大切な贈り物の数々
「さて、じゃあ次は贈り物の交換会だね」
嬉しそうなレイの言葉に、マーク達も笑顔で頷く。
執事が、大きなワゴンを押してきてくれたのを見たレイ達が立ち上がり、シルフ達に手を引かれてニーカとクラウディアも立ち上がる。
マークとキムも、顔を見合わせて揃って立ち上がった。
「せっかくだから顔を見て手渡ししたくて、ニーカの分も今日渡す事にしたんだ。降誕祭当日に届けられなくてごめんね。それから、こっちがディーディーの分だよ」
笑ったレイがそう言ってニーカとクラウディアに包みを渡す。
「ありがとう。うん、もちろん分かっていたわ」
満面の笑みでそう言って受け取ったニーカは、隣でレイから包みを受け取るクラウディアを見上げた。
顔を見合わせた二人が、揃って頷き包みを開ける。
「うわあ、素敵な膝掛け! ふわふわだわ!」
「本当ね。すっごくふわふわだわ」
薄紅色に灰色の房飾りが四隅に付いた、クロサイトの色の膝掛けを抱きしめたニーカが嬉しそうにそう言って頬擦りする。
それを見て、自分の分を取り出したクラウディアもあまりの柔らかさに笑顔になる。彼女が取り出した膝掛けは、ニーカと同じ優しい薄紅色で、四隅には真っ白な房飾りが付いている。
「あら、ディアのは青じゃあないのね」
笑ったニーカの言葉に、クラウディアだけでなくレイまで真っ赤になってしまい、あちこちから笑いがこぼれる。
「神殿の皆にも、竜騎士隊の皆様からたくさんの温かな靴下をお送りいただいたと聞きました。本当にありがとうございます」
膝掛けの下に入っていた綿兎の靴下を手にした笑顔のクラウディアの言葉に、見守っていた竜騎士達も笑顔になる。
「まだまだ寒い日が続きますからね。神殿は冷えるでしょうから、どうぞ遠慮なくお使いください」
「ちなみに、靴下を贈ろうって言い出したのはレイルズだよ」
マイリーの言葉に続き、にんまりと笑ったルークがそう言ってレイをこっそり指差す。
「まあ、そうなんですね。ありがとうございます、レイ。皆、とても喜んでいました」
目を輝かせるクラウディアの言葉に、恥ずかしそうにしつつも笑顔になるレイだった。
「まだ何か入ってるわ。これは……うわあ、万年筆ね、これ! 嬉しい。一つ欲しかったの! ありがとうレイルズ!」
万年筆とインク瓶の入った箱を開けたニーカが、嬉しさのあまりその場にぴょんぴょんと飛び跳ねる。
その隣では、同じく万年筆とインク瓶の入った箱を抱きしめるクラウディアの姿もあった。
「喜んでもらえたみたいでよかった。使い方は分かるかな?」
「ええと、ここにインクを入れて使うんだよね。知ってるわ。時々事務所でお手伝いをする時に、インクを入れるのをやらせてもらった事があるもの」
得意げにニーカがそう言って笑う。
「それからこっちには本があるから、これもどうぞ」
彼女達に選んだ本が入った包みも渡し、取り出して歓声を上げる二人をレイは笑顔で見つめていた。
「あの、全然お返しにもならないけど……私からは、これを」
クラウディアが少し恥ずかしそうな笑顔でそう言い、小さな包みをレイに渡す。
「ありがとう。開けてみるね。うわあ、綺麗!」
出てきたのは、真っ白な布で作られた何かの物入れのようで、軽く巻いて筒状になっている。
「うわあ、全面にレースが縫い付けてある。こっちのリボンもレースだね」
見事なレースに包まれたその筒に巻いてある細長いリボンを解くと、半分がまるで蓋のように二重になっていて、手のひら程の大きさの布の内側の真ん中部分に分厚い絹のリボンが縫い付けてある。なんとも不思議な形をしている。
「それは、刺繍用の針を収納しておくための針入れよ。真ん中の分厚い絹のリボンに針を刺しておいて、上から被せをして巻いておくの。そうすれば、刺した針が落ちないからね。刺繍をするって聞いたから、きっとこれからいろんな太さや長さのお針を使うでしょう? 糸を通さずに針山に刺したままにすると、何かに当たって中に入っちゃったりするからね。これだと無くさないからよかったら使ってちょうだい」
「へえ、凄い。これ、ディーディーが作ったんだよね?」
「ええ、レースは私が作ったけど、最後の仕上げはニーカとジャスミンも手伝ってくれたわ」
「ありがとう、大事に使わせてもらうね!」
嬉しそうにそう言って、もらった針入れを抱きしめる。
「ええと、俺達からは……レイルズがこれで、クラウディアとニーカがこれ。それから……こっちはジャスミンに」
マークとキムがそう言って、それぞれの包みを渡していく。
「へえ、夜空の模様のペーパーウエイトだ。すごい」
レイの包みに入っていたのは、やや平たいガラス製のペーパーウエイトで夜空を模したそこには様々な星が煌めいていた。
「まあ、あくまでも夜空風、だからな! それに正確な星の位置は求めないでくれよな」
絶対にレイならそう言うだろうと予想して、笑ったキムがあえて先にそう言って笑う。
「あはは、言おうと思ったら先に言われちゃったね。じゃあ、これはどこか別の世界の星空って事にしておくね」
二人も、レイから渡された大小の書類入れを見て大喜びしていた。
「うわあ、素敵! これって、お祈りの際の数珠を入れておく袋ね。ああ、トレーもある!」
マークから渡された包みの中を見たジャスミンの嬉しそうな声に、ニーカとクラウディアの声が重なる。
少女達が手にしているのは、綺麗な花模様の布に水晶のビーズが縫い付けられた綿入り布の数珠入れで、トレーは手のひらよりも少し小さくて半透明の細長い形をしている。
「これは水晶ね。嬉しい。水晶のトレーも欲しかったの」
ジャスミンがそう言って、手にしたトレーをそっと撫でる。
「いや、俺達の予算だと、そんな高価なのは選べなくて……もっと良いのなら、もっと透明度の高いのがあるんだろうけど……あの、こんなのでごめんよ」
真っ赤になったマークの言葉に、ジャスミンが慌てたように彼の手を取る。
「そんな事ない! ありがとう。すごく嬉しいわ。大事に使わせてもらいます」
「う、うん。喜んでもらえて……よかった、です」
手を取り合ったまま顔を見合わせたところで、我に返った二人が揃って耳まで真っ赤になり、慌てて握っていた手を離す。
その瞬間、あちこちから吹き出す音が聞こえて部屋は笑いに包まれたのだった。
少女達からマークとキムに贈ったのは、手作りの真っ白な布製の蓋付きの小物入れで、内側にはガラス製の瓶が入っていて机の上に置いてキャンディポットとして使うものだ。
「事務所で頭を使ったら甘い物が欲しくなるでしょう? 飴は油紙に包んで入れておけば良いからね」
「うん、ありがとう。机の上が華やかになるよ」
「散らかしすぎて、書類の下敷きにしないようにね」
嬉しそうな二人の言葉にレイがそう言って笑い、またしてもその場は大笑いになったのだった。




