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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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おやすみと子守唄

「それでは、おやすみなさい。明日もレイルズ様に蒼竜様の守りがありますように」

「おやすみなさい。明日もラスティにブルーの守りがありますように」

 湯を使って部屋に戻ったレイは、ラスティが用意してくれていた冷たいカナエ草のお茶をいただいてからベッドへ潜り込んだ。

 額にキスをもらって笑顔でいつもの挨拶を交わし、部屋の明かりを消してから出ていくラスティの後ろ姿を見送る。

「はあ、湯たんぽを入れてくれてあるから、足元もポカポカだね。すごく暖かいや」

 真っ暗になった部屋を見回して一つ深呼吸をしたレイは、小さく笑ってそう呟き、枕の横に置いてくれてあったブルーの色のクッションに抱きつく。

「ねえ、もう遅い時間だしタキス達は休んじゃったかな」

 出来ればカウリに女の子が生まれた事はタキス達にも知らせておきたいが、今日はいつもよりもかなり遅い時間だ。なので、もう皆休んでいるかもしれない。

 顔を上げたレイは、枕元に立って自分を見つめているブルーの使いのシルフにそう話しかけた。

「ううん、残念ながらもう皆寝ておるようだな。黒い髪の竜人は少し前まで起きていたが、もう今は休んでしまったようだよ。よく眠っているようだが……どうする? 起こそうか?」

 当然のようにそう聞かれて、慌てて顔の前で手を振る。

「駄目だよ。寝ているなら起こさないで!」

 苦笑いしたブルーの使いのシルフが頷くのを見て、レイは安堵のため息を吐いた。

「はあ、それじゃあ報告は明日だね。もう眠いから僕も寝ます。おやすみブルー」

 毛布を口元まで引き上げて潜り込んだレイは、小さく笑ってそう言うと抱きついたままだったブルーの色のクッションに顔を埋めた。

「おやすみ、明日も僕はちゃんと朝練に行くよ……いつもの時間になったら起こしてね」

 目を閉じたレイがそう呟き、頭上に集まってきていたシルフ達が笑顔で揃って頷く。


『任せて任せて』

「起こすよ起こすよ』

『だからおやすみなの〜〜』

『おやすみおやすみ』


 頭上から聞こえてきた彼女達の無邪気な答えに笑顔のレイが、小さく欠伸をしながら薄目を開く。

「ふああ、いつもありがとうね。起こしてくれるのは嬉しいんだけど、悪戯はほどほどにね」


『ええ〜〜どうしようかなあ〜〜』

『どうしようかな〜〜〜』

『どうしようかな〜〜〜?』


 レイの言葉に、何人かのシルフ達が揃って考えるフリをする。


『だけどほどほどって何?』

『なんだろうね?』

『ほどほど〜〜』

『ほどほど〜〜』

『なんだろうね?』

『なんだろうね〜〜〜〜?』


「もう、君たちは本当に……えっと、ほどほどって……何だろうね?」

 ブルーの色のクッションを抱えたまま上向きになるように少し転がって、頭上に集まって自分を見つめているシルフ達を見上げたレイは、説明しかけたがなんだか途中で面倒くさくなってそう言うと、笑って首を振った。


『なんだろうね〜〜?』


 もう一度揃って笑いながら口を揃えたシルフの言葉に、小さく吹き出す。

「なんだろうね。じゃあおやすみ。悪戯はほどほどにね」

 面白がるようにそう言ったレイは、もう一回今度は大きな欠伸をしてから、まだ抱きついたままだったブルーの色のクッションに顔を埋めて目を閉じた。と言うか、うえ向きになったレイの顔の上にクッションが載っているような状態だ。

 そんな体勢でも、穏やかな寝息が聞こえてきたのはそれからすぐの事だった。

 呆れたように笑ったブルーの使いのシルフが近寄ってきて、そんなレイの腕をそっと軽く叩いてブルーの色のクッションに力一杯抱きついていた腕を緩めさせる。

 パタリと落ちたレイの手は楽になるように少し引っ張って伸ばしてやり、顔の上にまだ載ったままだったブルーの色のクッションを軽く蹴る。

 反対側に転がったクッションを見た何人かのシルフ達が、真似をしてクッションを蹴飛ばす振りを始めた。

 それ以外の子達は、目を輝かせてぐっすりと眠ったレイの前髪を嬉々として引っ張り始める。

『おやすみ、良き夢を……』

 前髪が上がってむき出しになった綺麗な額にそっとキスを贈ったブルーの使いのシルフは、小さくそう呟くと軽く指を鳴らした。



 決して破られる事のない強固な結界が一瞬で完成する。



 無邪気に遊ぶシルフ達を優しい目で見たブルーの使いのシルフは、ゆっくりと口を開いた。

 歌い始めたのは、レイが夜会で歌ったあの子守唄だ。

 何人かのシルフ達は悪戯の手を止めてブルーの使いのシルフの周りに集まって座り、うっとりとその優しい歌声に聴き惚れて目を閉じた。

 そしてその優しい歌声に惹かれて姿を現したのはシルフ達だけでなく、光の精霊達が大勢現れてごく小さな光を灯して楽しそうに部屋の中を飛び回り始める。

 また、ウィンディーネ達や火蜥蜴達、それから部屋に置かれたいくつかの植木鉢の中からノーム達までが何人も現れてきて集まり、それぞれ好きな場所に並んで座ってブルーの歌声に耳を傾け始めた。

 精霊達に守られた静かな部屋の中では、夜明け前までずっと、ブルーの優しい歌声とレイの穏やかな寝息だけが聞こえていたのだった。

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