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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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1938/2488

神殿の休憩室にて

「ただいま戻りました。おう、休憩中だったか」

 精霊王の祭壇の守りは、交代で休憩を取りながら降誕祭の期間中ずっと行われている。

 ちょうどどこかへ出かけて席を外していたルークが戻ってきた時、休憩用に用意された別室にはレイとタドラ、それからヴィゴの三人が座って今まさにカナエ草のお茶を飲もうとしていたところだった。

「おかえり、ああ俺達も今ここへ来たところだ。それでどうだった?」

 顔を上げたヴィゴが、少し心配そうにルークを見る。

「一通り確認してきました。事件のあった問題の倉庫も改めて確認の上、浄化処置を施しましたよ。ラピスをはじめ他の竜達の寄越してくれた光の精霊達も協力して徹底的に確認してくれました。まあ、特に何もないのでもう大丈夫だろうとの事です」

「そうか、それは何よりだ」

「ただし、ラピスによると、少なくとも今回の事を手引きした者については、やはりもう分からないとの事です。支配の糸は完全に切れていると」

「そうか。しばらくは監視の目を強化するより他あるまい」

 真顔で頷き合う二人を、レイとタドラは黙って見ていた。

「えっと、また何かあったんですか?」

 戸惑いつつも遠慮なく尋ねるレイの言葉に、ルークが振り返る。

「いや、現場の確認と浄化作業の為に街の女神の神殿まで行ってきたんだよ。第四部隊の光の精霊魔法を使える兵士達と一緒にね。それで、無事に終わって戻って来たところだ」

「ああ、そうだったんですね。ご苦労様でした。えっと、お茶飲みますよね?」

 そう言って立ち上がったレイが、手早くルークの分のカナエ草のお茶を追加で用意する。

「ああ、ありがとうな。そうそう、クラウディアが来ていたよ」

「へ? ディーディーがどうして?」

 カナエ草のお茶の入ったカップをルークの前に置きながら、驚いたレイは首を傾げる。

「念の為、巫女達の住んでいる寮も浄化処置をすべきだろうって事だったんだけど、今、本部の第四部隊には女性で光の精霊魔法を扱える人がいないんだよ。それでクラウディアにお声が掛かったらしい」

 納得してレイとタドラが揃って頷く。

 結界の強化や修復と違い、穢れた場の浄化処置を行えるほどの光の精霊魔法を扱える人は、第四部隊であっても限られている。

「念の為、シルフを彼女につけていたんだけど、なかなか上手く浄化処置をしてくれていたよ。また腕を上げたみたいだな。彼女も頑張っているようだな。大したもんだ」

 ディーディーをルークに褒められて、レイは自分の事のように嬉しくなって満面の笑みで頷くのだった。



「年末年始の祭事が全て終わるまでは、ジャスミンも今まで通り見習い巫女として女神の神殿で務めに入る予定だよ。一応、年明けの一通りの祭事が終わったところでニーカがこっちに引っ越して来て、それに合わせてニーカは還俗して三位の巫女の位は返上、ジャスミンもそれに合わせて本部に戻ってくる予定。それ以降は、まあ、色々とね」

「ああ、社交界への顔出しについてはまだ未定だが、来年の花祭りの頃から、公式の祭事には正式に竜司祭見習いとして顔を出させる予定だよ」

 タドラの説明に、ヴィゴが追加で教えてくれる。

「二人ともまだ未成年だけど、公式の祭事の際には出るんですね?」

 自分達は未成年の間は、公式の場には一切出なかったが、彼女達は違うのだろうか?

 心配そうなレイの質問にタドラが頷いて教えてくれた。

「まあ、今回は全く新しい役職だからね。一通りの彼女達の役割については決まったけれど、実際にどのように行うかについてはまだ手探りの部分もあるんだ。それに祭事の際に顔を出すと言っても、当分の間、参加するのは全てこのお城の精霊王の別館と女神の分所で行われる祭事だけだからね。直接外部の人と触れ合う機会は無いんだ。二人が成人以降は、花祭りの会場や、定期的に街の精霊王の神殿や女神の神殿での祭事にも交代で顔を出す予定だよ」

「へえ、そうなんですね。えっと、僕にはよく分からないけど、彼女達も頑張ってるんだね」

「ニーカもジャスミンも、覚える事だらけだって言って、毎回文句言っているね」

 笑ったタドラの言葉にルーク達も苦笑いしている。

「まあ、口では文句を言いつつも、二人とも本当に真面目に取り組んでいるんだから大したものだよ」

「僕は、彼女達の正式な衣装が出来上がるのが、もう楽しみで仕方がないんですよね」

 カナエ草のお茶を飲んだタドラの言葉に、レイは思わず自分の制服を見る。

「えっと、ニーカとジャスミンは、これと同じ服を着るんじゃあないの?」

 自分の赤い上着の胸元を引っ張りながらそう尋ねると、なぜか全員から呆れたように見られた。

「当たり前だろうが。お前、彼女達に軍服を着せるつもりか?」

 ヴィゴが呆れたようにそう言って自分の服を引っ張る。

「ああ、それはそれでちょっと見てみたいかも」

 笑ったルークを見て、ヴィゴが無言で足を蹴っ飛ばした。

「マティルダ様の紹介で、女性のドレスや装飾品などに詳しい衣装担当の女性を全部で五名、それから神殿の巫女達の衣装を担当している部門からも、詳しい女性を二名、竜騎士隊の本部付きとして正式に配属していただいたんだ。今その人達が相談しながら、ジャスミンとニーカの竜司祭としての正式な衣装や装飾品を考えてくれているところだよ。もちろん公式の部分以外の服、つまり普段に着る服についても、全部おまかせしているよ」

 笑ったタドラの説明に、納得したレイは何度も頷く。

「そっか。確かにそうだね。全く新しい役職なんだから、全部一から考えて作らないといけないんだ」

 レイは、今更ながらそれに気付いて呆然とそう呟く。

「ね、分かってくれた? もう決めなきゃいけない事だらけで大変なんだよ」

 肩をすくめて笑うタドラは、それでも楽しそうだ。

「うう、何も出来ないけど、もし僕でも手伝える事があったらいつでも言ってください!」

「そうだね、頼りにしてるから、その時はよろしくね」

 笑ったタドラに当然のようにそう言われてしまい、実際自分に何が出来るのか考えて、ちょっと自分が情けなくなったレイだった。

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