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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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お腹空いた!

「おかえりなさい。待っていましたよ」

 一つため息を吐いてから改めてレイを見上げたタキスが、そう言ってレイの大きな体に抱きつく。

「ただいま。僕も会いたかった」

 笑ったレイも両手を広げて、今では自分よりもはるかに小さくなってしまったタキスの体を抱きしめた。

「おかえり」

「おかえり」

 感極まったようにニコスとギードもそれだけを言って左右から二人ごと両手を広げて抱き締める。

 アンフィーは、少し離れたところから目を潤ませてそんな四人を黙ったまま見つめていた。それから一つ深呼吸をすると、同じく彼らを見つめているブルーを見上げた。

「あの、ラピス様、何かお世話は必要でしょうか?」

 まさか彼にそんな事を聞かれるとは思っていなかったブルーが、驚いたように顔を上げてアンフィーを見下ろす。

「いや、我に世話は必要ない。それより、あっちを何とかしてやってくれ。あのまま放っておいたら、日が暮れるまで、ずっとああしていそうだぞ」

 まだ抱き合ったまま小さな声で何か話している四人を、ブルーは苦笑いしながら顎で示した。

「確かにそうですね。では、感動の再会はここまでにしてもらいましょうか」

 笑って頷いたアンフィーは、四人のところへ駆け寄りとりあえず一番大きなレイの背中を叩いた。

「ほら、いつまでそうしているつもりですか。ラピス様の鞍を外してお荷物を下ろさないと」

「確かにそうだね。ほら、離して」

 レイが笑ってそう言うと、抱きしめていたタキスの体を離す。

「確かにそうだな。蒼竜様に積んでいる荷物を下ろして鞍を外して差し上げねば」

「ああ、確かにその通りだな」

 苦笑いしたギードとニコスが手を離し、ギードがブルーを振り返る。

「レイ、あれはどうやって外すのだ? 教えてくれれば手伝うぞ」

 いくつもの木箱が取り付けられたブルーの姿を見て、小さく笑ったギードがそう言ってレイを見上げる。

「うん、じゃあ僕が上で外すから、下で荷物を受け取ってくれるかな。ああ、荷物を運ぶ台車がいるね」

「では、取ってきます」

 手を上げたアンフィーが坂道を走って降りていくのを見送り、レイは一つ深呼吸をしてベルトを掴むとブルーの背中に飛び上がった。

 一息に軽々とブルーの背中まで飛び上がったレイを見て、タキス達は揃って驚きのあまり目を見開いた。

「えへへ、どう? 格好良かったでしょう?」

 ブルーの背中からこっちを見下ろしながら得意げに笑うレイの言葉に、三人は揃って吹き出したのだった。



「じゃあ、荷物を下ろすから順番に受け取ってね。えっとゆっくり下ろしてね」

 ブルーの背中から大きな木箱を取り外したレイは、まずは下で待っているタキスとニコスにそう声をかけてから、シルフ達にお願いして順番に荷物を地面に下ろしてもらった。

 アンフィーが持って来てくれた二台の台車に分けて積み、タキスとアンフィーが順番に家までの坂道を台車で下りて行く。

 ブルーの背中に上がったギードは、レイにやり方を教えてもらいながらブルーの体に取り付けられていた荷物を順番に外して下ろしていった。

「ほう、成る程成る程。このような仕組みになっておるのか。しかもどこのベルトも、万一問題があればそこだけで簡単に取り替えが出来るように考えられておる。さすがだのう」

 最後の荷物を下ろした後、ギードは取り外した何本ものベルトを整理しながら感心しきりだった。

「へえ、やっぱりギードには分かるんだね」

 鞍から取り外したベルトを巻き取りながら、レイが嬉しそうにそう言って笑う。

「僕なんて、初めの頃は説明されてもベルトの仕組みがよく分からなかったよ」

「まあ、そうでしょうな。ですが、元はラプトルに乗せている鞍と基本的な仕組みは変わりませぬぞ」

 笑ったギードもそう言いながら器用にベルトを巻き取って束にしていく。

「ああ、確かに言われてみればそうかも。へえ、面白い」

 少し考えて空中に指でいくつもの輪を描いていたレイがそう言い、手にしたベルトの束を専用の袋の中へ突っ込んだ。

「さて、これで終わりだね。お腹空いた!」

 その言葉に、同じくベルトを袋に入れていたギードが驚いてレイを見上げる。

「何だ、お前さん。もしやまだ昼飯を食っておらぬのか?」

「うん。だって、味気のない携帯食なんかよりも、ニコスの作ったお料理が食べたかったんだもん!」

 笑って何故か胸を張るレイの言葉に、ギードが遠慮なく吹き出した。

「わはは、そりゃあ確かに比べるまでもないな。では、我らも降りてまずは食事にいたそう」

「うん、早くニコスの作ったお料理が食べたい!」

 笑ったレイは、ブルーの背中から軽々と地面まで飛び降りた。

「おいおい、いくらシルフの助けがあると言うても、ワシはこの距離を飛ぶのはゴメンだぞ」

 呆れたように笑ったギードは、そろりそろりとブルーの背骨伝いに下まで降りていった。ブルーは、ちゃんとギードが地面に降りるまで大人しく身動きもせずにじっと座って待っていてくれたのだった。



「えっと、ブルーはどうするの? 泉へ帰るのかな?」

 見上げたレイの言葉に、ブルーは自分のねぐらである泉のある方角を見た。

「ああ、いくつか森でやっておきたい事もある故、我は一旦泉へ戻らせてもらう。シルフはつけておくので、何かあればいつでも呼びなさい」

「そうなんだね。分かった。ご苦労様。でもブルーもゆっくり休んでね」

 ここへ来る時に聞いた話を思い出したレイは笑ってそう言い、差し出された大きな頭に遠慮なく抱きついて額に何度もキスを贈った。

 甘えるように喉を鳴らしたブルーは、レイが手を離すまで待ってから顔を上げ、ゆっくりと森へ飛び去って行った。

「改めて見ると、蒼竜様は大きいですなあ」

 感心したようなギードの呟きに、飛び去るブルーを見送っていたレイも何度も頷く。

「じゃあ、下りようよ。僕もうお腹ぺこぺこで倒れそうです!」

「それはいかんなあ。今レイにぶっ倒れられたら、我ら四人がかりでも運べぬので、もうこのままここで休んでくだされ」

「酷いギード!」

 吹き出したレイが笑ってギードに飛びつき、直前で転がって逃げたギードが勢いよく起き上がってそのまま走り出す。その際に、振り返って顔の横で両手を広げてパタパタさせながら舌を出して見せる。

「待て待て待て〜〜〜〜!」

 笑ったレイが両手を広げて追いかけ、二人は声を上げて笑いながら坂道を転がるようにして駆け降りて行ったのだった。

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