愛しき寝顔
「しぇいれいおうにぃ、かんちゃとちゅくふくお〜〜〜〜! それから、しゅてきなかじょくにかんぱ〜〜〜〜〜い!」
完全に呂律の回っていないレイの乾杯の言葉に、不意を突かれた四人が揃って吹き出す。
「えへへ〜〜」
高々と掲げていた腕を下ろしたレイは、手にしていたグラスを傾けて飲みながらご機嫌で笑っている。
「おいおい、大丈夫か?」
いきなり酔いが回ったらしいレイの様子を見て、ニコスが慌てたように立ち上がりかける。
「ああ、私が診ます」
タキスの言葉に座り直したニコスは、それでも心配そうにレイを見ている。グラスを置いたギードとアンフィーも、揃って心配そうにレイとタキスを見つめていた。
「レイ、ほらこっちを向いて私を見てください」
レイの頬に手を当てて自分の方に向き直らせる。
「ん? 何?」
無邪気な答えに苦笑いしつつ、脈を取るために手首を握りながらレイのとろんとした瞳を覗き込む。
「えへへ、だって嬉しいんだもん」
飲み干して空になったグラスを机の上に置いてぐるぐると回しながら、またニコニコと笑ったレイがそう言って机に突っ伏す。
「だって〜〜こうやって〜〜〜皆と〜〜〜一緒に〜〜〜飲むのが〜〜〜すっごく、すっごく、すっご〜〜〜〜〜〜く楽しみだったの!」
大きな声でそう言い、最後はそう断言していきなりガバッと体を起こす。
「ああ、危ない!」
慌てたタキスがレイの腕を掴み、即座に現れたシルフ達が起き上がった勢いでそのまま仰向けに倒れそうになったレイの体を確保して起こしてくれる。
「ああ、蒼竜様ですね。ありがとうございます」
苦笑いしたタキスが、そのままほぼ寝落ち状態になったレイを正面からそっと抱きしめて座り直させる。
「それにしても大きくなりましたねえ。ここを旅立った頃でも我々で運ぶのが大変だったのに、もうシルフ達の助け無しには、我々ではこの子を絶対に運べませんよ」
意識の無いレイを抱きしめて背中を撫でてやりながら、彼がここを離れるきっかけとなったあの竜熱症の症状でレイが意識を失った時の事を思い出してしまい、なんとも言えない気分になるタキスだった。
「まあ、特に問題は無いようですから心配はいりません。それにしても、いきなり酔いが回ったようですねえ」
顔を上げて笑ってそう言ったタキスは、レイの前髪をかき上げてやり少し汗ばんだ額をそっと手拭き布で拭いてやる。
「それならそこのソファーに転がしておくか。それで、後でシルフ達に手伝ってもらって部屋まで運べば良かろう」
立ち上がったギードの言葉にアンフィーも笑って立ち上がり、ニコスも笑いながらそれに続く。
結局四人がかりですっかり熟睡しているレイをシルフ達の助けも借りつつ移動させて、一旦ソファーに転がしておいた。
居間に置いてあるこのソファーは、たまにギードが昼寝するのに使ったりもしているので、幅も広くなかなかの寝心地で、すっかり大きくなったレイでも転がり落ちる心配は無さそうだ。
万一にも窒息したりしないようにレイの背中にクッションを押し込んでやりながら、無防備な笑顔で熟睡しているレイを見て、四人は顔を見合わせてほぼ同時に揃って吹き出したのだった。
「いやあ、なんとも可愛らしい酔っ払いだのう」
「そうですよね。普通はもっとこう……大声を出して暴れたり、下手をすれば酔ってその場で吐いたりするもんなんですけれどねえ」
「確かに可愛らしい酔っ払いだなあ。俺もこんな酔っ払いかたは初めて見るよ」
ソファーに置かれたクッションに抱きついて熟睡しているレイを見て、呆れたようにギードが笑っている。
その言葉に、アンフィーとニコスも揃って呆れ顔だ。
「酔ってまでこんなに良い子だなんて、何ともレイらしいと言えばそうですが、こんな時くらい少しは羽目を外しても良いのですよ」
言い聞かせるようなタキスの優しい言葉に、ニコス達も揃って頷いていた。
『レイは、いつも酔っぱらうとこんな感じだぞ』
目の前に現れたブルーのシルフの言葉に、タキス達がまた揃って吹き出す。
「おやおや、そうなんですか? これはルーク様からオルダムでのレイの様子を詳しく聞く楽しみが出来ましたねえ」
笑ってレイの額にキスを贈ったタキスの言葉にまた四人揃って吹き出してしまい、部屋は暖かな笑いに包まれたのだった。




