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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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ギードの家と廊下の飾り

「さて、お茶をご馳走様。それじゃあ、ギードの家へ様子を見に行ってみるか。多分、今頃壊れた金具を前にして、三人揃って大激論になっていると思うから、様子を見てお邪魔そうなら俺達は即時撤退だな」

立ち上がったカウリの言葉に、ルークも吹き出しつつ大きく頷いている。

「下手すりゃあ、俺達が入ってきた事にも気付かないかもな。そりゃあ、いつも試作品が届く度に一晩中シルフを通じて打合せという名の討論会を嬉々としてやっている面々だから、顔を合わせて現物を前に話が出来るとなったら、放っておけば一晩中でも大喜びで話をしていそうだぞ」

「だよなあ。まあ三人とも楽しそうだから、別に良いんだけどさ」

「だけど明日の夜は寝てもらわないと、帰りの竜の背中で居眠りして落っこちても俺は知らないぞ」

「あはは、そりゃあ大変だなあ。俺も知らないぞ」

完全に面白がって笑っているカウリとルークの言葉に、立ち上がりかけていたレイの動きが止まる。

「え? 試作品を作っているのは、バルテン男爵なんだよね? 三人で話をって事は……ギードも一緒に? 今のギードは、お話をする場所を貸しているだけじゃあないの?」

不思議そうなレイの言葉に、ルークとカウリが揃って振り返る。

「え? なんだよ。お前、知らないのか?」

「マイリーの金具の試作変更には、ギードも最初の頃から今まで、ずっと関わってくれているんだぞ」

「複雑な構造の金具のちょっとした変更や、マイリーの無茶振りな変更なんかも、ギードに任せたらいつも希望通りに完璧に調整してくれるんだって、マイリーが何度も絶賛していたぞ」

二人の説明にレイは驚きに目を見開き、タキスはレイが知らなかった事に驚いている。

「おやおや、ギードは相変わらず自分の事となると急にだんまりになるんですねえ。良い事なんだからもっと誇ればいいのに」

「マイリーも、まさかお前が知らないとは思っていなかったみたいだな。後で言っておくよ」

苦笑いするルークの言葉に、レイも苦笑いしつつ頷いていたのだった。



外はまだ明るいし庭に雪はほとんど残っていないので、夕食作りをニコスとアンフィーに任せたレイ達は、渡り廊下ではなく、一旦外に出て庭を横切り玄関扉を開けてギードの家に入った。


『こっちこっち』

『こっちですよ〜〜』


笑顔のシルフ達が集まってきて、手招きしながら揃って廊下の奥の部屋を指差して教えてくれる。

「ありがとうね。じゃあこっちへ行けばいいんだね。うわあ! ねえタキス見てよ! 廊下にミスリルの原石が置いてあるよ。その横にある透明の石もすごく綺麗だけど、これは何の原石だろうね?」

笑ってシルフの後をついて歩きながら、レイが廊下の壁面を見て感心したような声を上げた。

彼が指差す広い廊下の壁面には、以前は無かった木製の立派な箱型の台が並んで置かれていて、レイには何の石なのかは分からないが、透明な原石が幾つもくっついた大きな岩が、これも大きなミスリルの原石と並んで無造作に置かれていたのだ。

初めて見るそれを、レイは目を輝かせて見つめている。

「ああ、それは少し前にドワーフギルドの方々が作ってくれた飾り台だそうですよ。今そこに飾っているのは、ギードの鉱山から採取されたミスリルの原石とダイヤモンドの原石なんだとか。どれもかなり良いものらしく、春になったらドワーフギルドにこのまま卸すんだってギードは言っていましたね」

レイの隣で一緒に棚を見ながらタキスが教えてくれる。

一見不用心に見えるが、それぞれの原石の横には当然のようにノームが座っているので精霊達による守りも万全なのだろう。

「へえ、すごい。そういえばギードのお家って、僕、廊下と居間と訓練場くらいしか入った事がないね」

笑ったレイの呟きに、タキスも苦笑いしながら頷く。

「確かに言われてみればそうですね。レイは、居間以外だと、降誕祭の前にトケラを外へ出すのに廊下を通って玄関まで行ったのと、訓練場とその隣の休憩室くらいですかね? ですが私も、普段はギードの家へはほとんど行きませんから、居間と訓練場以外の場所は久し振りですよ」

「そうなんだね。出来れば一度、ギードの仕事場を見せてもらいたいなあ。どんな風なんだろう?」

キョロキョロと周りを見回す楽しそうなレイの言葉に、タキスは小さく笑って廊下の先を指差した。

「多分、今から行く部屋が作業場とつながっている部屋だと思いますよ。せっかくの機会ですから好きなだけ見せてもらうといい。見たことが無いようないろんな道具がぎっしり置いてあって面白いですよ」

「へえ、そうなんだね。楽しみだなあ」

嬉しそうなレイの言葉にタキスも笑顔で頷いて、二人はシルフ達の案内で廊下の奥にある部屋に入っていった。



「ううん、いくら辺境の地でそうそう来客が無いからって言っても……廊下にこれを剥き出しで置いておくのは、いくらなんでも不用心に過ぎないか?」

「確かに。だけどまあ、ノーム達がしっかり守っているみたいだし、春にはドワーフギルドに納品するのなら、撤去するんだろう? それならいいんじゃあないか?」

先に歩いて行くレイとタキスを見ながら、カウリとルークが揃って呆れたように肩をすくめる。

「まあ、別に俺達が何か言うような事じゃあないけど……多分、あのダイヤモンドの原石だけでも、とんでもない値段になると思うぞ」

顔を見合わせ同時にため息を吐いた二人は、黙ったまま揃って首を振るとレイ達の入っていった開けたままだった扉から中を覗き込んだのだった。

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