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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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マイリーとバルテン男爵

「お邪魔しま〜す。うわあ、なんだかいっぱい置いてあるね」

 部屋に入るなり目に飛び込んできた机の上のさまざまな部品の山に、レイが驚きの声を上げる。

「ああ、来たか。まあ、適当に座っていてくれ」

 振り返ったギードの言葉に頷きつつ、レイの目は、机の上に積み上がった見た事のない道具や部品の数々に釘付けになっている。

 マイリーとバルテン男爵は顔を付き合わせて何やら真剣に話をしていて、レイ達の声は聞こえているだろうに二人とも顔も上げない。

「本当にすごいね。これって、もしかして全部マイリーの補助具の為の部品なの?」

 そんな彼らに特に何か言うでもなく、机の上に興味津々なレイの質問に、笑ったギードが右側の山を指差す。

「ああ、そうだよ。こっちは今回バルテン男爵が持ってきた新しい試作の金具や補助具の部品なんかだな。こっちの左の山は今までの試作品で、作った本人曰く不良品の山だ。まあ、捨てるのも勿体無いからと言うて残してあった分らしい。せっかくマイリー様と直接お会い出来るのだから、色々と意見を聞きたいらしくて、お見せしていないものも含めてありったけ全部持ってきたんだと。それで、これを出した途端に、先程からもう大激論状態で大変なんじゃよ」

 そう言って肩をすくめて笑ったギードの手には、分厚い紙の束がある。

 これは主にドワーフ達が設計図などを書く際に使う、表面がとても平らで書きやすいかなり上質の紙だ。そしてそこには見慣れない設計図のようなものや、不思議な図がいくつも描かれていて、明らかにマイリーの文字と思しきものが至る所に書き込まれていた。

「へえ、すごいね。僕には、見ても何がなんだか全然分からないよ」

「そうですね。これは私にもさっぱりですねえ」

 笑ってタキスと顔を見合わせたレイの言葉に、ようやくバルテン男爵とマイリーが顔を上げて振り返った。

「ああ、すまんすまん。時間も限られているからついつい夢中になってしまうな。なんだ、お前らも来たのか」

 レイの後ろにルークとカウリが苦笑いしながら手を振っているのに遅ればせながら気付いたマイリーが、照れくさそうに笑いながら机の上を指差した。

「まあ、こんな感じで楽しくやってるよ。俺は今夜はこっちに泊まらせてもらうから、先に休んでくれていいからな」

「はいはい。ってか、夕食どころか日が暮れもしないうちから徹夜するつもりになってるし」

 呆れたようなルークの突っ込みをマイリーは鼻で笑い飛ばして、知らん顔でまたバルテン男爵とまた別の設計図を見ながら顔を寄せて話を始めた。



「それにしてもすごいね。これって誰が描いたの? ギード?」

 ギードが手にしている設計図らしきものを覗き込んだレイの言葉に、同じくそれを見ていたギードが笑顔で顔を上げる。

「いやいや、これはマイリー様が持ってきてくださったものですよ。いやあ、素人の落書きだと言うてこれを出されたら、本職の立つ瀬がござらぬよ」

 その言葉にレイとタキスだけでなくルークとカウリまでが驚きに目を見開く。

「ええ、待ってくださいギード。じゃあそれって、もしかしてマイリーが描いたんですか?」

 恐る恐るといった様子で尋ねるルークの言葉に、苦笑いしたギードが何度も頷く。

「マイリー、相変わらずだなあ」

「出た。マイリーお得意の才能の無駄遣い」

「別にこれは無駄ってわけじゃあないだろうが。自分の役に立つんだから、いくらでも勉強するよ」

 顔を上げて振り返ったマイリーが、何故か胸を張ってそう言って笑う。

「いやいや、普通は意見を言うだけで、あとは専門家に任せるもんですって」

「それなのに、自分でここまで描くって……なあ」

 呆れたようなカウリも、そう言って呆れ顔だ。

「別にいいじゃあないか。こっちの方が俺の意見が正確に伝わりやすいんだからさ」

 平然とそう言ったマイリーは、呆れた顔で自分を見るルーク達を横目で見てそれから机の上を見た。

「って事なので、俺はここにいるから今日はもう好きにしてくれていいぞ」

「……なんだってさ」

 また、楽しそうに顔を突き合わせて話を始めたバルテン男爵とマイリーを見て、ルークとカウリは揃ってため息を一つ吐いた。

「まあ、マイリーはこれが目的でここへ来たんだからなあ。好きにさせておくか」

「だなあ。これ以上邪魔をしたら怒られそうだ」

 顔を見合わせて揃ってため息を吐いたルークとカウリは、後ろで半ば呆然と彼らのやり取りを見ていたレイとタキスを振り返った。

「まあ、ここにいても俺達じゃあ役に立たないみたいだし、一旦撤収だな。さて、夕食まで何をして遊ぶかねえ」

「そうだなあ。何をしようか」

 笑ったルークとカウリの言葉に、ギードが小さく吹き出して手にしていた紙束を置いた。

「それでしたら、訓練場を開けますので少し運動でもなさいますか?」

「ああ、それはいいですねえ。お願いしても構いませんか?」

 嬉しそうなルークの言葉に、何か言いかけたレイが慌てて口を閉じる。

「ん? どうした? 今なにか言いかけたよな?」

 不思議そうなルークの言葉に、照れたように笑ったレイがギードを振り返る。

「えっと、ギードはお話には参加していないみたいだったから、よかったらここの仕事場を見てみたいなって思っただけです。でも、訓練場を開けてもらえるのなら僕も参加したいです」

 その言葉を聞いたギードが目を見開く。

「確かに、レイはこっちの家へはあまり来てはおらなんだなあ。構わぬよ。今は炉に火は入っておらぬが、好きなだけ見て行くといい。ワシが作った道具も色々とあるでな」

 そう言って得意そうに立ち上がったギードの言葉に、レイが目を輝かせてうんうんと頷く。

「あの、お邪魔でなかったら俺達もご一緒させていただいてもかまいませんか?」

「単なる好奇心なんですけど、せっかくですから見学させてください」

 ギードの言葉に、ルークとカウリも興味深々だ。

「もちろんです。では一通りご案内した後に、訓練場ですかな」

「ああ、それもいいですね。よければ再戦してくださいよギード。今度は俺が勝ちますよ」

 拳を握って笑ったルークの言葉にギードが破顔する。

「おお、もちろんです。では後ほど再戦すると致しましょうぞ。ああ、恐ろしや恐ろしや」

 そう言ってわざとらしく震えるギードの言葉にルークが吹き出し、遅れてタキスとカウリも吹き出しその場は笑いに包まれたのだった。

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