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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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合成実験の結果と謎

「さて、これは興味深い状態となったが、ラピスはこれを予想していたようだったな」

 軽く腕を振って無事を確認したマイリーが、興味津々でブルーを見上げる。

「そうだな。我の予想の中では最悪の状態だったが、まあこうなるだろうと思っていたよ」

 首をマイリーのすぐ上まで伸ばしてきたブルーが、目を細めて面白そうに笑いながらそう言って喉を鳴らす。

「その根拠は?」

「その前に誰か、水と風と土、それから火と水と土で合成魔法をやってみてくれるか? もちろん何があろうと守ってやる故、安心して実験するがいい」

「はい! やってみます!」

「はい! やってみます!」

 あえて自分でやらずに誰かにやらせるブルーの言葉に、目を輝かせて進み出たのはケレス学院長とダスティン少佐だった。

 出遅れたロベリオとユージンが、苦笑いして下がる。



「では、私は水と風と土でやってみます!」

 興奮に頬を紅潮させ、目を少年のように輝かせた大柄なケレス学院長がそう言って進み出る。

 そして先程のマイリーと同じように、まずしゃがんで地面からノームを呼び出して土の皿を作ってもらい立ち上がる。

「ウィンディーネ、水の皿を頼む。土の皿と同じくらいの大きさでいい」

 一気に真顔になったケレス学院長の呼びかけに一人のウィンディーネが現れ、彼の左手に土の皿と同じくらいの水のお皿を作って渡してから消えていった。

「シルフ、風を合成するぞ」

 そう言ってゆっくりと左右の手を合わせる等に近づけていく。

 その間をシルフが通り過ぎた次の瞬間、凄い爆発音がしてケレス学院長は仰向けにひっくり返った。

「大丈夫か!」

 慌てたほぼ全員が駆け寄る中、きょとんとした顔でケレス学院長が地面に手をついて起き上がった。

「お、お守りいただき感謝します。あの……今、今何が起こったのでしょうか?」

 傷一つない自分の両手を握ったり開いたりしながら、呆然とケレス学院長がそう言ってブルーを見上げる。

「まあ、説明はもう一つ合成魔法をやってから我の考えを教えよう。ほら、そちらの銀髪の少佐殿、やってみてくれるか」

 笑ったブルーの言葉に、真顔で頷いたダスティン少佐が進み出る。

「では、私は火と水と土でやってみます」

 真顔でそう言って、先ほどと同じようにノームに土の皿を作ってもらい、左手にはウィンディーネを呼んで水のお皿を作ってもらう。

「火蜥蜴、これを重ねた瞬間に炎を重ねてくれるか?」

 ダスティン少佐の呼びかけに、彼の指輪から尻尾の長い細くて可愛らしい蛇のような火蜥蜴が現れた。

 小さく頷いて右手首のあたりに巻き付きうんうんと頷く。

「頼む!」

 そう言って左右の手をお皿ごと重ね合わせるように叩いた。その瞬間に火蜥蜴がダスティン少佐の手に向かって炎を吐き出し、打ち合わせた両手の間にするりと消えていった。



「うわ! 今度は凍った!」

 固唾を飲んで見守っていたマークが思わずそう叫ぶ。

 先程のマイリーと同じように、ダスティン少佐の両腕は、肘の辺りまで完全に氷に閉じ込められていたのだ。

 その場に倒れこそしなかったものの、大きくよろめいたダスティン少佐を、咄嗟に駆けつけたヴィゴとマイリーが左右から腕を掴んで支えた。

「お、お守りいただき……感謝します」

 凍った自分の両手を呆然と見つめながら、ダスティン少佐がなんとかそう言ってブルーを見上げる。

 彼の手の上に大きなシルフが現れて氷をその小さな手で叩くと、氷は一瞬で粉々に砕け散って地面に落ちた。

「では、次に誰か火と水と風で合成実験をやって見せてくれ」

 ブルーの言葉に目を輝かせた若竜三人組が手を挙げる前に、ヴィゴが満面の笑みで進み出る。

「では、俺がやってみよう」

 嬉々としたその言葉に、悔しそうにため息を吐いた若竜三人組が下がる。

 結果は、爆発した。

 ヴィゴは倒れこそしなかったが、大きくのけ反り咄嗟にしゃがんで顔を覆って声を上げていた。

「これはどういう事だ?」

 一つ大きなため息を吐いたヴィゴが、自分の手を見ながら呆然と呟く。

「火と風と土では凍り、水と風と土では爆発。火と水と土では凍り、火と水と風では爆発した」

「自分がやった合成実験では、火と風と光の合成の際には、両方の事例が見られました」

 右手を挙げたマークの言葉に、レイとキム以外の全員の目が見開かれる。

「法則性が分からん。ではもう一度どれかやってみるか」

 腕を組んで考え込んだマイリーの呟きに、今度こそ若竜三人組が目を輝かせて進み出る。

 その結果、ロベリオが行った火と風と土の合成実験は爆発し、ユージンが行った水と風と土の合成実験でも爆発した。

 そしてタドラが行った火と水と土の合成実験でも爆発して三人は呆然と顔を見合わせる結果となった。

 その後も、必死になって何度も合成実験を行ったが、何故か凍る時もあれば爆発する時もあり、法則性が全く見えずに全員揃って途方に暮れる結果となったのだった。



「では、光の精霊魔法が出来る者達にも参加してもらうとしようか」

 面白がるようなブルーの言葉に、目を輝かせてレイとマークが進み出る。

 それを見てルークとガンディも進み出る。ティミーは光の精霊魔法を使えるが、今日は見学なので座ったままだ。

「では、火と水に光、火と土に光、風と水に光、風と土に光、そして水と土に光だな」

 ブルーの言葉にそれぞれに真顔で頷き、順番に合成実験を行なうために互いに少し離れて立った。



 本来であれば水と火、風と土は相性が悪く、重ねようとしても水に当たって火は消えてしまうし、土にあたった風は消えてしまうものだ。

 だが、以前ブルーが四大精霊と光の精霊魔法を全て合成してみせたように、光の精霊魔法を合成する事により精霊魔法自体が全く違う性質を持つ。なので本来相性が悪いはずの火と水や風と土なども光の精霊魔法と一緒に合成すれば安定して発動するはずなのだ。理論上は。



 しかし、前回とマークがやった時と同じで、同じ内容で合成実験を行なっても爆発する時と凍る時がある上、何の反応も無く術自体が消滅してしまう事すらあって、もう実験をやっているレイ達だけでなく、真剣な様子で見学していたマイリー達やケレス学院長達も大混乱に陥ってしまったのだった。

 首を傾げつつも何度も自分に出来る再現実験を行なったり、近くにいた人と夢中になって激論を交わす彼らの様子に、竜達は満足そうに頷き合って嬉しそうに喉を鳴らしていたのだった。

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