本読みの会開催と今夜の予定!
「よし、じゃあ今度から僕もマークとキムの講義を聞きに行けるんだね! 早速申し込んで来ようっと」
目を輝かせるレイの言葉に、マークとキムは困ったように顔を見合わせて苦笑いしている。
「いやあ、どちらかというと、レイルズには助手として来てくれると俺達がめっちゃ助かるんだけどなあ」
「確かに。いつも言っているんだよなあ。講義の時に助手がいてくれればもっと段取りよく出来るのにってさ」
「ええ、僕も二人の講義をゆっくり聞きたいのに〜〜」
「いやいや、これだけの資料を作ってくれている時点で、合成術に関する知識も技術も俺達なんかより上なんだから、講義を聞く意味なんて無いって!」
「そうだって。どちらかと言うと俺達が教えてもらいたいくらいなんだからさ!」
笑ったマークとキムの言葉にレイが拗ねたように口を尖らせ、そんな三人を見た竜騎士達は、顔を見合わせて面白そうに笑っていた。
「まあ、講義の聴講については、人数制限もあるだろうからすぐにとはいかないだろうさ。そこは、ケレス学院長やマーク達の上司の判断次第だな」
苦笑いするルークの言葉に、レイはまだ若干拗ねてはいたものの素直に頷いた。
「分かりました。じゃあそこは上の方々の判断に従います」
「だから、無理して聞きに来なくても講義の資料は全部渡しているだろうが」
「ええ、せっかくだから実際に二人が先生役をやっているところを、僕だって見たいもん」
「「講義を聞きたいんじゃあなくて、そっちを見たいだけかよ!」」
「あ、しまった。でもまた二人は仲良しになっていたね」
二人から同時にそう言われて誤魔化すように笑って舌を出すレイに、書斎は笑いに包まれたのだった。
そのあとはのんびりとそれぞれ好きに本を読んだり、マーク達が用意した資料を好きに見たりして過ごし、時にはそれぞれの伴侶の竜の使いのシルフまで加わって、思いつくままに討論会が始まったりもしたのだった。
「ううん、このままここに住みたいぐらいだよなあ」
ソファーに座ったキムの呟きに、同じ事を思っていたマークも苦笑いしつつ頷く。
「本当だよなあ。もうずっとここにいたい」
「僕もずっとここにいたい。こんな風に思いついた時に好きなだけ本が読めて誰かと討論出来るって、本当に最高だよね。明日には帰らなくちゃいけないなんて、残念だなあ」
分厚い本を抱えたレイの言葉に、あちこちから賛同の声が上がる。
「そう言うだろうと思って、あちこちに段取りしてから来たんだからな。感謝しろよ」
にんまりと笑ったルークの言葉に、レイとマークとキムが不思議そうに揃って振り返る。
「はい、どうぞ。お前らにもあるからな」
得意そうに立ち上がったルークが、そう言って小さなカードを三人に渡す。
「何ですか。これ?」
二つ折りにされただけの簡単なカードを渡されて、それを開いて見たマークが無言になる。
隣では、キムも同じく絶句したまま開いたカードを見つめている。
「どうしたの二人とも……ああ! 本読みの会開催のお知らせだ!」
レイの歓喜の声に、ルークだけでなく彼らの様子を見ていた竜騎士達が揃って吹き出す。
「おう、以前言っていた長期間の本読みの会開催のお知らせだ。って事で、明日にはカウリも出勤して来るから殿下と一緒に来てくれる予定だよ。俺達大人組や殿下は最低限の会議への出席はあるが、六日夜までこのままここでずっと継続して本読みの会を開催するよ。泊まるもよし、本部へ戻ってゆっくり寝るもよし。出入りは自由だから用事のある奴は勝手に出て行ってまた好きな時に戻ってくる予定だ。レイルズが言ったように、開催期間中はここで気が済むまで本を読んで好きなだけ討論すると良い。一応、陣取り盤も複数用意してあるから、気晴らしに誰かと対決するのも良いかもな。マーク達の元上司のダスティン少佐や今の上司のディアーノ少佐、それからケレス学院長にも声をかけているから、途中で顔を出してくれるはずだよ。それからガンディにも声をかけておいたからな」
予想以上の豪華な顔ぶれに、マークとキムとレイが揃って歓声をあげる。
「まあ、今夜はこのまま書斎で過ごすもよし、枕戦争参加希望者がいれば、そっちも不定期開催するけど、どうする?」
「やりたいです!」
目を輝かせて手を挙げたレイの言葉に、マークとキムも目を輝かせて挙手する。
その場にいた竜騎士全員が揃って手を挙げ、また笑いに包まれたのだった。
「じゃあ、湯を使って着替えたら、枕を持ってスリッパを履いて僕の部屋に集合って事で、よろしくお願いします!」
目を輝かせるレイの言葉に、笑ったルーク達が何度も頷く。
かなり遅い時間になったところでひとまず今日の本読みの会は解散となり、一旦それぞれの部屋に戻って湯を使って着替えてからレイの部屋に再集合となった。
実はレイがいつもマーク達と一緒に三人で泊まっている部屋は、数ある来客用の部屋の中でも一番広い部屋で、皇族の方々様に用意されている部屋のすぐ横にある部屋なのだ。
そんな事などつゆ知らず、皆で一緒に遊べるくらいの広い部屋があっていいな、などとのんびり考えている三人だった。




