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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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挨拶と荷物運び

「ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりましたよ」

 大きく翼を広げてゆっくりと草原の端へと降りてくる竜達の姿を見上げながら、代表して進み出たタキスが大きな声でそう言いながら笑顔で手を振る。

「ああ、タキス殿。大人数で厚かましくも押しかけてまいりました。三日間、どうぞよろしくお願いします」

 鞍上からルークがそう言って笑顔で手を振り返す。

 マイリーとカウリもそれぞれの竜から降りて来て、まずはタキスと挨拶を交わす。

 タキスは笑って普通に挨拶をしているが、竜騎士達にとってはエイベルの父親であるタキスはやはり特別な存在だ。特にタキスと会うのが初めてのカウリは、実は昨夜からもうずっと緊張しっぱなしだったのだ。

 しかし実際に会ってみれば、拍子抜けするくらいに普通の人だ。

 だが、その彼が過去の人間の手によりどれ程の辛く悲しい思いをしてきたのかを聞かされているカウリは、特にこちらに対して偉そうにする様子も嫌がる素振りすら見せず、言葉遣いもとても丁寧なタキスに人としての度量の大きさと優しさを感じ、笑顔で挨拶を交わし差し出された右手を握り返しながら、密かに感動しているカウリだった。



 それから、同じく初対面のニコスやギードともレイに紹介してもらって、カウリは笑顔で挨拶を交わした。

 アンフィーとは竜の保養所にいた時に会っているので、お互いに笑顔で挨拶を交わしていた。

 一通りの挨拶が済めば、ギードとニコスはアンフィーと一緒に少し下がって控えて、ブルーのシルフをはじめとするそれぞれの竜の使いのシルフにレイも加わって、笑顔で話をするタキスと竜騎士達を見つめていた。

「ほれ、何をしておる。お前さんがどうしてワシの背後におるのだ」

 一緒に草原へ上がって子竜達と一緒に遊んでいる間は平然としていたのに、竜達が到着して草原へ竜騎士達が降りて来た途端に、少し下がって後ろに控えてしまったバルテン男爵を、呆れた様にギードがそう言って腕を引く。

「いや、しかしお話の最中のようだし……」

 何やら言い訳するバルテン男爵を見て、もう一度ギードが呆れた様なため息を吐いてそのまま力一杯前に押し出した。

「バルテン男爵。もうこちらへお越しでしたか」

「おお、マイリー様。ご無沙汰致しております。して、膝の金具の具合はその後いかがですか?」

 マイリーが、ギードに背中を押されて前に出たバルテン男爵に気付いて笑顔で話しかける。

 レイがここへ来る直前、朝練の真っ最中にバルテン男爵が作った新しい関節部分の試作品を試着していたマイリーが、朝練で突然不具合を起こした金具のせいで、レイと手合わせをしていたマイリーが転んでしまい大騒ぎになったのだ。

 バルテン男爵が急遽ここまで来てくれたのは、マイリーと直接会ってその改良部品の問題点を相談をする為なのだ。

 挨拶もそこそこに、心配そうにマイリーの左足の補助具を見るバルテン男爵に、マイリーも苦笑いしている。

「ああ、その節はご心配をおかけしました。今使っているこれは、今のところ特に問題は無いようですよ。一応、壊れた部品は全て持ってきましたから、どうぞしっかり手に取って確認してください」

 そう言って自分の竜を見上げる。

「レイルズ。すまないが荷物を下ろすのを手伝ってくれるか。色々預かってきているものもあるから」

「はあい、えっと、それじゃあ荷物を運ぶ台車がいるね」

「ああ、すぐに持って参ります!」

 レイの言葉に、即座にアンフィーが反応して下へ降りる螺旋階段の扉を開けて駆け降りて行った。

「待て待て。一人では運べんぞ」

 それを見て、慌てた様にそういったギードが後を追って同じく螺旋階段を駆け降りて行った。

「じゃあ順番に下ろすね」

 そんな二人を見送った笑顔のレイは、まずは一番手前側にいたカルサイトの背中へ予備動作も無しに、軽く膝を折っただけで一気に竜の背中まで飛び上がっていった。

「おうおう、やるねえ」

 それを見て苦笑いしいたカウリが、鞍を取り付けているベルトを掴んでから同じようにしてシルフ達の手を借りて背中までこちらも軽々と飛び上がる。

「カウリ、大人気ないぞ」

 呆れた様に笑ったルークの呟きに、マイリーとタキスが吹き出したのは同時だった。



 それから、レイも手伝って荷物の入った運搬用の木箱を順番に竜の背から下ろし、手分けして台車に載せて坂道を何度も往復して全部の荷物を運んだのだった。

「そっか、荷物運びをしようと思ったら、螺旋階段じゃあなくてこっちの坂道でないと台車が使えないんだね」

 小さくそう呟き、シルフ達が支えてくれている台車に積まれた木箱の山を見た。

 レイが到着した時には、この坂道にも、それから石の家の前の庭もほとんど雪は残っていなかった。だが、上の林にあれだけの雪が積もっているのだから、坂道や庭にもかなりの雪が降っていたのだと思われる。

 しかしどこも綺麗に雪かきがされていて、少しくらい雪が降っても石の家の扉が開かないような事態にはなっていない。

 自分がここへ来る前に皆がしてくれたさまざまな気遣いに今更ながらに気が付いて、ちょっと出た嬉し涙を密かに拭ったレイだった。

 台車に積まれた木箱の上に座ったブルーのシルフの何か言いたげな優しい視線に気がついたレイは、にっこり笑って何も言わずに頷き、慎重に台車を押しながら坂道を下っていったのだった。

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