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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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星の宝石と贈り物選び

「では、ご注文のマーク軍曹とキム軍曹への贈り物は、お包みした物をすぐにご用意致します。巫女様方への贈り物はいかがなさいますか? こちらでお届けする事も出来ますが」

 注文した品物を確認していたクッキーがレイを振り返ってそう尋ねる。

「えっと、マークとキムは会って渡せると思うけど、ディーディーとニーカの分はどうしようかな?」

 少し考えてルークの袖を引っ張る。

「おう、なんだ? こらこら、引っ張るんじゃないよ」

 ドルフィン商会のところで宝石の付いた装飾品の入った箱を眺めていたルークが、驚いたようにそう言って顔を上げる。

「ねえ、ディーディーとニーカへの贈り物ってどうすればいいですか? 神殿へ直接持って行ったら迷惑になるよね?」

「ああ、それならまた降誕祭の後半辺りに本部の休憩室で簡単なお茶会をする予定だから、その時にマーク軍曹やキム軍曹と一緒に彼女達も呼んであげればいい」

「そうなんだね。分かりました。ねえクッキー、彼女達の分も包んでおいてください。会って渡せるみたい」

「かしこまりました。ではすぐにご用意します」

 嬉しそうなレイの言葉に、クッキーも笑顔で頷いた。

「ほら、他も見て来いよ。こっちの事は気にしなくていいからさ」

 最後はレイの耳元に口を寄せてごく小さな声でそう言い、笑ってレイに背中を軽く押して隣のドルフィン商会の方へ押しやる。

「ありがとうね。じゃあ他も見て来るね」

 笑ったレイはクッキーと笑顔で頷き合い、隣のテーブルを覗き込んだ。



「レイルズ様、何か気になる品があればお申し付けください」

 レイにはいつも担当してくれるカミュが来てくれたので、まずはディーディーとニーカに贈るためのルビーの付いた帯飾りを見せてもらった。

「へえ、確かにルビーの色が違いますね」

 その際に石の良し悪しを見分けるコツなども教えてもらいながら、まずは良さそうな物を幾つかブルーのシルフとニコスのシルフ達にも一緒に選んでもらう。

 レイが候補に挙げる品が、どれも持ってきている中でも特に良い品ばかりで、担当のカミュは驚きを隠すのに必死だった。

「ううん、どれが良いと思う?」

 候補の六個の帯飾りを見ながら、レイが小さな声でブルーのシルフに尋ねる。

『今選んだこれは、どれもとても良い品だよ。あとはもう其方が良いと思うものを選んでやりなさい』

 優しいブルーのシルフの言葉に小さく頷いたレイは、それはそれは真剣な顔で時折手に取って石をすかして見たりもしながら見比べ始める。

「決めました。えっと、これがディーディーので、こっちをニーカのにします」

 ディーディーの為に選んだ帯飾りは、ルビーの嵌ったミスリルと金の合金で作られた土台部分全体に、細やかな花模様が透かし彫りされている一品だ。ニーカの帯飾りは同じくミスリルと金の合金で出来た土台部分が一つの花の形になっていて真ん中にルビーが嵌め込まれてる。

「えっと、次はアルジェント卿のところのソフィーとリーンだね。どれが良いかなあ……」

 別の箱が並んだ列に進み、繊細な装飾品に眉を寄せて考え込む。

 どれも見事な細工だとは思うが、あの年頃の女の子が喜ぶ装飾品がどんなものなのか、はっきり言ってレイには想像すらつかない。

「あの、教えてください。アルジェント卿のお孫さんのソフィーとリーンに贈るのなら、どんな物が良いですか? 僕、女の子が喜びそうな物なんて全然分かりません」

 困ったように眉を寄せるレイの顔を真正面から見てしまったカミュは、腹筋と表情筋を総動員して吹き出しそうになるのを商人の意地に賭けて必死で堪えた。

「そ、それでしたら、こちらのような日常的に身に付けられる気軽な品が良いかと。特にこういった品は、いくつあっても良いですからね」

 笑顔のカミュがそう言って勧めてくれたのは、幾つもの平らな箱にペンダントやネックレス、ブレスレットなどが並んだ一角だ

「ああ、確かに喜んでくれそうだね。ううん……どれが良いかなあ」

 しばらく無言で順番に見ていたが、ある箱の前で足が止まる。

「へえ、これって天体盤だよね」

 ペンダントトップが並んだ箱の中は、ほぼ全てが天体盤を模した丸い形をしていて、中央の留金の部分にさまざまな色の宝石が嵌め込まれていた。土台部分は二重になっていて動かす事も出来るみたいだ。

「へえ、一応星座も主な物は描かれているね」

 顔を寄せて感心しながらそう呟く。

「レイルズ様が天体に興味がおありだと聞き、様々な細工師達が星や天体観測に関わる品を新しく作っております。今年の降誕祭の贈り物の中でも特に人気の高いのが、こういった天体関係の品物ですね。これは星を観測する際に使う物だと聞いております。こちらには、星を模したペンダントトップやブローチもございますよ」

 カミュの言葉に、後ろに控えていた別の担当者が、即座に幾つかの平らな箱を持ってきて並べてくれる。

「うわあ、これは輪っかのある星だ。へえ、これは月だね」

 レイも時折天体望遠鏡で見ている輪っかのある星をそのまま見た形にした、星の部分が丸い宝石になっていて輪っかの部分が金や銀になったもの、三日月と呼ばれる猫の爪のように弓形に細くなった月など、さまざまな石で作られたそれに、レイの目が輝く。

「こちらは、空に輝く星を模した物ですね。これも人気があります」

 まるで雪の結晶のような幾何学模様ような形をしたものもある。確かに、光っている星だと言われればそう見える。

 真剣に悩んだレイは、カミュに相談してからいくつか候補をまずは選び、ブルーのシルフとニコスのシルフ達にも見てもらって問題のある品物が無いのを確認してから、ソフィーとリーンには、それぞれ輪っかのある星のペンダントトップを石を変えて選び、細い金鎖で作られたネックレスと、お揃いの手首につけるブレスレットも併せて選んだ。このブレスレットは鎖の途中にごく小さな星の形のラピスラズリがあってとても綺麗だ。ラピスラズリの星の形が違うので、間違う事もないだろう。

 これはドルフィン商会からアルジェント卿のところへ降誕祭の贈り物として届けてもらうように頼んだ。



「えっと、ジャスミンにはこれがいいと思うんだけど、どうかな?」

 小さな声でニコスのシルフ達にそう言ってレイが見たのは、小さなミスリル製の三日月の形のペンダントトップだ。

 三日月の上側の先端からごく小さなダイヤモンドがぶら下げられていて、動かすと軽く揺れる仕様になっている。そして三日月の下側部分には何故か横を向いた猫がちょこんと座っている。先がくるんと丸まった尻尾が三日月の下に垂れ下がって、これも揺れる仕様になっている。やや太めの鎖はミスリルにしては色が薄いので恐らく銀との合金なのだろう。

 三日月に猫が座るなんて実際には有り得ない光景だが、なんだかとても可愛らしく見えたのだ。

「ああ、良いのではないか。確かに可愛らしいな」

 ニコスのシルフ達が揃って笑顔で頷き、レイの右肩に座っていたブルーのシルフも笑顔でそう言ってくれた。

「じゃあこれにするね。えっと、これはジャスミンへの贈り物にしたいので、本部へ届けてください」

 カミュにお願いしたレイは、もう一度一通り見てからハンドル商会のシャムのところへ向かった。

 その後ろをニコスのシルフ達が追いかけていき、その後をよく分からないけれども一緒に選ぶのを見ていた何人ものシルフ達が慌てて追いかけて行ったのだった。

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