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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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午後からの行動予定

昨日の更新にて、書き直す前のものを間違って投稿してしまい、キャラの名前が違っていました。

訂正しておりますので、先にそちらをご確認ください。

大変失礼いたしましたm(_ _)m





 午後からはグッドマン大尉や第六中隊と一緒に行動しろとオッターグル少佐に言われ、携帯食と水だけの味気ない食事を終えたレイは、素直にラプトルに乗って第六中隊のいるところへ向かった。

「おう、しっかり食ったか?」

 ラプトルのそばで座っていたグッドマン大尉が、レイが来たのに気づいて振り返りながら笑顔でそう言ってくれる。

「はい、とっても美味しい携帯食を二つも食べました!」

 ゼクスから飛び降りてその場で胸を張るレイの答えに、座ったままのグッドマン大尉が小さく吹き出す。

「あはは、そりゃあ何よりだ。二個も食ったらそのデカいなりでも充分だな。午後から腹一杯になって眠くならないようにな。居眠りこけて、ラプトルの背中からおっこちて踏まれても知らねえぞ」

 一瞬、そんな事はないと言いそうになったのだが、目の前でニコスのシルフ達が笑いを堪えて自分を見ているのに気づいて納得した。これは、いつものレイが苦手とする比喩だろう。

「大丈夫ですよ。ゼクスは優秀な子なので、僕が背中で居眠りしてても振り落としたり踏んだりしませんって」

 それを聞いたグッドマン大尉だけでなく、その隣に座っていたラスク少尉とリム少尉までが揃って思い切り吹き出して、遠慮なく大笑いしている。

「あんたやっぱり最高だな」

「確かに最高だ」

 二人揃って笑いすぎて出た涙を拭いながらそんな事を言って、顔を見合わせてまた笑っている。どうやらあの答えで正解だったみたいだ。

「お前ら笑い過ぎだよ。ほら、そろそろ始まるぞ」

 グッドマン大尉にそう言われて、座った二人はやる気のなさそうな返事をしたのだった。



「今日のところは、俺が指示を出すからお前さんはまずは現場を見て慣れるところからだな。士官用のカードは貰ってきたか?」

 グッドマン大尉に言われて、頷いたレイは先ほどラスティから渡されたカードを小物入れから取り出した。

「はい。えっと、これですよね。そう言えば僕は何が書いてあるんだろう?」

 ちょっとだけワクワクしながらカードを見たが、表にも裏にも数字らしきものは無く、どちらにもラプトルの絵が描かれているだけだ。

「あれ? そういえば午前中、グッドマン大尉ってどこにいらっしゃったんですか?」

 遠くからではあったが第六部隊の様子はかなり真剣に見ていたのだが、大尉の姿を見た覚えがない。それに今、大尉の後ろにいるラプトルにも見覚えがない。第一、歩兵中心で構成されている第六部隊の周囲にはラプトルに乗った人はいなかった気がする。

 不思議そうにしているレイを見て、グッドマン大尉は笑って首を振った。

「どこって、皆と一緒にいたに決まっているじゃないか」

 呆れたように言われて、思わず目を瞬く。さすがに士官の存在を遠くからとはいえ見落とす事はないはずだ。

 すると、立ち上がったラスク少尉は胸元から一枚のカードを取り出した。それを見て、近くにいた兵士が自分のカードを並べて見せてくれる。

「あれ、大きさが違いますね。それに大尉や僕のカードの方がちょっとそっちの、伍長のカードよりも大きいみたいに見えます」

 素直に思った通りの事を言うと、大尉は苦笑いしつつ頷いてから口を開いた。

「これは、俺達士官が持つカードなんだ。現場にいてもしも敵側の兵士にカードを向けられたら、これを見せ返せばいい。相手も士官でない限りは一方的にこっちが勝ちだよ。もしも相手も士官だったら、このラプトルの絵が勝敗を決する。ほら、ここに数字が書いてあるだろう?」

 言われてみれば、ラプトルの鞍の側面に、一つ数字が書かれていたのだ。

「えっと、僕は二番ですね」

 嬉しそうなレイの言葉に、グッドマン大尉は笑って自分のカードをレイの目の前へ差し出して見せた。

「よし勝った! 俺は三番だからな!」

「ええ、じゃあ僕はもう退場ですか?」

 突然の勝った宣言を聞き、レイがショックに打ちひしがれていると、またしてもラスク少尉は吹き出して大笑いしている。

「はあ、苦しい。お前さん絶対に俺の腹筋と肺活量を殺しにきているだろう。ううん、こんなところに思わぬ刺客がいたぞ」

 口元を行儀悪く制服の袖口で拭った大尉は、そう言って笑いながら首を振った。

「味方同士で戦ってどうするんだよ。これは士官用のカードだよ。これを持っていれば歩兵や弓兵が相手だと、向こうがどのカードを持っていても全部勝てる。士官と重装歩兵が相手の場合は普通に番号によるじゃんけんだ。だけどここの位置で重装歩兵と戦う事はまずないから、実質士官との対戦の場合の専用カードなんだよ」

「えっとつまり僕の場合だと、三番には負けるけれども一番には勝つ。二番とは引き分けですよね。引き分けになった場合はどうするんですか?」

「引き分けだとどうもしねえよ。どちらもそのまま現状維持だ」

「えっと、それだとこの場での士官はすごく有利ですね」

 不思議そうにしているレイの言葉にラスク少尉がまた笑う。

「実際の場面を考えてみろよ。歩兵とラプトルに乗っている奴の力が均等だと思うか? 実際の戦場だと、歩兵はラプトルの近くへなんてよほどの腕の持ち主以外は近寄らねえよ。それくらい戦闘力も機動力も違う、はっきり言って勝負にならねえよ。だから全勝なんだ。だけどここの訓練の場合は、実際にラプトルに乗っていると他の兵士に危険が及ぶ場合があるからな。だから士官達はこのカードを持っているわけだよ。な、面白いだろう?」

 にっこり笑ってそう言われて、レイはようやく理解して大きく頷いた。

「分かりました。じゃあ、ゼクスは本部に預けておけばいいんですね」

「おう、お前さんの従卒殿に預けておけばいいよ。今回は、お前さんにも徒歩で動いてもらうからそのつもりで。まあ、今回はある意味最前線の現場の混乱を知ってもらうのも目的のうちだからさ」

 にっこり笑って何やら恐ろしい事を言われて戸惑いつつもしっかりと頷き、大急ぎでラプトルを本部へ返しに行った。

「すぐ戻って来いよ〜〜」

 笑ったラスク少尉の言葉に元気よく返事をしたレイは、中央司令部の中にラスティの姿を見つけて、大急ぎで駆け寄ったのだった。

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