第四部隊の協力
「そっか。確かに統計に使うための実験なら数が必要だから、別に俺達だけで必死になってやる必要はないよな。皆に手伝って貰えばいいんだよな」
「確かにそうだな。何もかも自分達でやらないとって思い込んでいたから、その発想自体がなかったよなあ」
顔を見合わせたマークとキムの言葉に、レイは苦笑いしている。
「二人は、何でもかんでも自分達で背負い込みすぎなんだって。じゃあそっちはマーク達がやるよりも、ケレス学院長とダスティン少佐にお任せして、準備していただいてもらった方がいいんじゃない? それで、合成魔法の出来る兵士の皆さんに、必要事項を記入した書類を実験の前に作ってもらってから合成実験をしてもらえばいいんだよね」
目を輝かせるレイの言葉に、ダスティン少佐も笑顔で頷く。
「お任せください。ふむ。その後の資料の整理についても、第四部隊の後方支援の事務方の者達にも手伝ってもらえますね。実を言うと、まだ講義に参加させていない兵士達からも、いつになったら講義に参加出来るのか。とか、せめて資料だけでも見せて欲しいと言った意見が多く寄せられおります」
「うわあ、責任重大だね。マーク、キムも!」
「まあ、その講義の回数と人数制限の解除については、また後で要相談だな」
嬉しそうなレイとダスティン少佐の言葉に、顔を覆って揃って悲鳴を上げるマークとキムだった。
「今は、実際に合成術が出来そうな主に上位魔法を扱える者達を中心に講義を受けさせているが、今後は順次第四部隊の一般兵達にも講義と実技に参加してもらっていきたいと考えている。この資料作りへの参加は、精霊魔法の扱いが下手な兵士達にとってもいい刺激になるだろう。第四部隊としてぜひ正式に協力させてもらいたい」
「はい! よろしくお願いします!」
真顔になったダスティン少佐の言葉に、目を輝かせてマークとキムが揃って直立して敬礼する。
それを見てダスティン少佐は、満足そうに頷くのだった。
そもそもこの合成魔法に関する研究は、陛下から直々に最重要項目として優先して研究するよう直接の指示が出されている。
その為、ダスティン少佐の采配ならば、第四部隊の一般の兵士達を動員して合成魔法の研究の為の資料作りを手伝わせる事が出来るし、その作業そのものも通常の一般業務の中に組み込んでしまっても問題ないのだ。
「さて、合成実験を大規模にするとなると、どこから始めてもらうべきかな? これは最初の人選に苦労しそうだなあ。他の第四部隊の大隊の指揮官達にも話を通しておくべきだな。ううん、これは大仕事になりそうな予感がするぞ」
誰に命じたとしても間違いなく大喜びで参加するであろう部下達の顔を思い浮かべて、そして今後、さらに仕事が増えるであろう自分を考えて、思わず笑ってしまうダスティン少佐だった。
その後、ダスティン少佐とケレス学院長は真剣な様子で顔を付き合わせて、実験記録用の書式をどのようなものにするのがいいかについての相談を始め、手書きで実際の書類の下書きを描き始めた。
それを見たマークとキムが慌てたようにその横へ行って、どのような記録が資料として特に欲しいかについて意見を出し、当然のようにレイや竜騎士達も意見を出し始め、そこからまた突然討論会が始まったりもしたのだった。
この日の出来事から、合成魔法の研究の資料作りの為に、第四部隊の一般兵達による合成実験を継続的に行う事が正式に決定された。
これにより長期的に様々な条件下で、多くの人の手による実験結果が、成功、および失敗を含めて多数正式に記録される事となり、マークとキムの元には定期的に大量の資料が集められる事となった。
その結果、彼らの合成魔法に関する研究は多くの資料に支えられて大きく前進する事になるのだった。




