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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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1963/2489

新しいドレス職人

 竜舎から引き上げてきて本部に戻ったニーカとジャスミンは、一旦タドラと別れて、出迎えてくれたシモナの案内で通された、先ほどとは違う広くて豪華な部屋には、部屋の中央に大きな鏡が置かれていて、その前に一人用のソファーが二台並んで置かれている。

 壁際に何台も置かれている移動式のハンガーには、ぎっしりと並べられた大量のドレスや上着、マントなどが掛けられている。

 また別のハンガーには、ドレスの下に着る薄い布製の服や下履きもぎっしりと掛けられている。

 そして、その前にはやや年配の女性を先頭に十人の女性達が並んで控えていたのだ。そして少し離れた壁際には、先ほど紹介されたニーカ付きの侍女達とジャスミン付きの侍女達の姿もあった。

 当然だが、部屋にいるのは全て女性だ。



「はじめまして。竜司祭となられるお二方の衣装作りを担当させていただきます。ナイルと申します」

 やや年配の大柄な女性が、笑顔でそう言って一礼する。

 長い髪を結い上げているその女性は、装飾品の類は一切身につけておらず、化粧も最低限だ。

 貴族の女性はいつも着飾っているのだと思っていたニーカは、挨拶も忘れてぽかんと口を開けてナイルと名乗ったその女性を見上げていた。

「初めまして。ジャスミンです。お噂はかねがね伺っておりましたわ。ナイル様に衣装を作っていただけるなんて光栄です」

 ニーカと違って目を輝かせたジャスミンの嬉しそうな言葉に、ナイルは満面の笑みになった。

「まあまあ、お若い方にそのように言っていただけるなんて光栄です。是非、後ほど今日の衣装についての忌憚ないご意見や感想をお聞かせくださいませ」

 笑顔で握手を交わす二人を、ニーカが戸惑うように見ている。

「あの、ニーカです。どうぞよろしくお願いします」

 戸惑いつつ挨拶するニーカを、ジャスミンは目を輝かせて見つめていた。



「あのねニーカ、ナイル様は貴族の女性のドレスを作るすごい職人なのよ。彼女が作るドレスは、女性達の憧れなのよ」

 力説するジャスミンだったが不意に口をつぐんで考え込み、布の束を確認するナイルを振り返った。

「ナイル様がここに来てくださったって事は、もしや、もう他のドレスは作らないのですか?」

 ジャスミンの言葉に、ナイルは笑顔で首を振った。

「実はこの度、正式に私の名前で工房を立ち上げる事に致しました。今まではあくまで私が個人的に仕事を引き受けて、一部のお針以外はほぼ私が全ての作業を行っておりましたから、どうしても作れるドレスの数が少なく、皆様には申し訳ない事をいたしましたから」

 苦笑いするその言葉にジャスミンは首がもげそうな勢いで頷いている。

 彼女が作るドレスはとても仕上げが美しく歩く芸術品と言われるほどに素晴らしいのだが、とにかく数が少ない。

 どれだけお金を積もうとも、そもそも注文を取ってくれない有様だったのだ。

 実はジャスミンもこっそり母上に、彼女にドレスの制作をお願い出来ないか聞いてみた事があるのだが、母上のつながりを以ってしても、今のところ全敗続きだ。

 それがまさか、彼女が竜騎士隊付きのドレス職人になってくれたなんて。

 思わぬ縁に、嬉しくて笑い出しそうになるのを必死で我慢しているジャスミンだった。



「ですが今より一年間は、私はこちらのお仕事を最優先にて受けさせていただき、それ以外の注文はお断りする所存でございます。一年を通じての一通りの衣装をお届けして以降は、補修や追加の衣装製作をお受けさせていただく予定でございます。それらが全て落ち着きましたら、また可能であれば他のドレスの受注を再開させていただきたく思っております」

 当然のようにそう言ってくれる彼女を、ジャスミンは尊敬の眼差しで見つめていたのだった。



 実のところ、彼女を竜騎士隊付きのドレス職人に推薦したのは、元々彼女と個人的な友人を通して繋がりのあったマイリーなのだ。

 マイリーにしてみれば、知り合いに素晴らしい腕だと評判のドレスを作れる女性職人がいるので、竜司祭の衣装を考えて貰えないかとお願いしてみたら、二つ返事で引き受けてくれた。程度の認識で、まさか彼女がそんなに人気の職人だとはマイリーは確実に知らないだろう。

 最終的に彼女が竜司祭の衣装を全て担当すると聞いた時には、当然彼女の評判を知っていたタドラやルークは、冗談抜きでその場で椅子から転がり落ちた程に二人揃って驚いたのだった。

 そして、彼女の提案した竜司祭の衣装の、それは見事な数々のスケッチ画を見て、タドラやルークだけでなくマイリーでさえ感心の声を上げたのだった。



「ではまず、お二人のお身体を測らせていただきます」

 笑顔のナイルの言葉に、控えていた女性達が即座に進み出て、五人ずつに別れてジャスミンとニーカを取り囲んだ。

「失礼致します」

 そう言って一礼した女性達は、あっという間にジャスミンとニーカの服を脱がせて下着姿にしてしまった。

 部屋の暖炉には火が入れられていてとても暖かいので、風邪をひくようなことはないだろう。

 何をどうしたら良いのか分からず戸惑うニーカの周りにいた女性達が、手にしたメジャーを使って、あっという間に計測を終えてくれた。

 ふわふわで軽い上着と膝の上に毛布を掛けられて、そのままソファーに座るように促される。

 素直にソファーに座った二人の前に進み出たナイルは、笑顔で一礼した。

「ではまず、ジャスミン様とニーカ様がこちらでお過ごしいただく際の普段着をご提案させていただきます」

 二人の前に、それぞれ何台ものハンガーが運ばれて来る。

 笑顔でその様子を見ているジャスミンと違い、ニーカは目をこぼれんばかりに見開いて、言葉もなく呆然と見つめていたのだった。

 次々に目の前に広げて見せられるドレスは、どれも物語に出てくるお姫様のようだ。

 一通り見せてもらったこの豪華なドレスの数々が普段着だと知り、さらに実際に今からこれを着てみるのだと言われたニーカは、もう驚きのあまり瞬きも出来ずにソファーに座ったまま固まってしまったのだった。

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