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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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飲み会の終了

「しぇいれいおうに、かんちゃとしゅくふくを!」

 唐突に起き上がって嬉々として乾杯したレイの言葉に、不意打ちをくらったその場にいた全員が飲み掛けのワインを噴き出す。

「おぇっ! げふぅ!」

 噴き出したワインが気管に入ったマイリーが咽せて咳き込み、親友の珍しい無防備な奇声に隣にいたヴィゴがまたしても吹き出し、直後にそれを目の前で見てしまったアルス皇子がもう一度吹き出して揃って大爆笑になった。

 左手で口元を押さえたマイリーも、机に突っ伏して肩を震わせている。

「ちょっ、お前……俺達を、笑い殺す、つもりか、よ」

 笑い過ぎて息が切れているカウリの言葉ににっこりと笑ったレイは、抱えたクッションごとパタリとソファーに倒れ込み、そのまままた気持ち良く寝落ちしてしまった。

 レイのそのあまりにも無防備で幸せそうな寝顔に、もう皆笑いが止まらない。

 少し離れて控えていた従卒達や執事達も、そのあまりの無邪気さに必死になって笑いを堪えていた。



 休憩室ではそれからしばらくの間、苦しそうな酔っぱらい達の笑い声が止まらなかったのだった。



 呼びもしないのに勝手に集まって来て、一緒になって呑むふりをしていたシルフ達は、そんな彼らを見て大喜びで笑いながら手を叩いたり、手を繋いで輪になって踊ったりと、大はしゃぎしていたのだった。

『なんとも無邪気な事だな』

 笑ったルビーの使いのシルフの言葉に、他の竜達の使いのシルフも笑いながらうんうんと頷く。

 一緒になって頷きつつ、ブルーのシルフは、先ほどからもうずっと笑いが止まらなくて苦労していたのだった。



「ラスティ、頼むから、俺達が、笑い死ぬ前、に、こいつを、部屋へ、連れて行って、やって、くれるか」

 息も絶え絶えのルークの言葉に、肩を震わせたラスティが進み出てくる。大柄な執事がもう一人、それを見て進み出てきた。

「レイルズ様、そろそろお部屋へ戻りましょうか」

 一つ深呼吸をしてから笑いを堪えたラスティの呼びかけに、しかしレイは全く反応しない。

「ううん、これは仕方がありませんねえ」

 二人がかりで抱えて部屋に戻るつもりでレイの腕を掴もうとした時、苦笑いしたブルーのシルフがそっと彼の頬を叩いた。

『待ちなさい。今起こしてやろう。この酔っぱらいぶりは可愛くてずっと見ていたいくらいだが、確かに少々飲み過ぎなのは否めぬな』

 その言葉に、ラスティが驚いて自分の右肩にいる伝言のシルフを見る。

 ブルーのシルフは、そのままレイのこめかみの上に立つ。

『では起こしてやるとしようか。皆、頼む』

 突然現れたウィンディーネ達とシルフ達、それから光の精霊までが現れて一斉に手を叩いた。

 しかし以前のような閃光はなく音だけだ。

 突然の精霊達の様子に何事かと驚く竜騎士達を見て、ブルーのシルフは笑って胸を張った。

『これでもう起きるはずだ。完全に酔いは覚めてはおらぬが、これなら誰かに付き添って貰えば自力で帰れるだろう』

「あはは、成る程ね。無理に酔いを覚ますんじゃあなくて、とりあえず起こしたわけか」

 苦笑いしたルークが立ち上がり、ラスティの横から手を伸ばしてレイの滑らかな頬を軽く叩く。

「おおい、起きろ〜〜〜!」

 耳元でそう言って即座に飛んで下がる。その直後に勢いよく起き上がったレイを見て、また皆が揃って吹き出す。

「よしよし、鋼の頭突きを避けたぞ!」

 拳を握って笑うルークの言葉に、またしてもあちこちから吹き出す音が聞こえたのだった。



「えっと……あれ?」



 その時、クッションから顔を上げたレイが、眠そうな目を隠しもせずに周りを見回して首を傾げる。

 そして、すぐ近くで自分を見ているラスティに気づく。

「ラスティだ〜〜〜!」

 笑ってそのまま両手を広げてしがみつく。

「お、おっと!」

 慌てたようにそう言って、そのままもたれかかってきたレイをしっかりと抱きしめ返す。

「レイルズ様、飲み過ぎですよ」

 苦笑いしつつ耳元でそう言ってやると、しがみついたまま顔を上げたレイは照れたように笑った。

「えへへ。だって、美味しかったんだもん」

「それは良かったですね。ですがもう飲み過ぎですから今日は終わりにしましょう」

「ええ、もっと飲みたいのに〜〜」

「はい、もう今日はお開きですよ」

 笑って言い聞かせるようにそう言って背中をポンポンと叩き、体を少し離して腕を自分の肩に回して脇から支えてやる。

「では皆様。お先に失礼いたします」

 振り返ったラスティは、笑顔で自分達を見ている竜騎士達に向かってそう言って一礼すると、レイを支えたままゆっくりと歩き始めた。

「では、お先に、失礼します!」

 ラスティに支えられて何とか立っているレイが満面の笑みで敬礼するのを見て、竜騎士達も笑って敬礼を返してくれた。

 ただし、全員が座ってグラスを持ったままでの敬礼だったので、いつもとは全く違って気が抜けていたのだけれども。

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