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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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休日の夜

「じゃあ今度、僕からも二人に陣取り盤を選んで研究室に届けておくから、普段の気晴らしの時に使ってね。何なら、相談も受け付けるから、いつでも遠慮なくシルフを飛ばしてね!」

 目を輝かせたレイの言葉に、マークとキムが揃って振り返る。

「いやいや、そんな申し訳ない」

「そうだよ。こんなの普段の練習なら紙と木片で充分だって」

 どの陣取り盤も、どう見ても安いものではないだろう。そんな高級品を普段から使うなんて、彼らの常識ではありえない事でもある。

 一応ディレント公爵閣下からいただいた陣取り盤が一台あるのだが、ピカピカに磨き上げられた木目が美しい盤面と、手を触れるのも気を使うくらいに繊細な細工の陶器製の駒を見て、実を彼らはすっかり萎縮してしまい、頂いた陣取り盤は最初に一度出したきりで、その後はずっと箱に入ったままになっているのだ。

 普段の練習用には、冗談抜きで紙と木屑で自作するつもりだった二人の言葉に、驚いたように目を見開いたレイは、これ以上ないくらいの笑顔になる。

「遠慮しないで。せっかくなんだから、普段から使えるような良い物を贈らせてよね。たまには僕にも、二人の役に立たせてよ」

「いやいや、めっちゃ役に立ってくれているから!」

「そうだよ。もうこれ以上ないくらいに世話になってるって!」

 慌てた二人の言葉に、レイは嬉しそうに笑っていた。



 そのあとは、それぞれ好きに本を読んだり、陣取り盤で対決したりして過ごした。

 レイとティミーは、マイリーとルークが対決しているのを目を輝かせてずっと見学していたし、マークとキムは目を輝かせた若竜三人組に捕まってしまい、最初こそ遠慮していたものの次々に出てくる質問に答えたり、新しい魔法陣を一緒に考えて描いたりしているうちに次第に遠慮もなくなり、途中からはほぼ対等な立場で発言して合成魔法についての討論を始めていたのだった。

 途中から、マイリー達大人組やレイとティミーも討論に加わり、そろそろ夕食だと執事が呼びに来る頃には、全員参加しての大討論会状態になっていたのだった。



「いやあ、好きな事を好きなだけ時間を気にせず出来るって、最高だなあ」

 ため息を吐いたカウリの呟きに、ロベリオ達も満足そうに笑っている。

「長期間の本読みの会。是非とも定期開催しようと思っているから、よろしくな。その為の予定の調整なら喜んでするぞ」

 笑ったルークの言葉に、ヴィゴとマイリーも苦笑いしつつ頷いている。

「じゃあ、食事をしたら俺達は一旦本部へ戻らせてもらうよ。明日の朝一から出なければならん会議があるからな。明日の夕方頃にまた来る予定だから、よろしく頼むよ」

 笑ったヴィゴの言葉にマイリーとルークとカウリも頷いている。

「そうなんですね。お仕事ご苦労様です」

 無邪気なレイの言葉に、揃って苦笑いしている大人組だった。



「うわあ! まさかの展開だ!」

 執事の案内で夕食の為に部屋を移動した一同だったが、部屋を見た途端にマークとキムが揃って情けない悲鳴をあげた。

 何しろ、壁面に設置されていた様々な料理は全て撤去されていて、中央に置かれた大きくて四角いテーブルには、人数分のカトラリーが綺麗に並べられていたのだ。

「大丈夫だ。今夜は本読みの会主催の夕食会って体だから、君達も、あくまでも一参加者だよ」

「まあ、礼儀作法はほどほどで大丈夫だよ。ここには、お前達が例えカトラリーを取り落とそうが、切ったお肉を勢い余って吹っ飛ばそうが、音を立ててスープを啜ろうが、怒ったり叱ったりするような奴はいないよ」

 笑ったルークとヴィゴの言葉に無言で首を振る二人だったが、目を輝かせたレイに手を引かれて彼の両隣に並んで座る。

「だから大丈夫だって。せっかくの美味しい料理なんだから、味わって食べてもらわないとね」

 無邪気なその言葉に、大きなため息を吐いてから背筋を伸ばして椅子に座り直したマークとキムだった。

 確かに若干手元が怪しい部分が多々あったが、それでも竜騎士達と一緒に改まった席で食事をして、それなりの格好をつけられた時点で、彼らの礼儀作法に対する竜騎士達の評価は大きく上がっていた。

 大きなミスもなく無事に食事を終える事が出来て、安堵のため息を吐く二人を見て満面の笑みで拍手をしたレイだった。



「はあ、美味しい。でも、確かに何事も経験して慣れた方がいいって意見は分かる気がする」

「確かに美味しいな。でも確かにそうだな。さっきみたいな改まった席も、ちょっとだけ、本当にちょっとだけだけど慣れてきた気がする……ような気がするかもしれないからなあ」

 食事を終え別室へ移動して、揃ってブランデーの入ったグラスを手にしたマークとキムの呟きに、水割りをもらったレイが目を輝かせて振り返る。

「そうだよね。こんなの慣れだって! じゃあもっと慣れてもらう為にも明日の朝食は、もがぁ!」

「無理無理無理!」

「お前、無茶言うなって!」

 良い事思いついたと言わんばかりのレイの言葉を、慌てた二人が途中で口を塞いで止める。

「おお、見事な連携だな」

 笑ったルークの言葉に、あちこちから吹き出す音が聞こえた。

 ここでは難しい話はせず、研究の苦労話や軍隊内部での笑える話などが話題となり、レイは目を輝かせて聞き役に回っていたのだった。

 そのあとはまた陣取り盤が登場して、大人組が帰るまで楽しい時間を過ごしたのだった。

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