 笑った二人の言葉に、レイも笑顔で何度も頷く。

「また、ジョシュア達とも遊びたいなあ……」

 小さな欠伸をしながらレイがそう呟く。

「彼らだって、声をかけてやればきっと喜んで集まってくれるさ。その時はまたぜひとも呼んでくれよな」

「うん、もちろん……一緒だよ……」

 もう一度小さな欠伸をしたレイは、なんとかそれだけを答えたきり急に静かになってしまった。

「あ、寝たな」

「そうだな。寝たな」

 レイ越しに顔を見合わせて小さく吹き出した二人は、左右から手を伸ばしてふわふわな赤毛を撫でてやった。

「愛おしき無邪気さだな」

「確かに。でもこいつはこれでいいんだって気がするよ。ふああ……冗談抜きで俺も眠いよ。おやすみ……」

 笑ったキムの言葉にマークも頷きながらそう言い、もう一度欠伸をしてからふかふかの羽布団に顔を埋めた。

「ああ、俺も眠いよ。それじゃあ、おやすみ」

 キムも笑ってそう答えると、欠伸をしながら羽布団を引っ張った。

 普段使っているのとは桁違いの素晴らしい寝心地の羽布団に包まれた二人が静かな寝息を立て始めるのは、そのすぐ後の事だった。

『其方達も充分に愛おしき無邪気さだと思うがな』

 ベッドサイドに置かれた小さなテーブルの縁に座ったブルーの使いのシルフは、小さくそう呟いて吹き出すと軽く指を鳴らした。

 広い部屋に一瞬にして強固な結界が張られる。

 満足そうに頷いたブルーの使いのシルフは、ゆっくりと癒しの歌を歌い始める。

 呼びもしないのに集まってきたシルフ達が、それぞれ好きなところに座ってうっとりとその優しい歌声に聴き惚れていたのだった。



 翌朝、またしてもシルフ達の手によって三人の頭は、揃って三つ編みとねじりと折り曲げにより芸術的な仕上がり具合を見せ、部屋付きの執事を吹き出させる事に成功したのだった。

 お互いの寝癖を見て、お前が一番だ。いやお前の方が芸術的だと遠慮なく笑い合い、一仕事終えたシルフ達を大喜びさせていたのだった。

「はあ、やっと元に戻った。しかしこれって兵舎に戻ったら大変な事になるんじゃあないか? 俺達には寝癖を治す手伝いをしてくれる執事さんなんていないんだからさ」

 すぐに来てくれた執事達の手により二人の寝癖もなんとか無事に元に戻ったのだが、部屋に戻っていつもの軍服に着替えながら、マークが前髪を引っ張りながら心配そうにそう呟く。

「大丈夫だよ。解く時にはシルフ達が手伝ってくれるってさ」

 こちらも、いつものふわふわな髪に戻ったレイが、ラスティに手伝ってもらって着替えながら笑って振り返る。

「ええ? そうなのか?」

 思わずシルフ達を見上げたマークの質問に、彼らの頭上でこっそり髪で遊ぼうとしては仲間達に邪魔されていたシルフ達が一斉に笑顔で頷く。

「好きなだけ遊んで絡ませるだけ絡ませておいて、解く際にも手伝って恩を売っておく。ううん、シルフ達もなかなかの策士よのう」

 腕を組んだキムのわざとらしい言葉に、シルフ達が揃って吹き出す。


『だって大好きなんだもん!』

『ふわふわな髪やツンツンの髪!』

『これからも遊びたいの!』

『だからお手伝いするの〜〜〜!』

『怒られないようにするの〜〜!』

『それは大事な事なの〜〜!』

『大事大事!』

『大事大事!』


 彼らの目の前に並んだシルフ達が得意げにそう言い、うんうんと頷いて見せる。

「あはは、成る程な。だけど叱られないようにはどうすれば良いかちゃんと考えているって、凄えな」

 感心したように笑ったキムの呟きに、レイの右肩に座っていた大きなシルフが得意そうに胸を張って見せる。

「もしかして、ラピス様が教えたんですか?」

 笑いを堪えたキムの質問に、ブルーの使いのシルフが当然とばかりに大きく頷く。

『彼女達が、叱られずに遊ぶにはどうしたらいいかと真剣に悩んでいたのでな。ちょっと知恵を貸してやったまで』

「あはは、古竜の仕込みなら俺達如きに抵抗出来る訳ないよな。じゃあ、少しくらいなら俺達の髪で遊んでもいいから、今後も解く時はしっかり手伝ってくれよな。朝は忙しいんだから、あまり時間はかけられないんだからな!」


『はあい! 了解です〜〜〜!』

『了解了解!』

『お手伝いするの〜〜〜!』


 彼らの頭上に集まったシルフ達は、笑ったマークの言葉に嬉しそうにそう答え、一斉に拍手をしてから手を取り合って踊り始めたのだった。

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