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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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お疲れ様でした

「はあ、明日はいよいよ僕も指揮をするんだってさ。本当に大丈夫かなあ」

 日が暮れる前にそれぞれの部隊はひとまず撤収して、レイも部隊の皆と一緒に本部の自分のテントがある場所まで歩いて戻った。

 小さくそう呟いて明日からの事を考えて密かにため息を吐くレイだったが、戻る間中、第六中隊の兵士達は皆、レイの身の軽さと足の速さを口々に褒めてくれた。

「えっと、僕がオルダムへ来る前に森の家族と一緒に暮らしている時に、家族が作ってくれた訓練場所が林の中にあってね、自然の木や岩を生かしたいろんなルートを取れるように工夫をしてくれてあったんだ。毎日そこを飛んだり跳ねたりして走り回ってたんだ。だから僕の身が軽いのは、そのおかげだと思うな」

 レイもご機嫌で笑いながら、ニコスと一緒に走った林のコースがどれだけ大変で難しかったかを、身振り手振りを交えながら聞いている兵士達に説明していた。その際に、レイがお陰で今でも垂直の壁を駆け上がれると言ったら、ほぼ全員が驚きの声を上げ、ぜひ見たいと大騒ぎになる一幕もあった。

「ええ、いくらなんでもここでは無理だよ。そもそもそんな事の出来る建物はありません。じゃあ、建物のあるところへ戻ってからね」

 苦笑いするレイがそう言って肩を竦めると何故か笑いと共に拍手が沸き起こり、離れたところにいた他の兵士達は一体何事かと不思議そうにしていたのだった。



「懐かしいな。秋に休暇で戻ったら、またあそこで走れるかなあ」

 林のコースの話をしていたら何だか皆に会いたくなってきた。

 小さな声でそう呟いた途端に不意に懐かしさに襲われてしまい、レイは少しだけ潤んだ目で薄暗くなった空を見上げながら小さなため息を吐いたのだった。

「ねえ、ブルー。林のコースってまだあるんだよね?」

 目の前に広がる本部のテントを見ながら、レイは小さな声でブルーのシルフに話しかける。

『ああ、今でも黒髪の竜人が時々訓練を兼ねて走っておるな。最近では、黄色い髪の竜人まで一緒になって走っているぞ。まあ、まだまだレイや黒髪のには到底敵わぬ程度だがな』

「へえ、そうなんだ。タキスも確かに身軽だったものね」

 タキスと追いかけっこをした懐かしい記憶を辿りながら、小さく笑ってそう呟く。

『ドワーフと人間は、彼らが林のコースを走っている時は、いつも横で見学して好き勝手言っておるだけだけれどな』

「あはは、ギードは体重があるからあそこを走るのはちょっと無理だよね。それにアンフィーは、そもそもそんな訓練はしていないでしょう? 確か彼は軍人じゃあなくて、竜の保養所で直接雇っている地元の人だって聞いたよ」

『ああ、その通りだ。ちなみにロディナの竜の保養所にいるのは、軍人の数よりも地元で雇われた一般人の方が多いぞ』

「へえ、そうなんだね」

 のんびりとそんな話をしながら自分のテントへ戻った。



「お疲れ様でした。ずいぶんと大騒ぎだったみたいですね」

 遠目に見ても、レイがいた辺りが何やら大騒ぎになっていたのが分かっていたので、出迎えたラスティは若干呆れ気味だ。

「だって、すごかったんだよ。実際の手合わせは無しで、カードでじゃんけん対決するだけだって聞いていたのにさ。途中から集団で襲いかかってこられて大乱闘になったんだよ。まあ、そんな無茶はしていなかったみたいだけど、鼻血出している人とかもいたよ。それで僕なんかほぼ全員の敵役の部隊の兵士達から、倒して名を上げろ〜〜! とか言われて追いかけ回されてさ。もう、必死になって逃げ回ってたんだから」

「ですが、それほど服装も乱れていませんね。もしかして、逃げおおせましたか?」

 驚きに目を見開きつつそう尋ねると、レイは満面の笑みで大きく頷いて胸を張った。

「もちろん、全員が息を切らして倒れるまで逃げ回ったよ」

「そ、それはお疲れ様でしたね。いやあ、さすがですね」

 レイの身軽さは知っていたつもりのラスティだったが、あの乱戦の中を最後まで無事に逃げおおせるというのは、決して簡単な事ではない。

 レイの有能さに感心しつつも、正直言って呆れてしまうラスティだった。

「それでさ、明日はいよいよ僕も実際に部隊の指揮をするみたいだよ」

「ああ、いよいよ部隊単位の訓練になるんですね。頑張ってください。レイルズ様なら出来ますよ」

「ええ、そんな簡単に言わないでよ〜〜。僕、明日の事を考えたら、お腹が痛くなりそうです」

 ため息を吐いてお腹を抱えて見せるレイに、ラスティは困ったように笑って頷く。

「それはいけませんね。ああ、お腹が痛い時には食事を抜くと良いそうですから、今夜は絶食にいたしましょうか?」

「駄目です〜〜〜! そんな事したら今度は空腹で死んじゃいます!」

 ラスティの腕にすがって泣く真似をしながら叫ぶレイを見て、ラスティだけでなく周りにいた兵士達まで揃って吹き出し、周囲は大爆笑になったのだった。

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