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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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ただいま戻りました!

「はい、これでいいかな」

 本部の事務所へ戻りいくつかの書類にサインをしたレイは、一通り確認をしてからまとめて書類をラスティに渡した。

「はい、結構ですよ」

 受け取ったラスティがもう一度確認をしてくれて、まとめていつもの処理済みの箱に入れる。

「えっと、今日は誰もいないね。もしかして会議かな?」

 いつもなら大抵誰か座っているはずの事務所の机には、残念ながら竜騎士達は誰も見当たらない。

「どうでしょうね? ではまずは部屋に戻って着替えをしましょう」

「はあい」

 ぼんやりと誰もいない事務所の机を眺めていたレイは、慌てて返事をしてラスティについて行った。



 一旦兵舎の自分の部屋に戻ったレイは、軽く湯を使ってからいつもの竜騎士見習いの制服に着替える。その間に、ラスティもいつもの服に着替えを終えていた。

「これでいつもと同じになったね。この制服を着るのも久しぶりだ」

 いつもの日常が戻って来た事が何だか嬉しくなって、胸元を撫でる。

「あれ、ここにも略綬を付けるんだね」

「もちろんですよ。では参りましょう」

 てっきり食事に行くのだと思って素直について行くと、ラスティはそのままいつもの本部の休憩室へ向かって行った。

「そっか。あっちには誰かいるかな?」

 ちょっとワクワクしながらラスティについて行くと、何故か扉の前でラスティが立ち止まった。

「あれ? どうかした?」

 不思議に思って後ろから覗き込む。

「ではレイルズ様、どうぞ」

 ゆっくりと扉が開かれたので、不思議に思いつつも素直に部屋に足を踏み入れる。



「おかえりなさい!」

 部屋に足を踏み入れた瞬間、ティミーとジャスミンの元気な声が聞こえた直後に目の前に光があふれて点滅を開始した。これは光の精霊によるフラッシュの技だ。

「うわあ!」

 あまりの眩しさに、咄嗟に腕をかざして目を閉じる。

 その直後に、ティミーとジャスミンが飛びついてきた。

「あはは、ただいま戻りました!」

 目を輝かせた二人に左右からしがみつかれて、腕を下ろしたレイも笑顔になる。

「紺白の新星!」

「おめでとうございます!」

 照れたように笑ったレイにティミーとジャスミンが右手を上げてくれたので、レイも嬉しくなって二人の頭上で勢いよく手を打ち合わせた。

 その直後に大きな拍手が起こって驚いて顔を上げた。

 いつもの休憩室にはアルス皇子を除く全員が揃っていて、皆笑顔で拍手をしてくれている。

「ただいま戻りました!」

 その場で直立して敬礼したレイは、満面の笑みになり大声でそう言った。

 全員が、揃って敬礼を返してくれる。

「おかえり! すごいじゃないか!」

「いやあ、まさかの紺白の新星!」

「しかも勝ち抜き戦でも最終勝者になったって言うんだから、もう文句のつけようが無いよ!」

 まず若竜三人組が笑顔で駆け寄ってきて、レイの腕やお腹を突っつきながらそう言って笑う。

「えっと、まさかそんなにいい成績だとは思わなかったんだけど、頑張ったのを認めてもらえたみたいですごく嬉しいです!」

「いやあ、どれくらいやるか楽しみなところはあったけど、まさか最高の成績で紺白の新星の勲章を持って帰ってくるとは思わなかったよ」

「だよなあ。次に行くのが確定している俺のハードルを上げないでくれって」

 笑ったルークとカウリの言葉に、レイも満面の笑みで頷く。

 ヴィゴとマイリーも笑顔で拍手をしてくれている。



「じゃあ、戻ってすぐでお疲れだろうけど、このまま行くとしようか」

 側へ来てレイの背中を叩いたヴィゴの言葉に、やっと夕食が食べられると思ったレイが満面の笑みで頷く。

「はい、僕お腹ぺこぺこです!」

「ああ、ご馳走が待ってるぞ」

 マイリーがそう言うと、レイの左右にずっとくっついていたティミーとジャスミンが黙って手を離して二人揃って一歩下がった。

「では、僕達はお留守番していますので、どうぞいってらっしゃい」

「いってらしゃいませ」

「ああ、すまないな。これは一応公式行事になるので、二人は留守番だな」

 苦笑いしたマイリーの言葉に、歩きかけたレイの足が止まる。

「あれ? 食堂へ皆で夕食を食べに行くんじゃあ……ないんですか?」

 すると、ルークがニンマリと笑ってレイの肩を叩いた。

「残念でした。今夜は奥殿で陛下主催の夕食会だよ」

 そんな予定を聞いていなかったレイの目が見開かれる。

「ええ、そうなんですか?」

「当たり前だろうが。お前の無事の帰還と、成績優秀な竜騎士見習いにお祝いの言葉をくださるんだから、胸を張って行ってこい!」

 戻るなり、いきなりまさかの奥殿での夕食会。

 笑ったルークに思いっきり背中を叩かれて、情けない悲鳴をあげるレイだった。



『おやおや、無事に帰ったからといって、そうそうゆっくりはさせてもらえぬようだな』

『何しろ最優秀成績だもんね』

『そりゃお褒めの言葉くらいもらえるのではなくて?』

『我らも嬉しい』

 呆れたようなブルーのシルフの呟きに、揃って現れたニコスのシルフ達も嬉しそうに笑ってそう言い、揃って胸を張る。

『ああ、そうだな。其方達もとても良くやってくれたよ。感謝する』

 笑ったブルーのシルフの言葉に、ニコスのシルフ達も嬉しそうに頷きあい、それからレイの頭の上に並んで座りふわふわな髪をそっと撫で始めた。それを見て、周りに集まっていたシルフ達もレイの髪をそっと撫でたりこっそり引っ張ったりして遊び始める。

 しかしそれを見ても特に止めもせずに笑ったブルーのシルフは、当然のようにレイの右肩に座ってその柔らかな頬に思いを込めたキスを贈ったのだった。

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