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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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これからの予定と夕食会

「ふむ、予想以上に有意義な時間だったようじゃな」

 満足そうなガンディの呟きに、ダスティン少佐とケレス学院長も満面の笑みで何度も頷いていた。

 日が傾き始めたところで気温が一気に下がって粉雪がちらつき始めたのでここで本日の実験は終了となり、一旦建物の中へ戻り、ひとまず温かいお茶とお菓子を頂いて冷えた体を温めた。

 その間もダスティン少佐とケレス学院長は顔を寄せて、今後の人の配置や実際に合成実験を行わせる際の研究室の優先順位などについて、楽しそうに話をしていたのだった。

「こうなると、合成実験をして万一暴発しても大丈夫な、守護の結界を張った実験用の部屋を本部にも追加で用意した方が良さそうだな。これはディアーノ少佐にも話を通すべきだな。ううん、しかし本部には空き部屋が無かろう……いっそ、別棟で建ててしまうか」

 腕組みをしたダスティン少佐が小さな声でそう呟く。

『ああ、それはいい考えだな。別棟で建ててもらえるなら、竜達にも協力してもらって建物ごと結界で守れるな。その上で、実験用の部屋は個別に守護の結界を張っておけば二重の結界で守る事になる。それが一番安全であろう。出来るか?』

 不意に目の前に現れたブルーの使いのシルフにそう言われて即座にその場に直立したダスティン少佐は、満面の笑みで頷いた。

「お任せください。早速報告書を書いて陛下に直訴いたしましょう」

「それならワシからも嘆願書を書いてやろう。合成実験は安全の為にも別棟での実験用の部屋が必要だとな」

「それなら俺達も、報告書でも嘆願書でも必要なだけ書きますよ」

 ガンディの言葉に続き笑ったマイリーが右手を上げながらそう言い、聞いていた竜騎士達も揃って右手を上げて見せる。レイも満面の笑みで右手を挙げ、それを見て慌ててマークとキムも揃って右手を挙げた。

「では、まず私が陛下へ本日の実験と討論会に関する報告書をあげますので、皆様方はその後で今回の合成実験に関する報告書をお出しください。その際に、本部での実験棟の必要性を併記していただけると幸いです」

 満面の笑みになったダスティン少佐の言葉に、竜騎士達が揃って吹き出す。

「確かに、これだけの人数が揃って実験棟の必要性を訴えれば、陛下ならば、間違いなくすぐに建設の許可してくださるでしょうね。さて、そうなると具体的に建てる場所を何処にするかと言う問題が残るな」

 笑ったマイリーの言葉にほぼ全員が無言になって考える。

 実際、もう本部の敷地内には空いた場所など無く、そうなると何処かを潰すしかないが、それはどれも簡単な事ではない。

「それなら、一から建てるよりもいい案があります。駐屯地の本部側に一番近い場所に幾つか大きな倉庫がありますので、あの建物を改良するのはどうでしょうか? 確かあそこは保管庫として使われていたはずなので、荷物の移動も容易でしょう。建物自体も頑丈ですから、あれなら内装を変える程度で必要な部屋数は確保出来そうです」

 竜騎士隊のいる本部とお城の前側部分に広く展開している、主に第二部隊が本拠地にしている駐屯地では、竜射線の影響を万一にも一般兵に受けさせないように、竜騎士隊の本部側は人の出入りがほぼ無い保管用の倉庫群が並んでいるのだ。年に数回荷物の出し入れを行う際には、担当する兵士達には念の為カナエ草のお茶を飲んでから作業に当たらせている程だ。

 ダスティン少佐は、その保管庫の倉庫の端、つまり本部からの移動も容易な場所を合成実験の実験棟として使えるのではないかと提案したのだ。

『ああ、それは良い案だな。あそこなら竜達の術も充分届くだろうからな』

 その言葉に、ブルーの使いのシルフもうんうんと頷く。

「第四部隊の本拠地である精霊棟にも実習のための守護の結界を貼った部屋が有りますが、基本的に兵士達の日常的な訓練の為に使っているので、空きがほとんど有りませんからね。本部に近い場所に、遠慮なく実験出来る場所を作っていただけると本当に有り難いです」

「確かに、俺達も最初は精霊塔の実習室を借りるつもりだったけど、結局ほぼ精霊魔法訓練所の空き教室を借りているものな。思いついた時にすぐに使える実験棟が近くにあれば、研究も進みそうだ」

 うんうんと頷くマークの言葉に、キムも同じく頷きながらそう言って嬉しそうに笑っていたのだった。



 夕食は、自由に食べていた今までと一転して、ダスティン少佐とケレス学院長、そしてガンディの三人を招いての夕食会となり、末席ながら同席する事となったマークとキムは、レイやルーク達が飛ばしてくれるシルフ達に何度も助けられつつ、なんとか大きな失敗もなく食事を終える事が出来たのだった。

 彼らはもうへとへとに疲れ切って食後に用意されたワインを味わう余裕も無かったのだが、ダスティン少佐やケレス学院長は、市井の出身である彼らが少なくとも見る限り大きな失敗もなく夕食会を終えられた事に感心して、揃って褒めて二人の努力を評価してくれた。

 ガンディは、ダスティン少佐やケレス学院長に褒められて真っ赤になりつつも嬉しそうにしているマークやキムの様子を、何も言わずに横で面白そうに眺めていたのだった。



「彼らも、なかなかに頑張っているようだな」

 おかわりで入れてもらった赤ワインを飲みながら、ガンディがマークやキムをそっと示しながら隣に座ったレイにそう話しかける。

「うん、いつも彼らはこうやって改まった場で食事をすると、全然出来ていないとか緊張し過ぎて食事の味が分からないとか泣き言ばかり言っているけど、全然そんな事ないよね。全く知らない状態から勉強し始めてまだ一年にならないんだよ。充分過ぎるくらいに出来ているよね」

 同じく貴腐ワインのおかわりを貰ったレイも、そう言って嬉しそうに何度も頷いている。

「彼らはこれから先、こういった場に正式に招かれる事もあるだろうからなあ。まあ、なんであれ覚えておくに越した事は無かろう。知識と技術、それから教養はいくらあっても邪魔にならぬからなあ」

「本当にそうだよね。じゃあ、頑張るマークとキムの努力を讃えて乾杯」

「ああ、彼らの努力に乾杯、じゃな」

 笑ったレイの言葉に、ガンディも手にしていたグラスを掲げて一緒に乾杯してくれたのだった。

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