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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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今後の組み合わせと三回戦!

「ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

 アーク少尉とお互いの健闘を讃えあった後、笑顔で一礼したレイはその場に残り、アーク少尉は晴れ晴れとした笑顔で胸を張って自分の部隊の場所へ戻って行った。



『お疲れ様。なかなか見事な勝ちっぷりだったな』

 笑ったブルーのシルフが、レイの右肩に飛んで来て座り、少し汗ばんでいる頬にそっとキスを贈った。

「うん、何とか上手く勝てたね。えっと、次は誰と当たるのかな?」

 小さくそう呟いて、正面の大きな組み合わせ表が書かれた掲示板を見る。

 グッドマン大尉とラスク少尉は順調に勝ち進んでいるし、最初に顔合わせをした士官候補生達の中ではフェルダー少尉はいきなり初戦で敗退していたが、それ以外は順調に勝ち進んでいるようだ。

「えっと、二回戦が全部終わった時点で残りがもう十六人になっているんだね。それで次の僕の対戦相手は……第一部隊のヒール少尉って人みたい。ええ、対戦を見逃しちゃったけど、どんな人だったんだろう?」

 慌てるように周りを見るレイに、ブルーのシルフが面白そうに笑う。

『北の交差点の街ブリストルに勤務する少尉のようだ。太刀筋は悪くはないが、初戦も二回戦も辛勝だったぞ。剣の腕前も体格も、まだまだこれからといった感じだったな。大丈夫だよ。今の其方ならば充分に勝てる相手だ』

「そうなの? でも、慢心は禁物だよね。じゃあ頑張って次も勝ちます!」

 そう言いながらも、レイの視線は組み合わせの掲示板に向かったままだ。

『おや? いかがした?』

 ブルーのシルフは、そんなレイの横顔を見てから同じように掲示板を見る。

 今は、白い腕章を付けた兵士達が、勝ち抜いた兵士の名前を書き込んでいるところだ。

「えっと、次のヒール少尉との試合に勝てれば、その次になるとアイズナー少尉や、もしかしたらグッドマン大尉と当たるかも……」

 それぞれの名前を確認していたレイが、顔を覆いながら悲鳴を上げる。

『ああ、確かにそのようだな。さあどうなるやら。あの大尉殿はなかなかの腕前だったからなあ。しかし、現役の最前線の砦に常勤している大尉殿が、見習い士官達の少尉達と本気でやり合うか。なかなかに乱暴な組み合わせよのう』

 面白がるように笑うブルーのシルフの言葉に、レイも苦笑いしつつ頷く。

「だよねえ、ラスク少尉もそうだし、他にも何人か上官の人達が参加しているものね。そんなの絶対に勝てないよね」

「まあ普通に考えればそうだろうが、それなのにわざわざ現役の軍人達と見習い士官達を戦わせるのなら、勝ち負けよりも、手合わせをする事それ自体に意味があるのやも知れんのう』

「そっか、普通なら絶対に手合わせしてもらえないような人達と、こうやって手合わせしてもらえるんだものね。そりゃあ勝負なんだから、勝てるものなら勝ちたいけど、ここは勝ちにこだわらずに胸を借りるつもりでいけば良いんだよね。うん、何だかそう考えたらちょっと気持ちが楽になった気がするよ。ありがとうね。ブルー」

 小さく笑ってそっとブルーのシルフにキスを贈る。

『ああ、しっかり頑張りなさい。万一、先ほどのような危険な事態になれば、全て守ってやる故安心しなさい』

 笑ったブルーのシルフの言葉に、レイも笑顔で頷く。

「レイルズ様。そろそろ次の試合ですのでこちらへどうぞ」

 白い腕章をつけた兵士の呼びかけに、レイは元気よく返事をして指定された場所へ走って行った。



「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします!」

 童顔で小柄なヒール少尉は、レイと向かい合うと大人と子供ほどの身長差がある。

「うわあ、デカすぎ。こんなの絶対に無理だよ」

 お互いに木剣を正眼の一で構えていると、ヒール少尉は思い切り見上げる体勢で情けなさそうに小さくそう呟く。だが、この位置ではレイには丸聞こえだ。

「ごめんね、大きくて」

 苦笑いしながら小さな声でそう言うと、驚いたみたいに目を見開いてレイを見上げた。

「あはは、聞こえてましたか。では、遠慮なくいかせてもらいます!」

 一つ大きく息を吸ったヒール少尉は、下段に構え直して一気に突きに来た。

 小柄な体格を活かした足への攻撃だ。

「させませんよ!」

 レイも一つ大きく息を吸って、突きに来た木剣を勢いよく横へ払う。

「うわあ〜〜!」

 当然踏ん張って次が来ると思って即座に下段に構え直したレイだったが、ヒール少尉は情けない悲鳴を上げてそのまま横に吹っ飛んでしまった。

「あれ?」

 思わず吹っ飛んだ方を振り向くと、白線の向こうまで一回転して転がっていき、そのままうつ伏せになって倒れて止まった。

「ああ、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

 慌てて駆け寄り抱き起こしてやる。

「レイルズ様、今、今僕は丸太に殴られたみたいな衝撃でしたよ。どれだけ腕力あるんですか!」

 起き上がりながらの悲鳴のようなその叫び声に、レイは堪えきれずに吹き出してしまった。

「あはは、もうこれ以上ないくらいの僕の完敗です。恐れ入りました!」

 改めて向き直ったレイとヒール少尉は、深々と一礼してから顔を見合わせて同時に吹き出し、肩を叩き合って大笑いしていたのだった。

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