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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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お祝いの贈り物の数々

「えっと、開けてみてもいいかな?」

 ティミーとジャスミンの二人から渡された小さな包みを手に、レイは嬉しそうな笑顔になる。

「もちろんです。二人で頑張って選んだんですよ!」

「気に入ってくださると、嬉しいです」

 得意げに胸を張るティミーの言葉に続き、ジャスミンも少し恥ずかしそうにしつつも同じように得意げだ。

 笑顔でいつもの席に座ったレイは、嬉々としてリボンを解き始めた。

「これって……うわあ、ラピスラズリの万年筆だね!」

 白木の箱を開けたレイの声に、皆の視線が集まる。

『ほう、これは素晴らしい』

 レイの右肩に座っていたブルーのシルフの呟きが聞こえて、レイは箱から取り出した万年筆をそっと撫でた。鉱石特有のひんやりとした手触りに笑顔がこぼれる。

「すっごく綺麗だね。ほら見て、キャップと軸の部分が全部ラピスラズリで作られている。あ、金具の部分とペン先は全部金だね。ラピスラズリには金も似合うね」

 キャップを外すと、やや細身の金のペン先になっているのを見て、嬉しそうにそう呟く。

「今お使いの万年筆も、ペン先は金だと聞きました。ミスリルのペン先はちょっと硬めなので、それで、書き慣れておられるこっちの方がいいかと思ったんです」

 ティミーの言葉に、胸ポケットにいつもある愛用のブレンウッドのドワーフギルドで貰った万年筆をそっと撫でる、

「うん、今使っている万年筆のペン先も確かに金だね。書き心地が気に入ってるんだ。ありがとう、これも使わせてもらうね。ラピスラズリだからブルーの守護石だよ」

 笑ったレイが、ブルーのシルフにそっとラピスラズリの万年筆を差し出して見せる。

『ふむ、表面の研磨も滑らかで素晴らしいな。良き物を貰ったな。大事にしなさい』

 優しいブルーの言葉に、これ以上ないくらいの笑顔になる。

「ティミー、ジャスミンも、本当に素敵な贈り物をありがとう。大事に使わせてもらいます」

「よかった。気に入ってもらえたみたい」

 ジャスミンの嬉しそうな呟きに、ティミーも笑顔で大きく頷いていた。



「じゃあ俺達三人からは、これを贈らせてもらうよ」

「まさか、最優秀の成績を収めて凱旋するとはねえ」

「本当に見直したよ。さすがだね。紺白の新星おめでとう」

 ロベリオの言葉にユージンとタドラも笑顔でそう言い、三人揃って抱え上げた大きくて平たい木箱を机の上へ乗せた。

 これにも綺麗なリボンが掛けられている。

「ありがとうございます! えっと、開けてみてもいいですか?」

「もちろん」

「ああ、釘があるからこれを使ってね」

 蓋の一部には、開かないように小さな釘が打ち付けられている。

 釘抜きを使ってその釘を抜いてから、ゆっくりと蓋を開けてみる。

「うわあ、すごい! これって、銀細工……じゃあなくて、もしかしてミスリルですか?」

 木箱の中には、紛う事なきミスリルの輝きを放つ装飾品が並べられている。

 襟飾りやカフリンクス。祭事の際に使うミスリルのベルをはじめとした道具の数々。

 しかもそれら全てに、魔除けの意味のあるトネリコの葉を象った紋様が刻まれていてとても華やかだ。

「これって、もしかして……」

「ああ、これは正式な竜騎士となった暁に神殿での祭事に参加する際に使う、正装用の装飾品や神聖道具と呼ばれる祈りのための道具だよ。王宮での第一級礼装と、神殿での礼装は装飾品なんかが色々微妙に違うんだよね。それにこういうのは基本的に個人装備になるからさ。市井の出身であるレイルズは、当然持っていないでしょう? タキス殿や蒼の森のご家族に、これを一式揃えてもらうのはさすがに無理があるからね」

 タドラが木箱の中を覗き込みながら説明してくれる。

「だからその場合は先輩達が贈り物で用意して、見習い期間中に一通り揃えるのが竜騎士隊の伝統なんだよね」

「いやあ、それにしても贈り物の口実としては最高の殊勲を立ててくれたよな。未成年なら降誕祭の贈り物でなんとか渡せるけど、成人済みの場合は、贈り物をする口実にも苦労するんだよね」

 ユージンの言葉に、ロベリオが苦笑いしながらそう言って笑っている。

「そうなんですね。素晴らしい贈り物をありがとうございます。そんな物が必要だったなんて、僕、今初めて知りました」

 照れたように笑うレイの言葉に、若竜三人組も笑っている。

「まあ、神殿関係の祭事は、まだ全部は経験していないからな。年末から年明けの色んな祭事に参加する際に使うものもあるよ。まあその辺りはラスティ達が準備してくれるから、お前が何かする必要はないけどな。こういうのがあるって事だけは覚えておいてくれよな」

 笑ったルークの説明に、納得したレイが真剣な顔で頷く。



「って事で、見事な成績を収めたレイルズ君に、これは俺とカウリの二人から」

「これは俺とマイリーの二人からだ」

 ルークとカウリ、それからマイリーとヴィゴからそれぞれ大きな包みを渡されたレイが、順番に両手でそれを受け取る。

「ありがとうございます。うわあ、大きい。開けさせていただきますね。えっと……これってもしかして槍ですか? それでこっちは……ああ、盾だ! すごく綺麗!」

 真っ白な包みから出て来た槍の柄の部分には、全体に先ほどの装飾品と同じトネリコの葉を象った模様が細かに刻まれている。そして槍の穂先の中央部分にも縦長にトネリコの葉が刻まれている。

 盾の方には、中央部分に竜騎士隊の竜と柊の紋章が大きく刻まれていて、それを取り囲むようにトネリコの葉の模様が全体に刻まれていた。

「す、素晴らしいです……本当に、なんて綺麗なんだろう……」

 レイは半ば呆然とそう呟いたきり、手にした槍と盾を見つめたまま呆然としている。

「まあ、気に入ってもらえたようで何よりだよ。そう何度も使う装備では無いが、これらも竜騎士の大切な装備の一つだからね」

「それなのに個人装備扱いなのって、いつも思うけどなんか納得出来ませんよね」

 ため息を吐いたルークの呟きに、皆も頷きつつ苦笑いしていたのだった。



『これまた良き品々を頂いたな。どれも美しい輝きを放っておる。素晴らしい』

「そうだね。どれもすっごく綺麗だ。こんなの自分でなんて絶対に準備出来ないもの。竜騎士隊の皆に感謝しないとね」

 ミスリルの槍を改めて包み直しながら、レイはもう一度確認するかのようにそっと槍の柄のトネリコの模様を指で撫でた。

 レイの頭上では何人ものシルフ達が、素晴らしく美しいミスリルの装備や装飾品の数々に、大喜びで集まって来て、大はしゃぎしていたのだった。

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