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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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今日の予定と食堂でのひと時

「えっと、今日の予定はどうなってるの?」

 ようやくいつも通りのふわふわに戻った髪を撫でたレイは、手早く身支度を整えながらラスティを振り返った。

「午前中は、特に予定はございませんのでゆっくりなさってください。午後からは、降誕祭の前後のご予定の説明をルーク様と私からさせていただきます。夕刻にはボナギル伯爵ご夫妻とヴィゴ様ご夫妻、それからタドラ様とカウリ様、アルジェント卿とご一緒に観劇の予定が入っておりますので、どうぞお楽しみに。夕食は、アルジェント卿のお屋敷にて、お子様方も皆様お揃いの晩餐会を予定しております」

 剣帯を締めていたレイは、聞き慣れない言葉に思わず手を止める。

「か、観劇?」

「はい、色々と相談の上調整させていただいた結果、レイルズ様はゲルハルト公爵閣下からの招待券を使わせて頂く事になりました。ちなみにカウリ様は、ディレント公爵閣下からの招待状をお使いいただきます」

 まさかの両公爵からの招待状に驚きつつも頷く。

「えっと、観劇は初めてだね。どんな舞台なの?」

 興味津々でそう尋ねると、にっこりと笑ったラスティは、剣置き場に置いてあったレイの剣を手に取り渡した。

 レイがそれを受け取って自分で剣帯に取り付けた時、突然レイのお腹が大きな音を立てた。

 顔を見合わせて揃って吹き出す。

「だって、お腹減ったんだもん!」

 照れて真っ赤になりつつも、笑いながらそう訴える。

「そのようですね。まずは食堂へ行ってお食事に致しましょう。観劇に関する詳しい説明は、午後からの説明と一緒にさせていただきます」

 なにやら含んだ言い方に、首を傾げつつも素直に頷く。

「分かりました。それなら後で詳しく教えてね。それじゃあまずは食べに行こう、僕、冗談抜きでお腹が空きすぎて倒れそうです」

 笑いながらラスティの腕に捕まる。

「おやおや大変だ。私ではお倒れになるレイルズ様を到底支えきれませんからねえ。では、応援を呼んで参りますので、それまでここで遠慮なく転がっていてください」

「ラスティ酷い!」

 顔を見合わせてもう一度揃って吹き出す。それから頷き合って一緒に食堂へ向かったのだった。




「あ、マークとキムがいる。へえ、こんな時間に食事なんだ?」

 到着した食堂で、トレーを持っていつもよりも短い列に並んだところで、少し離れたテーブルに並んで座っているマークとキムを見つけた。

 だけど、なんだか二人とも元気がないみたいに見えるし、取ってきている料理もいつもよりも少ないみたいだ。

「あれ? どうしたんだろうね?」

 いつものようにレバーフライをまとめて取りながら、横目で二人を見て首を傾げる。

「ああ、昨夜は夜会の応援要員でしたからね。もしかして飲みすぎたのかもしれませんよ」

 その辺りの事情に詳しいラスティの言葉に、レイは首傾げる。

「えっと、応援要員って昨夜の夜会で放浪の賢者の格好をしてくれていた、あれの事だよね? 飲み過ぎって?」

「それはどうぞご本人達からお聞きください」

 笑ったラスティに言葉に頷き、とにかくまずは並んだ料理をせっせと取り分けて行った。

 ポットにお湯をもらい、カナエ草の茶葉を落として蓋をする。ハチミツの瓶も一本取ってから二人の座っている向かい側に座る。ラスティは、レイと並んで席を一つ離れて座った。

「おはよう。今頃食事なんだね」

 レイの存在に全く気がついていなかった二人は、突然目の前に座ったレイに話かけられて驚いて慌てて立ち上がり、揃って置いてあったカナエ草のお茶の入ったポットを転がしかけて大慌てしていた。



「ごめんね。そんなに驚くと思わなかったからさ。制服は濡れなかった?」

 少しだけこぼしたお茶は、すぐにラスティが拭いてくれたので何とか制服をお茶まみれにするのは免れる事が出来た。

 苦笑いするレイの言葉に、もう一度ポットにお湯を入れてきた二人も苦笑いしつつ席に座る。

「だ、大丈夫です。あの、大変失礼いたしました」

「あの、少々ぼうっとしておりまして、申し訳ございません!」

 大いに焦って謝る二人の言葉に、ラスティも苦笑いしている。

「もしや、飲み過ぎですか?」

 小さな声でそう尋ねられて、二人が揃って吹き出す。

「いや、あの……はい、そうです」

「朝から酷い二日酔いで、慣れない事はするもんじゃあないなって話をしていたんです」

 照れたように笑う二人の言葉に、ラスティも笑って頷く。

「えっと……?」

「ああ、応援要員の方は、夜会終了後に余った料理をもらえるんですよ。それから余ったワインも。まあ、余り物とは言っても、当然一般兵の方々が普段食べているよりは遥かに豪華な料理やお酒ですので、皆大喜びで大いに飲んで食べるので、翌日お腹を壊したり二日酔いになる方が多いのだと聞いていますね」

「はい、その通りです!」

「二人揃って、二日酔いでした!」

 ラスティの説明に、揃って頷くマークとキムに、レイも笑って頷く。

「ああ、それでいつもよりも食欲がないんだね。えっと、良き水では治らなかったの?」

 こちらはすっかり二日酔いから復活しているレイが、残りのレバーペーストとレバーフライをこちらも最後の一個になった丸パンに豪快に挟んで食べながら笑っている。

「酷い頭痛は治ったんですが、まだちょっと残っているみたいで……」

「ですがまあ、今日は元々休みの予定だったので、もうこれを食べたら部屋に戻って寝る事にしました」

「あはは、それは正しいお休みの過ごし方だね。まあ、それなら明日には二日酔いからは復活していそうだから、大丈夫だね」

 恥ずかしそうに頷くマークとキムを見て、レイは楽しそうに笑っている。

 デザートまでしっかりと平らげたレイと違い、まだ食欲が戻らない二人は、果物を少し取って来ただけであとはひたすらカナエ草のお茶を飲んでいたのだった。

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