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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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贈り物選びの終了

「じゃあ、マシューとフィリスにはこのベルトと鞘付きの短剣、それからこの弓矢と折りたたみ式のナイフがパスカルの分。それから、この魔除けのルビー付きの短剣はエルの分でお願いしますね」

 レイが笑顔で示したそれらの品々を、クッキーが控えを取ってから、担当者が手早くトレーに並べて別の場所へ持って行った。

 マシューとフィリスの為に選んだ短剣には鞘の部分にカラクリが仕込まれていて、飾りの花を押しながら動かすと、鞘の横の部分に隠された小さなナイフが抜ける仕様になっているのだ。

 クッキーからその説明を聞いたレイは、大喜びで目を輝かせて何度も何度もナイフを出し入れをしていて、何をしているのかと見に来たルーク達に笑われてしまうほどだった。

「だけどこれなら、きっとマシューやフィリスも大喜びしてくれると思うな」

 結局、自分用にも一振り頼んだレイは、嬉しそうにそう言ってまたルーク達に揶揄われていた。

 実際には、こういったカラクリ細工の短剣は、ほぼ蒐集家のための品だ。ただし、子供達への贈り物としても人気が高い。

 特に今回選んだものは、短剣の刃もナイフの刃もそれほど鋭利な物では無く実用性はほぼ皆無だ。おそらく手紙の封を開けるか紙を切るくらいにしか役には立たないだろう。

 クッキーからその説明を聞いて贈るのを躊躇したレイだったが、ルーク達から、逆にあれくらいの年齢の子達に贈るのなら、これらは有効だと教えられてこれに決めたのだった。

 短剣のカラクリで遊んでいるレイを見て笑っていたニコスのシルフ達も、ルークと同じ事を言っていた。

 この、カラクリの鞘付きの短剣は子供達に大人気なのだと。



「えっと、品物選びはこれくらいかな。あとはシャムのところの本だね。天文学の本はどれにしようかなあ」

 クッキーに手を振ってその場を離れると、来てくれたシャムから本の一覧表を受け取り空いた椅子に座る。

「俺も一緒に見てもいいか。友人の子供達にもいくつか本を贈りたいからさ」

「あ、俺も俺も」

 隣にルークが、反対側にロベリオが座る。

「もちろん。じゃあ、一緒に見ようね」

「おう、出来れば天文学の初心者の子供でも分かりやすい本を教えてくれ」

「俺も聞きたい」

 左右からそう言われて、レイは苦笑いしながらシャムを見た。

「それは僕じゃあなくてシャムに聞いたほうが早いと思います! ちなみに、僕も聞きたい!」

 レイの言葉に三人同時に吹き出して揃って後ろに控えていたシャムを振り返った。

「って事だから、教えてくれよ。シャム」

 笑ったルークの言葉に、笑顔で頷いたシャムがもう一つの一覧表を手に嬉々として詳しい説明を始めた。

 シャムから渡された本の一覧表には、天文学関係の本、星系信仰に関する本が、内容の簡単な説明とともにわかりやすく書かれている。

 もちろんそれだけではなく、図鑑や辞書、物語や随筆をはじめ様々な種類の本が分類されて一覧になっている。

「あ、これって……」

 無言で一覧を見ていたレイが、ある項目で止まる。

「ああ、以前ティミーが竜騎士隊の本部へ引っ越して来た時に、贈り物を選んだだろう。あの時の候補の一つにしていたのがその辺りの政治経済学関係の本だよ。マイリーによると、この辺りは、どれもティミーなら将来に渡って使えるであろう有用な本だって言っていたし、お前、次の贈り物候補にするって言っていただろう。だから一通り全部持ってきてもらったんだ。まあ、この辺りの本は俺達からも贈るつもりだから、何ならお前も連名で参加すればいい」

「是非参加させてください! あ、でも僕から天文学の初心者向けの本を贈ろうと思っていたんだけど、それも一緒にすべき?」

「いや、それはお前の名前で贈ってやればいいよ。連名で贈るのは、政治経済学関係の大きい本ばかりだよ」

 笑ったルークの言葉にレイは笑顔で頷き、まずは自分が贈る本を選び始めた。



「えっと、ティミーにはこの天体の版画や挿絵が綺麗な星の図鑑と、天文学の初心者向けの入門書。それからこの挿絵が綺麗な精霊達の図鑑だね。それでジャスミンには、この太陽と日食に関する図鑑。それからこっちの精霊達の図鑑。これも挿絵がすごく綺麗。ライナーとハーネインにも、星の図鑑と星座の物語の本を、それから天文学の初心者向けの観測の解説の本。ディーディーとニーカには、精霊王の物語と妖精達の図鑑をそれぞれに。それから、こっちの天文学の初心者入門書と星の図鑑と四季の星座を描いた図鑑はタキス達へのお土産用。よし、これでいいかな」

 ライナーとハーネインの分は、ゲルハルト侯爵邸へ届けてもらい、それ以外は竜騎士隊の本部へ届けてもらうように頼んだ。

 今日注文した品々は、基本的に直接会って渡す分以外は、各商会を通じて降誕祭の前にそれぞれのお屋敷へ届けてもらう手筈になっている。

「あ! ねえカミュ。さっき選んだ帯飾りは降誕祭の贈り物じゃあないので、すぐに届けてください」

 贈り物を忘れていないか指を折って数えていたレイは、不意に思い出して慌ててドルフィン商会のカミュのところへ行く。

「はい、お伺いしておりますので、こちらはすぐに専用の箱に入れたものを女神の神殿の分所へお届けいたします」

 にっこり笑ってそう言われて、驚いてラスティを振り返る。こちらも笑顔で頷かれて、レイは満面の笑みでお礼を言ったのだった。

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