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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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金属製の鎧

「はあ、やっと終わった〜〜〜! 疲れたよ〜〜〜〜!」

 年が明け、夜通し火の番を兼ねて交代でずっと祭壇前に鎧姿で立ち続けていたレイ達は、六点鐘の鐘の音と共にようやく開放されて、案内された控え室に入った途端に大きなため息を吐いてそう叫んだ。



「まあ、装備を手に立っているだけだから、特に何かをしたってわけではないんだが、窮屈なこの姿だからなあ。そう言いたくなる気持ちはよく分かるよ。確かに疲れたな」

 同じく控え室に戻るなり、自分で籠手を外し始めたルークが、そう言って笑っている。

「お疲れ様でした。装備を外しますのでどうぞこちらへ」

 部屋に入ってきた竜騎士達を見て、控えていた第二部隊の兵士達がそう言いながら大きな木箱を抱えて、素早く集まって来てくれる。

「ああ、ご苦労さん。それじゃあまずは、この窮屈な装備を脱いじまおう」

 大きなため息を吐いたカウリの言葉に皆も苦笑いしつつそれぞれ離れて立ち、一斉に集まってきた担当兵達がそれぞれの装備を外してくれるのに任せた。



「こういう鎧って、自分では着る事も脱ぐ事も出来ないんだね」

 一番窮屈だった胸当てを外してもらってまた思わずため息を吐いたレイの呟きに、担当兵達が揃って苦笑いする。

「まあ、我らが使う実戦用の胸当てなどとは違って、こういった金属製の鎧というのは、そもそも貴族の士官の方などが象徴的な意味もあって身につけるものですからね」

「ですので、周囲の者達が着せつける事を前提に作られているんですよ」

 笑った担当兵士達の言葉に、もう一度ため息を吐いたレイは小さく笑って首を振った。

「まあ、それは分かるけど、やっぱり大変だと思うなあ。でも実際にこれとは違うけど、いざという時にはあのミスリルの鎧で出撃するんだよね?」

「もちろんです。これもそうですが、金属製の鎧は、全て関節部分などは非常に滑らかに動くようになっていますからね。まあ窮屈なのは否定しませんが、実際の動きが阻害されることはありませんでしょう?」

 外した装備を木箱の中へ一旦戻した兵士の言葉に、レイは笑顔で頷く。

「これは儀礼用の装備だから、実戦用よりも籠手や脛当てなんかはかなり大きめで、ちょっと動きにくかったけれどね。確かにロッカが作ってくれたあのミスリルの装備はすごく動きやすかったね」

 外した籠手を手に取ったレイの言葉に、ルーク達も揃って頷いている。

「まあ、そこは見栄えを重視するか、実際の動きを優先するかの違いだな。だけどこれだって確かに窮屈ではあるが別に動けないわけではあるまい?」

 面白がるようなヴィゴの言葉にレイは戸惑いつつも頷く。

「それは勿論そうですけど、でも、これも実戦用と同じくらいにもっと楽に動けるといいのになって思います」

「確かにそうだな。これはちょっと窮屈ではあるな」

「まあ、そこは実戦用の安全性を優先している鎧と違って、こっちは見栄え重視なんだから、文句は言わないのがお約束だよ」

「お前がいうと洒落にならんから、やめてくれ」

 笑ったマイリーの言葉に真顔のヴィゴがそう返して、竜騎士達は揃って乾いた笑いをこぼしたのだった。

「だけどまあ、これで一応年内の祭事は全て終了だな。あとは幾つか年明けの祭事があるが、まあ、通常装備での参加だから気が楽だな」

「年末年始のこの鎧の装備が一番大変なんだよね」

 こちらもようやく胸当てを外して安堵のため息を吐いたタドラがそう言って笑う。

「まあ、子供達からはキラッキラの目で見つめられるから面白いんだけどさ」

 笑ったロベリオの言葉に、あちこちから笑いが起こる。

 レイも、深夜にも関わらず参拝に訪れていた子供達の、自分を見つめていた瞳の輝きを思い出してしまい、笑顔で何度も頷いていたのだった。



「お疲れさん。このあとは少しだけど仮眠を取ってもらって構わないぞ。午後からは奥殿で昼食会があって、夕方からは皇族の方々も参加なさる大きな夜会があるから、もう少し頑張れよな。それと、夜会では、また楽器の演奏があるから、演奏予定の楽譜を確認しておくように」

「はい、その予定は聞いています。はあ、もうひと頑張りだね」

「おう、それと経過が順調らしいから、今日の夜会の場でティア妃殿下のご懐妊の報告をするそうだよ。なので、今夜の夜会以降当分の間、ティア妃殿下は公式の場には参加なさらないからそのつもりで」

「ああ、ようやく発表なんですね。おめでとうございます!」

 嬉しそうなレイの言葉に、こちらもようやく身軽ないつもの服装に戻ったアルス皇子は、真っ赤になりつつも嬉しそうに笑っていたのだった。

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