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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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密かな準備と離宮でのひと時

 休憩室を出たところで、荷物を手に待っていてくれたラスティと合流する。

「あのねラスティ! ちょっと相談させてください! ヴィゴから聞いたんだけど、五日後にお天気が良ければお嬢さん達と一緒に遠乗りに行くんだって。それで、向こうで食べるお菓子の用意を僕にして欲しいって頼まれたんだけど、どうしたらいいですか?」

 厩舎へ向かう廊下を歩きながら、早口の小さな声でそう伝える。

「はい、その件ならヴィゴ様から伺っております。外で食べるお菓子ですね。かしこまりました。早急に何件かご用意して提案させていただきます」

 実を言うとその件もヴィゴから頼まれているので、既にいくつかの業者に声をかけている。

「えっと、僕は何をしたらいいですか?」

 戸惑うようにそう尋ねられてラスティは笑顔になる。

「ご用意が出来ましたら離宮へお届け致しますので、マーク軍曹やキム軍曹にも食べていただいてお決めください」

 不安げだった表情から一転して目を輝かせて嬉しそうに頷くレイに、ラスティはもう笑いそうになるのを必死で堪えていた。



「お待たせ!」

 到着した厩舎では、先に来ていたマークとキムがラプトルに鞍を乗せているところだった。

「レイルズ様、どうぞ」

 顔馴染みの兵士が、ゼクスに鞍も手綱も綺麗に装着した状態で連れて来てくれる。

「ああ、ありがとうね」

 実は自分で鞍を乗せるところからやりたかったのだが、笑って手綱を受け取りお礼を言う。

「お待たせいたしました!」

 二人がほぼ同時に準備を終え、揃って直立する。

「うん、じゃあ行こうか」

 笑ってゼクスに軽々と飛び乗る。それを見て、二人もそれぞれのラプトルに飛び乗った。

 厩舎にいた兵士達には敬礼して見送られ、二人と並んでラスティや護衛の者達に付き添われながら西の離宮へ向かった。



「ああ、ブルー!」

 到着した西の離宮の広い庭には、ブルーが出て来て待っていてくれた。

 歓声を上げて一気にかけ出すレイを見て、皆も一気に駆け出す。

「久し振り!」

 ゼクスの背中から飛び降り、そのまま大きなブルーの鼻先に抱きつく。

「おいおい、無茶するなって!」

 すぐ後ろにいたマークが、突然解放されて慌てるゼクスの手綱を引き寄せて掴む。もちろんシルフ達に協力してもらっての事だ。

「よおし、大丈夫だから落ち着いてな」

 即座にラプトルから降りて、跳ね飛んでいるゼクスを確保する。

「毎回これだと、だんだん慣れてきたな」

 一緒になってシルフ達を使ってゼクスを確保するのを手伝ってくれたキムが、ラプトルから降りて来て笑っている。

「だな。でもまあ、仕方がないよ。愛しい竜との再会なんだからさ」

 ブルーに抱きつきながら、嬉々として話をしているレイを見ながら、二人は顔を見合わせて苦笑いしていたのだった。



「えへへ、ごめんね」

 しばらくして、レイが恥ずかしそうに笑いながら待っていた二人のところへ走って戻ってくる。

「構わないさ。大事な竜との時間なんだからさ」

「もういいのか?」

 二人から笑ってそう言われて、レイは嬉しそうに頷く。

「えっと、それじゃあ時間がもったいないし、このまま書斎へ行こうか」

 少し遅いお昼を食べたところなので、まだお腹も空いていない。

「ああ、そうだな。じゃあそれでお願いするよ」

 笑顔で頷き合い、そのまま建物の中へ向かう。

「えっと、もうこのまま書斎へ行きます。夕食は少し遅めでお願いしますね」

 廊下を歩きながら、いつも離宮へ来た時にお世話になっている執事に小さな声でそう言っておく。

「かしこまりました。ではそのように致します」

「うん、よろしくね」

 笑ってそう言い、三人揃って到着した書斎に駆け込んで行った。



「ああ、何度見ても素晴らしい光景だよなあ」

「だよなあ。この本を自由に読んでいいなんて、ああ……本当に夢みたいだ」

 事前に全ての本棚の扉の鍵を開けてくれていたので、もう三人は先を争うようにして移動階段を駆け上がって本を選び始めた。

「えっと、じゃあ僕は好きに本を読んでいるから、手伝いがいる時には声をかけてね。何でも手伝うからさ」

 レイの言葉に、机の上に選んだ本を積み上げていた二人が揃って笑顔になる。

「ああ、いざとなったらお願いするよ。でもとりあえずは自分達でやるから、レイは好きにしていてくれよな」

「疲れているんなら、そっちのソファーで休んでいてくれても構わないぞ」

「大丈夫。ぐっすり寝たから、もう元気いっぱいだよ」

 笑ってそう言うと、ソファーに座ってインフィニタスの精霊魔法理論に関する分厚い本を抱えるようにして読み始めた。

 レイの右肩にはブルーのシルフが座り、一緒になって楽しそうに本を横から覗き込んでいたのだった。

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