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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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朝食と個人走破訓練の出発準備

「ううん、寒い……」

 翌朝、いつものようにシルフに起こされたレイは寝袋から出ようとしてあまりの寒さに震え上がってしまい、慌ててもう一度寝袋に潜り込んだ。


『駄目ですよ〜〜!』

『起きてくださ〜い!』

『朝ですよ〜〜!』

『起きてくださ〜い!』


「うん、分かってる。起きるよ……ふああ〜」

 寝袋に収まったまま何とかそう答えて腹筋だけで起き上がったレイは、器用に寝袋の中で伸びをしながら大きな欠伸をした。しかしそのまままた眠りそうになったところを笑ったシルフ達に前髪を引っ張られてしまい、諦めて寝袋から這い出して立ち上がった。

「おはようございます。そろそろ起こそうかと思っていましたよ」

 隣を見ると、もう既に身支度を整えたラスティが、顔を洗うための水を用意してくれているところだった。

「おはようラスティ。今朝は随分と寒いね」

 寝ぼけ眼を擦りながら、もう一度思いっきり伸びをして体を伸ばしたレイは、差し出してくれた水桶で顔を洗って大急ぎで顔を拭いた。

「うわあ、寒い!」

「さすがに、水はかなり冷たくなってきましたからね」

「でも大丈夫だよ。おかげですっかり目が覚めました!」

 元気よくレイがそう言うと、ラスティも笑って頷いてくれたので二人揃って顔を見合わせて笑い合い、レイは大急ぎで身支度を整えた。

 その間に、ラスティが朝食を取りに行ってくれた。



「えっと、今朝の朝食は……」

 ラスティから渡されたトレーの上の、相変わらずの謎のスープと焼き締めた硬いパンを見る。

 諦めのため息を吐いたレイは無言で小さく首を振ると、椅子に座って食前のお祈りをしっかりとしてから黙ってそれを食べ始めた。

 ラスティも、その隣に座って同じくお祈りをしてからパンを手にした。それからしばらくの間、二人とも無言でそれぞれの食事を黙々と食べた。

「ごちそうさまでした。スープのおかげで体が暖まったよ」

「そうですね。何であれ温かいものが郊外で頂けるのは有り難いですよね」

 敢えて味には言及せずに、温かくて良かったねと顔を見合わせて笑い合ってから、食べ終えた食器を返しにラスティは外へ出ていった。




『おはよう。いよいよだな』

 その時、ブルーのシルフが現れてレイの右肩に座りそっと頬にキスを贈った。

「ああ、おはようブルー。えっと、今日のお天気は?」

『ああ、少し雲は出るがそれなりに良いお天気だよ。雨が降らなくて良かったな』

 笑ったブルーのシルフの言葉に、剣帯の締め具合を確認していたレイも苦笑いして頷く。

「確かに、行軍訓練中に大雨とかは嫌だなあ」

 それなりに防水力のある雨用のマントはあるし、いざとなったらウィンディーネにお願いすればびしょ濡れになったところですぐに乾かす事が出来る。

 しかし、精霊魔法に縁の無いない普通の兵士達はそうはいかないだろう。

 下手をすれば、びしょ濡れになったまま雨の中で寝る事になるかもしれないし、万一雨の中で怪我でもすれば、濡れた傷口が化膿してしまうかもしれない。

 最悪そんな状態になれば、訓練が続行出来なくなる可能性だってある。

「気を付けないとね。安全なお城の中とは何もかもが違うんだもんね」

 自分に言い聞かせるようにそう呟き、装着したミスリルの剣をそっと撫でた。



 戻って来たラスティと一緒に身支度を改めてしっかりと整え、用意してあった装備一式を全部まとめて持ったレイは、思ったほどの重さではない事に密かに安堵していた。

「よし、これくらいなら持っていても走れそうだね」

 リュック型になった装備の鞄を背負いながらそう呟くと、いきなり振り返ったラスティが目を見開いてすごく驚いている。

「えっと、どうかした?」

 慌てて自分の身体を見て軽く服を払い、背中に背負ったリュックを見る。

「えっと、別にどこもおかしくないよね?」

 まだ無言で自分を見つめているラスティに恐る恐るそう尋ねると、小さなため息を一つ吐いたラスティは、苦笑いしながらレイの腕を叩いた。

「レイルズ様。行軍中は緊急事態以外は基本的に走ってはいけませんよ。森の中では、出来る限り一定の速度を保って、歩くのです」

「あれ、そうなの? 時間制限があるって聞いていたから、てっきり到着時刻の速さを競うのかと思っていたんだけど……違うの?」

「ああ、駆けっこじゃあないんですから、それは違いますよ。時間制限の場合は、文字通りその指定された時間内に到着すれば良いのですから、無理に急ぐ必要はありません」

「なんだ、それなら安心だね」

 笑ったレイの言葉に、ラスティももう一度苦笑いしながら頷いてくれたのだった。



「おはようさん。いよいよだな」

「おはよう」

「おはよう」

 天幕の外へ出たところで、ちょうど同じく天幕から出てきたマティウス達三人から声をかけられた。

「おはようございます。怪我には気を付けてお互い頑張ろうね」

 笑顔のレイの言葉に、三人も笑って頷いてくれた。

 そのすぐ後にオリヴァーとクリストフの二人も出て来たので、今朝は全員一緒に指定された集合場所へ早足で向かった。

 そこには既に彼ら六人以外にも、他の部隊と一緒に今回の行軍訓練に参加している士官候補生達や、下級兵士達がそれぞれの場所で整列し始めているところだった。

 レイ達も大人しくその場で整列して、今日の課題が書かれた指令書を持ったジェイド大佐達が出て来てくれるのを揃って待っていたのだった。

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