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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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降誕祭での様々な役割

「へえ、すごいや。降誕祭前後って、こんなにたくさんの祭事があるんですね」

「何を他人事みたいに関心してるんだよ。言っておくけど、これにお前だって参加するんだからしっかり覚えてくれよ」

 渡された降誕祭の祭事に関する何枚もの資料を熟読し終えたレイが、顔を上げて関心したようにそう呟いたのを見て、同じ資料を机の上に広げて整理していたルークが、呆れたようにそう言ってレイの腕を突っついた。

「でも、別に僕一人で参加するわけじゃあないですよね?」

「そりゃあそうだよ。降誕祭に関する主な祭事は精霊王の神殿の別館で行われるけど、場合によっては女神の神殿の分所で行われるものもある。その場合は竜騎士隊も半分に分かれてどちらかに参加するんだよ。ほら、こっちの資料にお前がどこの祭事に参加するか詳しく書いてあるから、よく見ておくように」

 別紙で渡された資料には、降誕祭前の祭事に始まり降誕祭の期間中、それから最終日に行われる結びの祭祀と呼ばれるものまで、レイが担当する部分には赤字で詳しい説明が記入されていて、楽器の演奏、と書かれた部分には、肩掛けを忘れないようにとのルークの文字で注意書きが記されていた。

「そっか、神殿での祭事で演奏する祭には、あのブルーの色の肩掛けを身につけるんですね」

 見事な刺繍が施されたブルーの鱗のような肩掛けを思い出して笑顔になる。

「ああ、あれは何度見ても素晴らしい出来栄えだよな。何をどうやったらあんなのが出来るのか全く解らないよ。俺には未知の技術だな」

 笑ったルークの言葉に、レイも苦笑いしながら大きく頷く。

「僕もちょっとだけ刺繍をするけど、あれは技量の違いなんて程度のものじゃあないと思うな。あんな刺繍は、多分僕には一生かかっても出来ないと思います!」

「おお、断言したな。まあ、王宮のお針子さんの技術は国内では最高峰だって言われているから、当然と言えば当然だな。ちなみにティア妃殿下がお輿入れになって以降、オルベラートとの手工芸での技術交流も盛んになっているって聞くから、もしかしたら王宮のお針子さんからもオルベラートへ行った人がいるかもな」

「へえ、そうなんですか?」

 驚いたレイが顔を上げてルークを見る。

「おう、俺も詳しく聞いたわけじゃあないけど、友人にそっち方面の担当をしている奴が何人かいてさ。オルベラートは、特に刺繍とレース編みに関しての技術は世界最高峰だって言われているんだよ。だから技術交流って名目で職人達を行き来させているんだけど、特にその二つに関しては、ほぼこっちが習う事ばかりだって聞いているよ。女神の神殿にも、技術指導の名目でオルベラートから僧侶が何人も来たって聞いているから、もしかしたらクラウディアやニーカもレース編みや刺繍を習っているかもな」

「ああ、以前そんな話をチラッと聞いた覚えがあるね。彼女達もすごく細かいレース編みを編んでいたから、きっと習っているんじゃあないかな」

「以前贈った、あのアンティークのレースやサンプラーが役に立つといいな」

「あれは確かに、どれもすっごく綺麗だったものね」

 人の手で作ったとは思えないくらいの細やかなレースの数々を思い出して、笑顔で何度も頷くレイだった。



「ああ! 始まりの歌! 僕も参加出来るんですね!」

 自分が担当する様々な祭事とその役割について詳しく書かれた資料を照らし合わせていたレイは、ふとある項目で手が止まり嬉しそうな声を上げた。

「ああ、新人は皆それは喜ぶよな。俺もそれは、初めての年に張り切ってやった覚えがある」

 レイの手元をルークが覗き込みながら面白そうに笑っている。

「初めて見た時、皆、本当に格好良かったもの。すごいや、今年は僕もあれをするんだ……」

 資料を持ったまま、目を細めて感極まったようにそう呟く。

「まあ、楽しみにしているといい。一般の人達の前で歌うのは、普段とはやはり違うからな」

「へえ、やっぱりそうなんだね。僕、上手く歌えるかなあ」

「一人で歌うわけじゃあないけど、音程は外さないようにな」

 笑ったルークの言葉に、レイが悲鳴を上げて書類に突っ伏す。

「うう、頑張ります」

「まあ、降誕祭で人前に出るのは始まりの歌といくつかの節目の祭事の際に演奏や歌を披露するくらいで、基本的には神殿内部での務めが多いかな。深夜の蝋燭の守役とか、立ち合いって言っても神官達と一緒に経典を読んだり蝋燭を灯したりするくらいだよ。ああ、お菓子の袋詰めはきっとお前なら楽しめると思うぞ」

「お菓子の袋詰め?」

「おう、前半にある裏方での作業なんだけど、街の精霊王の神殿で、降誕祭当日に子供達に配るための焼き菓子を専用の焼き印が入った袋に詰める作業の事。これは座って作業出来るし、第二部隊や第四部隊の下級兵士達なんかも一緒にするんだよ。甘い香りが立ち込める部屋で、調理担当の僧侶達やお城の製菓担当の人達が沢山作ってくれたお菓子を皆で一緒に和気藹々と話をしながら袋詰めするんだよ。きっとお前の知らないいろんな裏方の話なんかを聞けると思うぞ」

「へえ、それは楽しそうだね」

「おう、俺達もあれはいつも楽しみにしてるよ。一応、出来上がった袋詰めされたお菓子は、竜騎士様が詰めてくれたお菓子だと言って配られるらしい。毎年すぐに無くなってしまうくらいに子供達に大人気なんだって聞いているぞ」

「分かりました! じゃあ頑張ってたくさん袋に詰めます!」

 笑顔で大きく頷くレイを見て、ルークも笑って頷いた。

「まあ、一つの袋に入れるのはお菓子が一つだけだからな。一つの袋に沢山入れないように」

「ええ、何個入るか試すつもりだったのに〜〜!」

 沢山詰める気満々だったレイは、ルークの言葉に思わず吹き出してそう言い、残念そうに肩を落としたのだった。

「これは、贈り物を貰えない貧しい子供達に特に優先して配られるものだからな。いつも、一つでも多く袋に詰めようって、皆頑張っているよ。だからお前も、頑張って詰めてくれよな」

 最後は真顔のルークにそう言われて、レイも真剣な顔で頷いたのだった。

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