表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼竜と少年  作者: しまねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1852/2490

それぞれの入札と演奏部門の入札

「それでは、只今をもちまして、一回めの入札を締め切らせていただきます!」

 あちこちに設けられた箱が開かれ、集まった大勢の執事達がそれぞれの箱を集計していき、出品物の前には最高額を書いた人の名前と金額が表示されていく。

 あちこちでそれを見て嬉しそうな声をあげたり残念そうな声をあげたりする人達が現れて、会場内がざわめきに包まれる。

「よかった。レースは僕が落札出来たね」

 レースの箱にはボナギル伯爵夫人とレイしか入札していなかったらしく、すぐにレイの名前と金額が書かれた札がレースの前に置かれた。

 それ以外にもレイが入札したものは、どうやら全部無事に落札出来たみたいだ。

 しかし、中には入札が一件も無かったようで番号がそのままになっている出品物もある。苦笑いして顔を見合わせていた会場内の人達が、番号のままになっている出品物の周りに集まり始める。

「そっか、一度目で入札が無かったものがああやって分かるから、二回目にはそれに入札をするわけだね」

 納得したレイもせっかくなのでもう一度見て周り、ちょっと拙い出来の装飾カードにもせっせと入札していったのだった。



「まあまあ、お若いのに熱心です事」

 笑った優しい声に振り返ると、ルークの後援会の代表を務めてくれているマーシア夫人が笑顔でこっちを見ていたのだ。

 彼女の後ろには専属の執事が控えていて、その手には分厚い紙の束がある。

 慈善活動に熱心な彼女は、当然だが今夜の夜会でも相当の金額を入札している。

「せっかくですからレイルズ様の竪琴に入札させていただきましたわ。落札出来るかどうかは分かりませんが、貴方の演奏は見事ですものね。楽しみにしておりましてよ」

「ありがとうございます。心を込めて演奏させていただきます!」

 マーシア夫人の言葉に、目を輝かせたレイが嬉しそうに答える。

「そうね。ぜひゆっくりと演奏してちょうだいな」

 意味ありげなその言葉に、近くにいたルークとユーリが揃って吹きだす。

「そうだなあ。俺も、レイルズの演奏はゆっくり聞きたいよ」

「そうだな。是非ともゆっくりと演奏して欲しいもんだ」

 二人の言葉に、マーシア夫人がコロコロと笑う。

「でも、演奏時間は決められているんですよね?」

「そうですわ。そのギリギリのところを攻めるのが、奏者の腕の見せ所ですのよ」

 口元を手で隠した婦人の笑う声に、ルークとユーリだけでなく周りにいた人達までが揃って笑いながら頷いている。

「分かりました! では、時間丁度になるように頑張ります!」

 いまいち状況が分かっていないレイの雄々しい宣言に、周りからは笑う声と共に応援する声と拍手が聞こえていたのだった。



 二回目の入札では、どうやら全ての出品物に値段が付いたらしい。レイも、いくつかは競り負けたようだが落札する事が出来たものもあった。

 教えてもらった通りに金額指定札に自分が落札した金額を改めて記入して、サインをしてから募金箱に入れていった。

 執事達の手によって出品物はあっという間に撤去され、また次の出品物が用意されていく。

 どうやら次は本職の職人達の手による作品の出品だったらしく、見事な装飾品や細工物、実用的な万年筆や陣取り盤などもあり、当然だが入札の金額も一回目と二回目とは桁が違った。

 レイは、見事な装飾が施された陣取り盤が欲しくて張り切ってかなりの高額で入札したのだが、別の人にもう一桁高い金額で落札されてしまった。

 結局、ここでレイが落札出来たのは、ガラスペンと万年筆がそれぞれ一本ずつだけだった。



 次の出品物は女性向けの豪華な装飾品や衣裳などで、目の色を変えて殺到する貴婦人達に押しのけられてしまい、レイは入札に全く参加出来なかったし、そもそも出品物をろくに見る事すら出来なかったのだった。

「まあ、三度目はご婦人方の為の出品だから俺達は無理に参加しなくていいよ。この後は男性向けの出品があるから、お前も参加出来ると思うぞ」

 ワインを飲んでいるルークに笑いながらそう言われて苦笑いしつつ頷き、小腹が空いてきたレイは、壁面のお菓子が並んだ一角に向かったのだった。

「ここに並んでいるお菓子も、食べたら幾らでもいいからここへ募金するんだよ」

 ユーリの言葉に驚いたレイが改めてお菓子が並んだテーブルを見ると、ここにも募金箱があり赤い腕章をつけた執事が控えている。

「そっか、今回は食べたり飲んだりするのも寄附になるんだね」

 嬉しそうに笑ったレイは大きく頷き、早速並んだお菓子を選び始めたのだった。

 お菓子の相場が分からなくてこっそり執事に教えてもらい、教えてもらった相場の金額の倍の値段を記入して募金箱に入れる。

「寄附になるんだと思えば、お菓子も遠慮なく食べられるね」

 小粒のチョコレートを口に入れつつ、ご機嫌でせっせとお菓子を選んでは募金箱に金額指定札を何度も入れていたのだった。



 そして、早くも次の出品物が展示されたのだが、ルークが言っていた通りに今回は男性向けのようで、出品物も長剣や短剣やナイフ、パイプ、杖、それから陣取り盤も多数出品されていて、お菓子を食べるのを中断したレイは、慌てて展示品を見に行った。

 ここでも張り切って幾つかの陣取り盤にかなりの金額を書いて入札したのだが、全く勝負にならなかったようで、ここではレイは一つも落札する事が出来ずにいたのだった。

 落札結果を確認してため息を吐いたレイは、肩を落としてお菓子の一角へ戻りさっきの続きのお菓子を食べ始めたのだった。

「相変わらずお菓子には目がないんだね。だけどそろそろ、演奏部門の入札の集計結果が出るからね。演奏の準備と、金額指定札にあらかじめ寄付金の記入をしておくといいよ」

 追加で出たお菓子に夢中になっていると、タドラの声と女性の笑う声が聞こえて、慌てて口の中のものを飲み込んでから振り返った。

 そこにいたのは、笑顔でこちらを見ているヴィゴとイデア夫人、そしてクローディアとタドラの四人だった。

 イデア夫人やクローディアとはまだ挨拶をしていなかったので、レイは笑顔で順番に挨拶を交わした。

 未成年である妹のアミーは、まだこういった公式の場には出てこられない。自分一人だけが留守番になってしまい、猫を抱きしめて拗ねていたのだという話を聞いて、その光景が容易に想像出来てしまい思わず笑ってしまったレイだった。



 その時、場内に大きなざわめきが起こった。

 正面の掲示板に、落札された人の名前と楽器、そして演奏場所である舞台の番号が書かれた紙が、順番に執事達の手によって貼られているのが見えた。

「どれ、では落札結果を見に行くとしよう」

 笑ったヴィゴの言葉にレイとタドラも頷き、一緒に掲示板を見にいったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ