昼食会と彼女達の事
昼食とは思えないような豪華な料理の数々が用意され、終始笑顔の絶えない時間となった昼食会もそろそろ終わりの時間に近づいている。
食事の合間に、降誕祭の期間中にあった様々な出来事や、ニーカやジャスミンが着る新しい竜司祭の衣装がどれほど素晴らしかったかを笑顔で語るレイの様子に、サマンサ様は終始ご機嫌でうんうんと頷きながら聞いていたのだった。
「確かに、新しい竜司祭の衣装は素晴らしかったですよ。彼女達が、あの衣装を着て実際の祭事に出てくれる日が待ち遠しいです」
アルス皇子も笑顔でそう言い、手にしていたワインのグラスを軽く上げた。
「正式な紹介を楽しみにしているわ。ああ、でもその前に私達にも竜司祭の衣装のお披露目会をして欲しいものね」
「確かにそうね。ぜひ私達にもお披露目をお願いね」
笑顔のサマンサ様とマティルダ様の言葉に、ティア妃殿下も満面の笑みで頷く。
「かしこまりました。では、彼女達が正式に本部へ引っ越して来たらまたこのような場を設けましょう」
アルス皇子の言葉に、女性陣は揃って笑顔で拍手をしたのだった。
「それにしても、レイルズもすっかり日々の務めに慣れたようね。堂々としていてとても頼もしいわ。そうしていたら生粋の貴族の若君のようね」
手慣れた様子で骨付き肉を器用にナイフとフォークを使って食べるレイの様子を見ていたサマンサ様が、愛おしげに目を細めてそう言って笑う。食事の手を止めたマティルダ様も、その言葉に同意するように笑顔で頷く。
「ええ、全然そんな事ありません。何か失礼をしたらどうしようかって、いつも頭の中で必死に考えているんですから」
左右から揃って褒められてしまい、同じく食事の手を止めたレイは慌てたようにそう言って顔の前で小さくばつ印を作った。
呼びもしないのに勝手に集まって来ていたシルフ達が、それを真似て顔の前で大きくばつ印を作って遊び始める。
「もう、君達はなんでも遊びにしてしまうんだねえ」
無邪気に遊ぶシルフ達を見て、マティルダ様も一緒になって笑っていたのだった。
「そう言えば、ニーカはいつからこっちへ来るんですか?」
食事が終わり、デザートの栗とカスタードのタルトが用意されるのを待っている間に、レイがルーク達を見ながらそう尋ねる。
「ああ、女神の神殿で年明けに関する祭事が全て終了するのが五日だから、ニーカの移動はそれが終わってからになるね。六日は忌み日、つまり新しい事を始めるのに良くない日とされているから、引っ越しはその次の七日の予定だよ」
ルークの言葉に、その予定は聞いているマイリー達も揃って頷く。
以前レイが瑠璃の館のお披露目会をした際、日程を決めるのに神殿が発行している月割り表を使って決めたように、引っ越しなどの宿替えも、余程の事情があるのでない限り忌み日は避けるのが慣例なのだ。
「そうなんですね。楽しみにしています」
笑顔のレイの言葉に、ルークは手帳を取り出して確認しながら苦笑いして首を振る。
「まあそうは言っても、基本的に今のジャスミンと同じで、日常の勤務中に俺達と直接関わる事はまだ少ないだろうけれどな」
「ええ、そうなんですか? あ、でも確かに普段のジャスミンが本部にいる時には僕らとはほぼ関わらないですね」
ルークの笑った言葉に一瞬戸惑うように首を傾げたレイだったが、普段のジャスミンの様子を思い出して納得したようにそう呟く。
「もちろん、タドラは彼女の予定はしっかりと把握しているし、俺達も詳しい報告は定期的に受けているよ。とは言っても今のところは、まだ女神の神殿で過ごす時間の方が多いからね。まあ、ニーカが引っ越して来た後はまた少し変わってくるだろうさ」
「えっと、具体的にはどう変わるんですか?」
今後、祭事などの際に果たす竜司祭の役割についてはある程度は教えられているが、レイには具体的に彼女達が何をどうするのかといった知識は全くない。
「まずは二人の知識を同じにしないといけないから、この一年はニーカへの教育を中心に動くことになるね。レイルズがここへ来て最初の頃にしっかり勉強したみたいに、日常的な礼儀作法や貴族としての様々な知識。この辺りは、彼女達が社交界へ顔出しするかどうかである程度変わってはくるが、最低限度の知識程度は、常識として知っていてもらわないといけないからね」
「それと並行して、二人には女神の神殿での祭事を中心に精霊王の神殿の祭事に関する知識も得てもらわなければならない。まあこの一年は、とにかく覚える事だらけの勉強の一年になるだろうな」
ルークの言葉に続いたマイリーの説明に、レイは二人の苦労を考えて乾いた笑いをこぼしたのだった。
「ううん、聞いただけでとっても大変そうですね。何か、僕でも助けてあげられるような事ってあるかなあ」
「そうね。先輩として、しっかり彼女達を守ってあげてちょうだいね」
笑ったサマンサ様の言葉に、レイはこれ以上ないくらいの良い笑顔で元気に返事をしたのだった。




