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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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様々な条件と考え方

「ううん、凍る時と爆発する時、そして何事もなく消滅してしまう時の法則性が全く分からん。これは一体どういう事だ?」

 困ったようにそう呟いて腕を組むマイリーの言葉に、同じくため息をついて腕を組んだヴィゴも何度も頷いている。

「確かに全く法則性が見出せぬのう」

 二人の隣では、執事が用意してくれた椅子に座ったガンディが、同じように腕を組んで考え込んでいる。

「えっと、これって……」

 マークと光の精霊魔法を使った合成実験をしていたレイが、自分の両手を見つめながら何か言いかけて急に黙り込んだ。

「ん? どうした? 何か気付いたのなら遠慮なく発言してくれて構わないんだぞ?」

 顔を上げたマイリーの言葉に、それでも少し考えていたレイは小さく頷いてマイリーを見た。

「えっと、今回の実験で思ったのは、三つ以上の同時発動の場合、そもそもの法則性が無い事が法則なんだと思います」

 レイの発言に、その場にいた全員の目が見開かれる。

「えっと、ちょっと言い方が違うな」

 小さくそう呟いて話の途中で考え込むレイに、誰も文句を言わずに黙って彼の考えがまとまるのを待つ。

「えっと、多分なんですが……これを法則性と言っていいかどうかは分からないんですが、恐らく発動実験をする本人の特性というか、得意な事が実験に反映されている気がするんです」

「本人の特性?」

「得意な事だって?」

 マイリーとヴィゴの二人から同時にそう言われて、戸惑いつつもしっかりと頷いて見せるレイを見て、横にいたマークとキムが無言になって考え込む。

「はい。つまり、例えば最初の火と風と土の合成実験の場合、マイリーがやったら凍りついたけど、さっきロベリオがやったら爆発したでしょう?」

 その通りなので、マイリーとロベリオが真顔で頷く。

「えっと、マイリーは水の術が得意だって聞いた事があるけど、合ってますか?」

 改めて聞かれて、無言になって考えたマイリーは顔を上げて頷いた。

「確かに、あまり気にしていなかったが何が得意だと聞かれれば、水の術で発動を失敗した事がないくらいには得意だな」

「それを言うなら、俺は火の術が得意だぞ」

 ロベリオの言葉にレイは嬉しそうに頷く。

「うん、だからマイリーがやった時には凍りついて、ロベリオがやった時には爆発したんだと思うんだ。えっと、それはつまりなんて言うか……得意な術を含む三つ以上の合成術を発動した場合、発動者が得意な術に対して、何らかの足す力が加わったり引く作用が作用したりする、気が、するんだよね」

 最後は自信がなくなったのか急に小さな声になったが、それを聞いていた一同が全員揃って真顔で考え込んでしまった。

「発動者の得手不得手が術の発動そのものに影響を与える。確かにその可能性は大いにあるな。となると、さらに安定した発動が遠のいた気がするぞ」

 ため息を吐いたマイリーの呟きに、あちこちから賛同の声と共にため息が聞こえる。

「ようやく多少は安定して発動出来るようになったとは言え、まだまだ合成術そのものが未知のもの、と言う事だな。ふむ、これは興味深い」

 横で彼らの会話を聞いていて、うんうんと頷きながらそう言ったガンディは、軽く右手を上げて手のひらの上に光の玉を作り出した。

「それに本人の得手不得手だけでなく、たとえばその時の本人の体調や精神の安定度合いなども、術の発動そのものや安定性に大きく影響しそうだな。そもそも通常の精霊魔法の場合でも、何らかの術の発動の際に本人の体力や気力次第で発動そのものさえ困難になる事すら有り得るのだからな。逆にまだ未知の存在である合成術がそう簡単に安定しては面白くあるまい?」

「ガンディ、これは面白いとかそんなレベルの話じゃあないんですがねえ」

 ダスティン少佐の呆れたような言葉にあちこちから吹き出す音が聞こえる。

「何を言うか。面白くなければ研究のやり甲斐もないであろうが。これは長く研究を続ける場合には重要な事だぞ」

 真顔のガンディの答えに、またあちこちから吹き出す音が聞こえた。

 レイやマーク達は、もう遠慮なく揃って吹き出している。

「た、確かにそこは重要ですよね。となると、今までは何と何を合成して成功したか否か、の記録ばかりに目がいっていたけど、そこに、誰が、いつ、どんな条件で発動したかってのも併せて記録しておくべきって事か」

 慌てたようなマークの呟きに、隣にいたキムが悲鳴を上げて膝から崩れ落ちる。

「それって、もう今までの俺達が必死で記録していた大量の合成術の実験例が、ほぼ役立たずになったって事だよな!」

「えっと、完全に役立たずになったわけでは、ないと……思うけど……信頼度は確実に下がったねえ」

 苦笑いしたレイの言葉に、マークも同じく悲鳴をあげて膝から崩れ落ちた。

「ま、まあ落ち着け、二人とも。合成術の記録の数が必要なら、第四部隊の手の空いた兵士達を総動員させよう。皆喜んで参加するだろうさ。各自にその日の体調や得手不得手などをあらかじめ書類に記入しておいてもらい、そこにその日に行なった合成術の内容や成功したか否かを含めて詳しく書いて貰えばいい。こうなると、講義の資料作りは別にして、統計に使えるほどの実験などの資料の数を揃えるのは、第四部隊に任せてもらった方が良さそうだな」

 顔を上げたダスティン少佐の言葉に、ケレス学院長も真顔で頷く。

「確かにそれならば我らもお手伝い出来そうだな。教授達だけでなく。研究生達も間違いなく喜んで資料作りに参加してくれると思うぞ。ふむ、となると何を記録するかは決めておくべきだな。早速元になる記録用の書式を考えるとしようか」

 目を輝かせるダスティン少佐とケレス学院長の言葉に、マークとキムは地面に座り込んだまま呆気に取られてそんな二人を見つめていたのだった。

「そっか、確かにそれなら第四部隊の皆さんや精霊魔法訓練所の教授や研究生の方にも手伝ってもらえるね!」

 嬉しそうなレイの言葉に、何もかも自分達でやらなければいけないと思っていた二人は嬉しそうに笑って拍手をしていたのだった。

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