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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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2046/2485

神殿の分所にて

「到着したな。ほら降りて」

 笑ったルークの言葉に、素直に立ち上がったレイが一番最初に馬車から降りる。

 到着したのは、神殿の分所横にある馬車が停まる場所で、まさに次々に到着する馬車から参拝の人達が降りてきているところだ。

 レイが馬車から降りたその瞬間、周りにいた人達の大きくどよめく声が聞こえてレイは驚いて顔を上げた。

「ぐ、軍神サディアスの再来だわ」

「これは見事だ」

 あちこちから堪えきれないような呟きが聞こえた。

「レイルズ様、凄い!」

「レイルズ様!」

 聞き覚えのある幼い声に思わず振り返ると、少し離れた所に正装のアルジェント卿と一緒にマシュー達が笑顔で手を振っていたのだ。

 並んで一緒に手を振っているソフィー達は、華やかなドレスに身を包んでいる。

 一番小さなパスカルも一人前の正装だが、彼はレイを見てポカンと口を開けて目を見開いている。

「レイルズしゃましゅごい!」

 興奮のあまりちょっと上手く言葉が出なかったらしく、ようやく我に返った後は、顔を真っ赤にしながら手を振ってぴょんぴょんとその場で何度も飛び跳ねている。

「もう、暴れないの!」

 一番お姉さんのソフィーにピシャリとそう言われて、パスカルが一気に半泣きになる。

「ああもう、すぐ泣くんだから! 騎士様なんでしょう? 泣かないの!」

 困ったようにそう言ったソフィーは、双子の片割れであるマシューを振り返った。

「ちょっと、見てないで貴方が面倒を見てちょうだい! ほら!」

 ソフィーからパスカルを押し付けられて困ったように笑ったマシューだったが、仕方がないと言ったふうに笑ってパスカルを抱き上げた。

 そのまま自分の右肩に座らせてやる。もちろん、両足をしっかり支えているので落ちる心配はない。

「うわあ〜高い!」

 一気にご機嫌になったパスカルが嬉しそうに笑いながらまたこっちに手を振るのを見て、レイは笑って手を振り返した。

 また周囲にいた人達が大きくどよめく。

「もう、ちょっと見せ物になった気分だね」

 目を丸くして自分を見ている人達を横目に、小さくそう呟いて小さくため息を吐いたレイだった。



「まさに軍神サディアスの再来だな。いやあ、これは驚いた」

 笑ったディレント公爵の声に振り返ると、ゲルハルト公爵と並んでこっちへ歩いてくるところだった。

「いやあ、ヴィゴよりこっちの方が軍神そのものだな。本当に見事だ」

 笑いながら何度も頷くゲルハルト公爵は、完全に面白がっている。

「こうすれば、軍神の目覚めの場面になりますよ」

 笑ったルークが、後ろを振り返って道具の準備をしている従卒達を見た。

「ちょっと失礼」

 声を掛けてレイにはミスリルの槍を、ヴィゴにはミスリルの盾を持たせる。

 心得たヴィゴが笑いながら、先程したようにレイと背中合わせの位置に立つ。

 今度のどよめきは先ほどまでの比ではなかった。

「おお、これは素晴らしい。まさに軍神の目覚めの場面そのままだな」

 笑った両公爵が揃って拍手をするのを見て、レイも笑顔で一礼した。

「この後の役割、しっかりやりなさい」

 笑ったヴィゴにそう言われて、やや緊張しつつもレイも笑顔で頷く。

 先程ここへ来る馬車の中で、この後のレイの役割について詳しい説明を聞いている。

「でも、大丈夫かなあ……」

 手にしたミスリルの槍を軽く回しながら、不安そうに小さな声で呟く。

「大丈夫だよ。胸を張って堂々としていればいい」

「はい!」

 ヴィゴに背中を叩かれて、慌てて背筋を伸ばすレイだった。



『ふむ、この場は清浄だな。よし、では我ものんびりと儀式を楽しむとしよう。主殿の晴れ姿をしっかりと目に焼き付けておかねばな』

 光の精霊達が集まってきて、ブルーのシルフにこの場が清浄である事を報告すると、満足そうに笑ったブルーの使いのシルフは小さな声でそう呟いてからふわりと飛んでレイの右肩に座った。

「あ、ブルー来てくれたんだね」

『うむ、大事な役目を賜ったな。しっかりやりなさい』

「そうだね。頑張るからそこで見ていてね」

 笑ってブルーの使いのシルフにそっとキスを贈ったレイは、小さく深呼吸をしてから顔を上げて前を向く。

 ちょうど案内の為に神官が来てくれたので、神官と一緒に竜騎士達は全員揃って神殿の中へと入っていった。

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