お土産の準備
いつもお読みいただき、ありがとうございます(^ω^)
本日の更新を年内最後の更新として、年末年始はお休みをいただきます。
次回の更新は、年明けの三日深夜(四日早朝)より更新を再開させていただきます。
どうぞ皆様、良いお年をお迎えくださいm(_ _)m
「それじゃあお願いしますね」
精霊魔法訓練所の友人達への贈り物もいくつか選んでから、揃って見送ってくれる商人達に笑顔で手を振り、レイ達は揃って休憩室へ戻った。
「えっと、明日から僕はお休みなんですよね。蒼の森へ帰るのってどうしたら良いですか?」
執事が淹れてくれたカナエ草のお茶を一口飲んでから、隣に座ったルークを振り返る。
「どうって、好きにしていいぞ。確かシャムが明日の朝一番に俺が急いで頼んだ品物と一緒に、お前に頼まれていた天体望遠鏡と天体盤を届けてくれるって言っていたけど、それってもしかして蒼の森のご家族へのお土産か?」
同じくカナエ草のお茶を飲んでいたルークが、そう言ってレイを見る。
「はい、そうです。じゃあ、それが届いたら出掛ける事にします。えっと休暇に関する書類は全部サインをしてラスティに渡してあるので大丈夫だと思うけど、帰る前に他にしておく事ってありますか?」
机に置かれたお皿に綺麗に並べられたビスケットを一枚手に取ったレイは、そう尋ねて首を傾げる。
「まあ、もう今日はこの後の予定は特に入れていないから、個人的に持って行きたい物とかがあれば用意するくらいかな。着替えはラスティが用意をしてくれている筈だからさ」
「そうなんですね。じゃあ何かないか考えておきます」
二枚目のビスケットを食べ始めたレイを横目に見て、小さく笑ったルークはカナエ草のお茶をゆっくりと口に含んだ。
その時、急にレイが慌てたように顔を上げた。
「ん? どうかしたか?」
「ああ、大変だ! アンフィーの分が無い!」
焦ったようにそう呟くレイを見て、納得したようにルークが頷く。
「もしかして、土産の話か?」
「えっと、以前ルークと一緒に巡行で行った時にセンテアノスの駐屯地の司令官殿から天体盤のペンダントを頂いたんです。ちょうど数があったからタキス達にもと思って取ってあるんだけど……」
「ああ、その後アンフィーが増えたわけか」
「うう、どうしよう。一人だけ足りないって申し訳ないよね」
困ったようなその呟きに、ルークは小さく笑ってレイの左腕をそっと突っついた。
「それなら、これを作って手首に付けてやればいいんじゃあないか? それともこれも一晩じゃあ作れないかな?」
左の手首に巻かれたまじない紐を見たレイは、目を輝かせて頷いた。
「そっか、これなら幾つか作ってあるのがあるから大丈夫だね。ありがとうルーク。じゃあこれにします!」
嬉しそうに頷くレイを見て、ルークも苦笑いしつつ頷いて残りのカナエ草のお茶を飲み干した。
その後、ルークやティミーに陣取り盤の相手をしてもらって時間を過ごしたレイは、夜会に出る為に早めに夕食に行くルーク達と一緒に夕食に行って早々に部屋に戻った。
「えっと、じゃあどれをアンフィーに持って行ってあげようかな」
机の上に、以前センテアノスの司令官殿からお土産にと頂いた天体盤の形をしたペンダントを取り出す。それから、練習を兼ねて幾つも作ってあった、まじない紐を入れた小箱も取り出す。
「どれがいいかな?」
順番に取り出して眺めながら、以前タキス達にあげたのとは違う明るい色のものを選んだ。
「あ、もしもタキス達の分が切れるといけないから、予備にこれも持って行っておこうっと」
作り置きは全部で八本あったので、少し考えてあと四本一緒に持って行って預けておく事にした。
もしも誰かのまじない紐が切れても、これを渡しておけばすぐにタキスやニコスが新しいものを結んでくれるだろう。
机の上にそれらを並べたレイは、満足そうに頷き残りを引き出しに戻した。
『いよいよだな』
その時、レイの右肩にブルーのシルフが現れて座った。
「うん、早く皆に会いたい。えっと、蒼の森は雪はまだ降ってないよね?」
ふと思いついたレイの質問に、ブルーのシルフは笑っている。
「今年は、まだ大して積もってはおらぬが、もう蒼の森に何度も雪は降っておるぞ。畑仕事はすっかり終わっていて、家畜や騎竜達も石の家の廊下を開けていつもの家畜用の部屋に入っているよ」
「そっか、こっちはかなり冷え込んでいるけど、雪はまだ降っていないもんね。でももう蒼の森では雪が積もっているんだ」
感心したようなレイの呟きに、ブルーのシルフは面白そうに笑った。
『今年の冬将軍は、来るのが早かったようだが雪はまだそれほど降っておらんなあ。夜に粉雪が散らつけばそこそこは積もるが、扉が開かぬような事態はまだ起きてはおらんようだな』
「そっか、僕が戻る間は、出来ればあんまり降らないで欲しいなあ、母さんのお墓やエイベルのお墓にも行かなくちゃあ駄目なのにさ」
『ああ、天候ならば大丈夫だよ。降っても少々粉雪が散らつく程度だな。帰る時にはしっかり着込んで暖かくして行きなさい。その新しい竜騎士の制服も、お母上に見せて差し上げねばな』
優しいブルーの言葉に胸がいっぱいになったレイは、少し出た涙をぐっと飲み込んで何度も頷いたのだった。




