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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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サマンサ様と猫達

「待たせたな。それじゃあ行こうか」

 マイリーとヴィゴが来たところで全員集合となり、そのまま全員揃って奥殿へ移動する。

 今日の昼食会は、両殿下からの正式な招待なので未成年であるティミーとジャスミンは参加していない。



 年が明けた最初の日。昼食会も多数開催されているので、城は着飾った人々であふれていた。

「皆、笑顔だね」

 無言の注目を浴びながら城の廊下を歩いていたレイは、こっそり周囲を見回しながた嬉しそうにごく小さな声でそう呟く。

『そうだな。確かに皆笑顔だな』

 右肩に座って周囲を眺めていたブルーの使いのシルフも、その言葉に笑顔で頷いている。

 時折現れるシルフ達にこっそりとちょっかいを出されつつ、ようやく見慣れてきた廊下を歩いて奥殿へ到着したところで先導してくれていた執事が下り、出迎えに来てくれた執事と交代する。

「ちなみに今夜の夜会は、陛下主催の新年最初の夜会だから、ほぼ全ての貴族が参加する。豪勢な顔ぶれだぞ」

 ようやく人目がなくなり、遠慮なく大きなため息を吐いたカウリの言葉にレイも苦笑いしながら頷く。

「今夜はまた楽器の演奏があるんですよね。いろんな方と一緒に演奏出来るから、僕も楽しみです」

「おう、俺も楽しみだ。偉大なる翼に、の久々演奏だからな。歌ではエントの会やハーモニーの輪を始めとする合唱の倶楽部の方々も参加なさるって聞いているから、そりゃあ素晴らしい演奏になるだろうさ」

 竜騎士が全員揃った時にしか演奏されない、偉大なる翼に、は、レイも大好きな歌だ。

 これ以上ない笑顔でうんうんと頷くレイを見て、カウリも笑顔になるのだった。



「ああ、レイ。君は相変わらず大きいねえ。ううん、ふかふかだ」

 いつもの庭が見える広い部屋案内されたところで、待っていましたとばかりに猫のレイが駆け寄ってくる。

 笑顔でしゃがんで猫のレイを抱き上げたレイは、嬉しそうに笑ってふかふかな毛に顔を埋めた。

「ああ、こら痛いって! 爪は出しちゃだめだよ」

 ご機嫌でレイの頬に前足を突っ張って揉み始めたところで、少しだけ爪を出されてしまってレイが悲鳴を上げる。

「こらこら。爪は出さない」

 すっかり猫の扱いに慣れたカウリが、苦笑いしながら横から腕を伸ばして猫のレイを引き取る。

「お前、本当に何食ったらこんなにデカくなるんだよ。うちのペパーミントも大概だと思っていたけど、お前さんはその上をいくなあ」

 呆れたように笑って足元に下ろしてやると、猫のレイは文句を言うかのように鳴いてカウリの足に頭突きをしてきた。

「怒るなよ。爪を出したお前が悪いんです〜〜〜」

 笑って頭を押えて止めてから撫でてやると、同じく駆け寄ってきたフリージアとタイムもカウリの足に擦り寄るように甘えてから三匹揃って暖炉の前に戻っていった。

「相変わらす自由だねえ」

「でも、そこが可愛いんだよね」

 ゆっくりと揺れるふかふかな尻尾を撫でて立ち上がったカウリとレイは、揃って振り返り、いつの間にか部屋に来てきた陛下とマティルダ様、それからアルス皇子とティア妃殿下、それからカナシア様に付き添われたサマンサ様が、全員揃って笑顔で自分達を見ているのに気付いて慌てたようにその場に直立したのだった。

「し、失礼いたしました!」

 慌てた二人の言葉に、サマンサ様が口元を押さえて笑う。

「気にしなくていいわ。猫達と仲良くしてくれてありがとうね。ああ、また来てくれるの?」

 甘えた声で鳴いた猫のレイが、いそいそと駆け寄って車椅子に座るサマンサ様の膝の上に飛び乗る。それどころか、フリージアまでもがそれに続いて膝の上に飛び乗ったのだ。

「ああ、駄目だよ。二匹も乗ったらサマンサ様の足が痺れてしまうって!」

 焦ったようにレイがそう言って、慌てて駆け寄る。

「大丈夫よ。ドワーフ達が作ってくれたクッションがあるの」

 得意そうにそう言って笑ったサマンサ様が、こっそりと膝掛けをめくって見せてくれる。

 そこにあったのは小さな机のような台で、ちょうど座っているサマンサ様の太ももの上に少し空間があり、その台の上に置かれた大きなクッションに猫達が座れるようになっているのだ。

 猫のレイとフリージアがくっついて丸くなっているのはその台の上なので、どれだけ座っていてもサマンサ様の足に負担がかからないようになっている。

「へえ、これは素晴らしいですね。これなら膝の上に猫達が座っていても足が痺れる心配はありませんね」

「ええ、私が猫達と遊びたいけど足が痛くて膝に乗せてあげられないんだって愚痴をこぼしたら、ドワーフの職人達が考えてこれを作ってくれたの。おかげで久しぶりに好きなだけ膝の上の猫達と遊べたわ」

 嬉しそうにそう言って、膝に乗る猫のレイをそっと撫でる。甘えたように鳴いた猫のレイは、ご機嫌でサマンサ様の痩せた手に頬擦りしてそっと手の甲を舐めた。

「痛いわ。お前の舌はざらざらだものね」

 喉を鳴らし始めた猫のレイの鼻先をそっと撫でてから、サマンサ様は笑顔で自分を見つめるレイを見上げた。

「第一級礼装だと、その見事な体格がさらに立派に見えるわね。それにしても、貴方も本当に大きくなりましたねえ」

 少し呆れたようなその言葉に、あちこちから堪えきれない笑いが聞こえた。

「レイルズは、身長だけならもうヴィゴよりも大きいんですからね。いくらなんでも、もうそろそろ打ち止めにしてもらっていいと思いますよ」

 苦笑いするアルス皇子の言葉に、サマンサ様も笑いながら何度も頷いていたのだった。

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