誓い
「私からの報告です。私、光の精霊が見えるようになりました!」
堂々と胸を張ったニーカの言葉に、ヴィゴだけでなく一緒に聞いていた大人達全員が驚きに固まる。
「ニーカ凄い!」
逆に、即座に反応したのが、ヴィゴの娘達のクローディアとアミーだった。
二人はニーカに駆け寄って手を取り、大はしゃぎで手を叩き合っている。照れたように笑いつつもニーカもとても良い笑顔だ。
「ええ、ニーカ凄い! じゃあ、ニーカの側にさっきから光の精霊達が集まってきていたのは、そういう意味だったんだね!」
目を輝かせるレイの言葉に、頬を真っ赤にさせたニーカはこれ以上ないくらいの良い笑顔で頷く。
「お、おう……それは確かに、重要な報告だな……」
ようやく驚きから復活したアルジェント卿の言葉に、こちらもようやく復活したヴィゴとカウリは、無言のまま顔を見合わせた。
今ここにいる中で、光の精霊が見えるのはレイとジャスミンだけだ。
アルジェント卿も、風と水の精霊魔法は最上位まで扱えるが、残念ながら光の精霊魔法の適性は無かったらしく、光の精霊達を見る事は出来ない。
「またしても、未成年であるニーカに新たな能力が……しかも、光の精霊魔法だと?」
ヴィゴの小さな呟きに、カウリとタドラが絶句する。
「これは……後程陛下にも報告した方が良かろう」
無言で頷く二人を見て、ヴィゴは一つ深呼吸をしてからニーカの前に片膝をついてしゃがんだ。
これでもまだ、ニーカよりもヴィゴの視線の方が高い。
「おめでとうニーカ。精霊王より賜りし新たなる力に祝福を」
さらに少し体をかがめて目線を合わせたヴィゴが、優しい声でそう言ってニーカの小さな手を取る。そしてそっとその甲に口付けた。
「今ほど、自分に光の精霊魔法の適性が無いのを悔しく思った事はないな」
苦笑いするヴィゴの言葉に、ニーカも困ったように笑って頷く。
「私も残念です。もしそうなら、ヴィゴ様に教えていただけたのに」
そう言ったニーカは、自分の前にしゃがんでくれているヴィゴに駆け寄り、伸び上がってその頬にキスを贈った。
そして、その場に両手を握りしめて額に当てて跪いた。
「ありがとうございます。私、ニカノール・リベルタスは、精霊王より賜りしこの名と、そして我が魂の伴侶であるスマイリーにかけてお誓い申し上げます。たくさん勉強して、良き大人になります。そしていつかこの国に僅かなりともご恩を返せるよう努めます。決して、決して私がこの国に仇なす事無きよう、未熟な私をどうぞお導きください」
真摯な誓いの言葉とその様子に目を見開いたヴィゴだったが、ゆっくりと立ち上がって無言で執事に目配せする。小さく一礼した執事が、即座に剣置き場からヴィゴの大剣を持って来た。
両手で差し出されたそれを受け取り剣帯に装着したヴィゴは、ゆっくりと竜騎士の剣を半分ほど引き抜いてから勢いよく戻した。ミスリルの火花が散り、集まってきていたシルフ達や光の精霊達が大喜びではしゃぎだす。
「立ちなさい。幼き、なれど気高き魂を持つものよ。ニカノール・リベルタスの誓い、このヴィゴラス・アークロッドが確かに預かった。見届けてやる故しっかりと精進しなさい。其方のこれからの人生に幸多からん事を」
突然目の前で始まった本物の精霊王への誓いの言葉に、子供達は声を上げる事も忘れて釘付けになっている。
レイもまた、目を潤ませてそんな二人を見ていた。
「ありがとうございます。ヴィゴ様。私、この国に来られて本当によかった。今の私はとてもとても……幸せです」
立ち上がったニーカは、自分よりも遥かに背の高いヴィゴを見上げた。
そして、右肩に座って頬に何度もキスを贈るクロサイトの使いのシルフにもそっとキスを返した。
「スマイリーも、いつもありがとうね。これからもよろしくね」
『もちろんだよ、ニーカ!』
『光の精霊魔法なら僕が教えてあげるからね!』
『僕だってたくさん勉強しているんだよ!』
『ラピスや他の皆からも』
『色んな事を教えてもらっているんだからね!』
胸を張る愛しい竜の使いのシルフの言葉に、嬉しそうに笑ったニーカはもう一度そっとキスを贈った。
それを見た子供達が揃って歓声をあげ、その場は温かい拍手に包まれたのだった。
燭台に並んで座ったそれぞれの竜の使いのシルフ達は、笑顔で頷き合うヴィゴとニーカの二人を、揃って優しい眼差しで見つめていたのだった。




