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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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第二の闖入者と新しい研究生達

「あれ? 今頃どうしたんだろう?」

 予定していた資料作りも無事に終わり、それぞれに好きな本を手に時間を忘れて読書を楽しんでいると、不意にノックの音が聞こえて、レイは読み掛けていた本に栞を挟んで閉じてから顔を上げた。

 隣のソファーで同じように本を読んでいたマークとキムも、突然のノックの音に不思議そうに顔を上げて扉を見ている。

 食事を終えてからかなりの時間が経っているはずだから、本当ならばそろそろ休んでも良い時間だ。もしかしたら執事がそれを言いにきたのかもしれない。

 素知らぬ顔で読書をしているマイリー達を横目で見てから、少し考えてレイが返事をした。

「はい、どうしましたか?」

「失礼致します」

 執事がそう言って扉を開きすぐに下がる。

 何事かと立ち上がりかけたレイは、書斎へ駆け込んできた顔ぶれを見て堪えきれない歓声を上げた。

「ルーク! ロベリオとユージンも来てくれたんだね!」

「当たり前だろうが! 何、お前らだけで楽しそうな事してるんだよ!」

 駆け寄ってきてレイの頬を両手で摘んだルークが、笑いながらそう言ってレイの頬を横に引っ張る。

「ぶふう、痛いれふ」

 無抵抗のままルークに頬を引っ張られているレイを見て、マークとキムが揃って吹き出す。

「そうだそうだ! 俺達がひたすら愛想笑いをしている間に、好きなだけ本を読んでるなんて、ずるいぞ〜〜〜!」

「そうだそうだ〜〜〜俺達も遊ばせろ〜〜〜」

「お前ら、言っておくが、これは遊びではなく重要な研究だぞ」

 笑ったロベリオとユージンの言葉を聞いて、立ち上がって二人の横へ行った真顔のマイリーが本を見せながらそう言って二人の頭を軽く叩く。

「痛っ! でも、俺達にとってはどっちも似たようなものでしょうが!」

 頭を押さえたロベリオの抗議の声をマイリーは鼻で笑った。

「まあそうだな。そこは否定しないよ」

「いやいや、そこは否定してくださいよ!」

 ユージンの真顔の言葉に、ルークが隣で遠慮なく吹き出していた。



「それで、今ってどういう状況なんだ?」

 マークとキムを見たルークの質問に、慌てた二人が先ほど描いた新しい魔法陣を取り出して広げる。

 目を輝かせて覗き込むルーク達に、マークとキムが二人がかりでここまでの進行状況の説明を始めた。

「へえ、三つの術の同時合成って、これまたとんでもない事を考えるもんだなあ」

「さすがだなあ。だけど確かにこれが安定して出来るようになれば、合成術の発動は格段に早くなるよな」

「確かに。ううん、目の付け所が違いすぎる」

 感心したようなルークの呟きに、ロベリオとユージンも揃って感心したように頷いている。

「いえいえ、これは本当に理論ばかりが先行していて、実際の発動の安定度どころか成功率もまだまだこれからって感じなんです。この後、今日作った資料を元にして行われる第四部隊の代表者達による討論会が終われば、あらためて実験をしてみるつもりですので……」

「それらの成果については、改めて報告させていただきます」

 マークとキムの二人の説明に、ルーク達が真顔で資料を見つめる。

「術の合成実験は、いつもどこでやってるんだ?」

 資料を手にしたルークの質問に、マークとキムが揃ってルークを振り返った。

「術の発動実験については、基本的には精霊魔法訓練所の教室を借りて行っています」

「まあ、ちょっとした合成術の確認程度なら、そのままいつもの部屋で行う事もありますけど……」

「そうか。確かに訓練所の教室でするのが一番安全だな」

 納得したようにそう呟いたルークは、にんまりと笑ってロベリオ達を見た。

 若竜三人組がルークの視線に気づいてにっこり笑って頷く。

「だよなあ。やっぱり研究するなら訓練所が一番良いよな」

「だよな。教室には守護の術がしっかりとかけられているから、よほどの事がない限り術が万一暴走しても、生徒の安全は様々な方法で守られているもんな」

 ロベリオとユージンがうんうんと頷きながらそう言うのを見て、レイは不思議そうに首を傾げる。

「えっと……」

「俺だけじゃあなくて、ロベリオとユージン、それからタドラも年明けから精霊魔法訓練所の研究生になったんだよ。なので、四人揃って誰かさん達の講義を真っ先に聞きに行く予定で〜〜す!」

「はあ?」

「冗談!」

 マークとキムの口から同時に悲鳴のような声が上がり、マイリーとヴィゴが揃って吹き出す。

「なんだ。知らなかったのか? 本当なら俺達も参加したいんだが、こっちは残念ながら色々と多忙でね」

「自由に研究所に出入り出来るお前らが、心底羨ましいと思うがなあ」

 マイリーとヴィゴの苦笑いした言葉に、呆気に取られたレイはポカンと口を開けたままマークとキムを振り返った。

「ロベリオ達、ずるい〜〜〜! 僕だってマークやキムの講義を聞きたいのに〜〜!」

 レイの本気の抗議の声に、ルーク達が揃って吹き出す。

「だったら、お前も研究生の申請を出せば良いじゃないか。一応訓練所の基礎の単位は全部取ってるんだろう?」

「ええ? 良いんですか?」

 驚くレイに、ルーク達が揃って顔を見合わせる。

「もちろん。じゃあ、今度訓練所へ行ったら、誰でも良いから教授に聞いてみるといいよ。ああ、事務所で聞けばそのまま申請出来るんじゃないか?」

「だな。俺達は執事を通じて申し込んでもらったけど、レイルズなら訓練所へ行った時に申請をしておけばいい。間違いなくすぐに許可が降りるだろうからさ」

「えっと、僕は高等科と大学の勉強を訓練所で引き続き受けているんだけど、それでも大丈夫なの?」

「おう。研究生は、決められた単位を全部取って訓練所の卒業資格を持つ奴なら、申請して決められた金額を納付すれば誰でもなれるぞ」

「そういう事は、もっと早く教えてください!」

 真顔のレイの抗議に、ルーク達だけでなくマーク達まで揃って吹き出し書斎はしばらくの間大爆笑になったのだった。

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