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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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新たなる合成魔法の実験

「はあ、美味しかったなあ。もうお腹いっぱいだよ」

「確かにどれも美味しかった。ここでの食事はいつもこれがいいよな!」

 山盛りに取った料理を平らげ大満足のため息を吐いたマークの呟きに、キムもうんうんと頷きながらそう言って笑っている。

 もう彼らの前に並んだお皿は、どれもかけらも残さず綺麗に平らげられている。

「確かにどれも美味しかったね。でも、せっかくなんだから礼儀作法も頑張って覚えようね」

 二人を見てにっこりと笑ったレイの言葉に、マークとキムは揃って情けない悲鳴をあげて顔を覆った。

「ま、まあそれはまた別の機会に……」

「そうそう、今日のところは資料作りを最優先って事でお願いします!」

 慌てる二人の言葉に、レイはブルーの使いのシルフと一緒に面白そうに笑っていたのだった。

 三人がデザートの果物とお菓子を取りに行っている間に、控えていた執事がカナエ草のお茶を用意してくれる。

 お礼を言ってカップを受け取り、笑顔で頷き合った三人は、デザートも残さず綺麗に平らげたのだった。



「じゃあ、少し休憩したら先に庭に出て、さっき話していた実験をやってみる?」

 おかわりのカナエ草のお茶を飲み干したレイの言葉に、同じくカナエ草のお茶を飲み干した二人も真顔になって大きく頷く。

 一旦書斎に戻って、散らかしていた書類を簡単に片付けた三人は、執事に声を掛けてから揃って庭へ出ていった。

 庭にはブルーが座ってそんな三人を待っていてくれた。

「えっと、どうする? 試しに一度やってみる?」

 座ったブルーの腕に甘えるように寄りかかっていたレイが、少し考えてそう言いながらマーク達を振り返る。

 二人はブルーから少し離れたところで立ち止まり、何やら真剣な様子で考えている。

「じゃあ、駄目元で一度やってみるか。あの、蒼竜様。万一の際には……」

「分かっておる。其方達が行う合成術程度なら、万一暴走するような事があっても必ず守ってやる故、好きにするといい」

 笑ったブルーの言葉にマークとキムは目を輝かせて深々と一礼した。

「ありがとうございます! では、考えていた事があるので一度やってみます。ええと、二人は少し離れていてくれるか」

 真顔になったマークは、そう言って横に移動してレイとキムから少し距離を取る。

 真顔の二人は、駆け寄りかけたがマークの言葉に足を止めて真剣な顔で頷き合った。視線はマークの手元に集中している。

「考えていた事というのは、要するに三つの術を合成する際の順番なんだ。例えば、今まで火と風に光の精霊魔法を合成する場合、一旦先に火と風を合成して、そこに光の精霊魔法を後から合成していただろう?」

 開いた両手を見たマークの説明に、真顔のレイとキムが揃って頷く。

「今考えているこれは、三つの術をいわば同時に発動して合成するやり方なんだ。その際に同時では無く、言ったようにわずかな時間差を利用してほぼ同時に三つの術を合成するやり方だ。上手く出来れば合成魔法が一段と素早く出来る、はず……なんだよな」

 自信なさげにそう呟き、両手を顔の前に上げて広げる。

「では、火と風の合成魔法に光の精霊魔法を合成するのをやってみます」

 黙ったままのブルーも真剣な顔でマークを見つめている。



 一つ深呼吸したマークは、両手をそっと胸の前辺りへにかざし、ちょうどボールを持つかのように少し空間を開けて両手を合わせた。

 その手の中に、炎が現れ次第に大きくなっていく。

「よし!」

 マークがそう叫んで両手がものすごい光を放った次の瞬間、一瞬だけもの凄い風が吹き荒れて三人がほぼ同時に悲鳴を上げる。

「うわあ!」

 勢い余ったマークが、悲鳴をあげて仰向けにひっくり返って地面に仰向けに倒れる。

「マーク!」

 レイとキムが倒れたマークに駆け寄る。もう風は収まっていて炎も光も消えて静かになっている。

「大丈夫か? ふむ、なかなかに興味深い現象が起こったな。だが、さすがに少々無理があったようだな」

 長い首をマークのすぐ上まで伸ばしてきたブルーが、苦笑いしながらそう言ってまだ倒れたままのマークを覗き込む。

「お、お守りいただき……感謝します」

 仰向けに倒れたままのマークが、ブルーを見上げて震える声で何とか礼を言う。

「え? 今のってブルーが守ったの? マークが倒れたのに?」

 驚いたレイが、そう言ってブルーを見上げる。

「ものすごい光を放った瞬間、俺の方にとても熱い風が吹きつけてきたんです。でも、体に当たる直前に一瞬で掻き消えてしまった。あれは、お守りくださったんですよね!」

 腹筋だけで起き上がったマークの言葉に、ブルーは苦笑いしながら頷く。

「まあ、あの反応は予想の範疇ではあったが、あの熱風をまともに喰らえば火傷程度はしただろうからな」

「そうだったんだね。マークを守ってくれてありがとう!」

 笑顔でそう言って大きな顔に抱きついたレイの言葉に、ブルーは嬉しそうに目を閉じて喉を鳴らした。

「言ったであろう? 其方達の術程度なら何があろうと守ってやるとな。では、今の現象を検証してみるとするか」

 地面に寝転がるようにして座っていたブルーが、そう言って体を起こして座り直す。

 それを見てレイも手を離し、マークとキムは真顔でブルーを見上げて直立した。

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