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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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可愛い酔っぱらい

「ほれ、飲め飲め」

 ようやく泣き止んで顔を上げたニコスを見て、笑ったギードが並々とニコスのグラスにこぼれんばかりの貴腐ワインを注ぐ。

「おいおい、そんなに入れてどうする。ワインを入れる時の適量はだなあ……」

 慌てたようにグラスを持ち直したニコスは、呆れたようにそう言ってギードからワインのボトルを取り上げようとした。

「ほれ、レイも飲みなされ」

 しかし、器用にそれをかわしたギードは、笑ってレイのグラスにも同じくらいに並々と注いだ。

「あはは、ギードったら、ワインはこんなに入れちゃあ駄目だよ。でも、美味しいから許す!」

 笑ったレイは、そう言って注がれた貴腐ワインをゆっくりと、だが全部飲み干した。

「はあ、美味しい!」

「おお、良い飲みっぷりじゃな。ほれ、もう一杯」

 嬉しそうに目を細めたギードが、またレイのグラスにワインを並々と注ぐ。

「もう。ほら、貸して! ギードも飲みなさい!」

 ギードからワインのボトルを奪い取ったレイが、嬉々としてギードのグラスにワインをたっぷりと注ぎ、ついでに空いていたアンフィーとタキスのグラスにもたっぷりと注いだ。

「あ、もう無くなっちゃったや」

「いやいや、まだまだありますぞ」

 笑ったギードが立ち上がり、嬉々として戸棚を開いてそう言って胸を張る。

「あはは、本当だね。じゃあ次はこれかな?」

「いや、こっちの方が良いのではないか?」

 レイが新しい貴腐ワインのボトルを手にし、ギードは赤のワインを取り出した。

「俺は白が飲みたいなあ」

 ニコスの言葉に笑ったレイが、少し考えて別の一本を取り出す。

「それならこれがおすすめだよ。これもグラスミアの有名なワイナリーのものなんだ。味わいすっきり!」

 手にしたワインのボトルを見せながら、レイが嬉々として説明を始める。

 当然知っているニコスだったが、嬉しそうにうんうんと頷きながらレイがしてくれる説明を黙って聞いていたのだった。

「では、まずはこれを開けるとしようかのう」

 ギードの言葉にレイは手にしていた白ワインのボトルを机の上に置き、ギードと顔を見合わせてにっこりと笑い合って自分の席に戻った。

 それを見て嬉しそうに頷いたギードは、持っていたナイフで手早くワインの栓を封じていた蝋を掻き落とした。




「へえ、初めて食べますが、この罪作りってのもワインに合いますねえ。成る程、確かにロディナの干し肉に勝るとも劣らないですねえ」

「確かにこれは罪作りだなあ。この物騒な名前の由来は、これがあると酒を盗んででも飲みたくなるってところから来ているらしいからなあ」

「ああ、確かに言いたい事はよく分かりますねえ」

 アンフィーの呟きにギードが嬉々として説明を始め、一緒に聞いていたタキスも笑ってそう言ってうんうんと頷き、空になったグラスを置いた。

 ニコスが用意してくれたチーズに罪作りを乗せた摘みは全員から大好評で、すでに机の上には片手で足りないワインのボトルが空になって並んでいる。

「あはは、これがあると飲みたくなる気持ちはとってもよく分かるけど、盗みはしちゃあ駄目だよね!」

「我らのところには、こうして普段では飲めぬような高価な酒を届けてくださるお方が複数おられるからなあ。いやあ有り難い事よ。ほれ、グラスが空いておるではないか。もっと飲みなされ」

 嬉しそうに笑ったギードが、またレイのグラスに並々と注ぐ。これはニコスの希望で開けた白のワインだ。

「ううん、これはキリッとした味わいだねえ」

 頬を赤くしたレイが、一口飲んだ白のワインを味わいながらそう評した。

「ほほう、これの味が分かるようになったか。いやあ、嬉しいのう。レイと酒が組み交わせる日がこんなに早く来ようとはなあ」

 目を潤ませたギードの呟きに、レイはにっこりと笑ってまた注いでくれるギードを見ていた。

「僕も嬉しい。ずっと、皆とこうやって一緒にお酒を飲みたかったんだ。ほら、もっと飲んで!」

 隣に座る、空になっていたタキスのグラスに並々と注いでから、笑顔で差し出されたギードのグラスとニコスのグラスにも注いで回る。

「ほら、アンフィーも!」

「ああ、ありがとうございます」

 立ち上がってこっちまで来てくれたレイが注いでくれるワインを嬉しそうに見ていたアンフィーだったが、席に戻ったレイを見て目を輝かせる。

「ねえ、レイルズ様。さっきから気になっていたんですが、その胸にある略綬はもしや、紺白の新星ですか?」

 身を乗り出すアンフィーの言葉に、レイは驚いたように目を見開き、それから照れたように笑って頷いた。

「そうだよ。えっと、この休暇の少し前に遠征訓練があってね。もう本当に色々大変だったんだけど、一応成績優秀だったみたいで、これを頂いたの。ほら、これがそうだよ」

 どうぞ持って帰ってご家族に報告なさってください。と、ラスティに出発前に言われてベルトの小物入れに入れてきた紺白の新星の勲章の入ったケースを取り出して蓋を開けて見せる。

「お、おお……これはまさに紺白の新星。成人した一年目にしか手に入れる機会のない、文字通り最優秀の新人に与えられる貴重な勲章である紺白の新星。素晴らしい!」

 アンフィーの言葉に、タキス達も驚きに目を見開いている。

「えへへ……」

 勲章の入ったケースを机の上に置いたレイは、恥ずかしそうに笑ってグラスのワインをゆっくりと飲み干す。それから目の前に置かれていた罪作りの乗ったチーズを口に入れた。

「えへへ」

 ニコニコと真っ赤な顔で笑うレイを見て、全員揃って拍手喝采になった。

「精霊王に感謝と祝福を! レイの活躍に幸あれ!」

「精霊王に感謝と祝福を! レイの活躍に幸あれ!」

「精霊王に感謝と祝福を! レイの活躍に幸あれ!」

「精霊王に感謝と祝福を! レイルズ様の活躍に幸あれ!」

 ギードの大声に次々に声が重なり、タキスが注いでくれた貴腐ワインの入ったグラスを捧げたレイも、満面の笑みで口を開いた。

「しぇいれいおうにぃ、かんちゃとちゅくふくお〜〜〜〜! それから、しゅてきなかじょくにかんぱ〜〜〜〜〜い!」

 完全に呂律の回っていないレイの叫びに四人が揃って吹き出し、全員揃っての大爆笑になったのだった。

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