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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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朝練でのひと時

「ねえ、ちょっと聞くけど、今日の二人の予定ってどうなってるの?」

 屈伸運動をして身体を解しながら、小さな声でレイが隣にいるマークにそう尋ねた。

 エケドラのワインを届けるつもりだったけれど、もしかしたら講義の予定が入っているかもしれないと思ったからだ。

「来週初めから、また別の顔ぶれで講義が始まるからさ。こっちは光の精霊魔法を扱える方が何人もいるから、以前使った資料とは別に、光の精霊魔法についての資料も渡す予定にしているんだ。今はその資料作りの真っ最中なんだ」

「ちなみに午前中は、城の図書館で二人揃って資料探しの予定だよ」

 同じく屈伸運動をしているキムもそう言って笑っている

「今回はセディナ教授とティバル教授が資料探しを一緒に手伝ってくださるって聞いてるから、精霊魔法に関する特別資料室にも入らせてもらえるって聞いているんだ。あそこは、俺はまだ入った事が無いんだよな。だからどんな資料があるのか楽しみなんだ」

 嬉しそうなマークの言葉に、キムも笑顔で頷いている。

「俺は何度か入らせてもらった事があるけど、あそこの資料は本当にすごいんだよな。俺も楽しみだ」

「特別資料室って?」

 初めて聞くその名前に、嬉しそうな二人を見てレイが不思議そうに首を傾げる。

「ええと、城の図書室は、一般公開されている本や資料とは別に、各部門ごとに特別資料室ってのがあるんだ」

 顔を見合わせて無言の譲り合いの後にキムが教えてくれる。

「部門って、天文学とか、精霊魔法関係、とかって書いてある、本を分類しているあれの事だよね?」

 立ち上がって大きく伸びをしながら、レイはお城の図書館の本棚に表示されている様々な分類名を思い出してそう尋ねる。



 キムが詳しい説明をしてくれたところによると、まず、レイが言ったように、お城の図書館の本棚には本の内容に合わせた分類名の札が用意されて整理されている。それらは図書館の利用者達が、大量の蔵書の中から自分の目的の本を探す際の目安になっている。

 また王立図書館の蔵書量は桁違いに多い為に、当然だが全ての資料が公開されているわけではない。

 王立図書館の主な役割の一つに、さまざまな資料を収集して分類して保存して後世に正しい形で残すという大切な仕事があるのだ。

 なので、収集されて分類ごとに整理されたさまざまな資料は、まずは公開されるものと保存するものに分けられて整理分類されていくのだ。それらの中の、非公開となっている資料や蔵書を集めた保管場所の事を特別資料室と呼んでいる。

「ちなみに以前にも言ったと思うけど、一般の書庫の内容も、場合によっては定期的に入れ替えられていたりもする。精霊魔法訓練所の図書館は、王立図書館から定期的に本や資料の入れ替えが行われたりもしているんだぜ」

「ああ、そんな事を言ってたよね。へえ、すごいんだね。機会があれば、僕もその特別資料室を見てみたいな」

 用意してくれてあった重りをゆっくりと持ち上げては下ろしながら、レイが小さな声でそう呟く。

「レイルズ様なら、希望すれば恐らくですが特別資料室の閲覧も許可されると思いますよ」

 ちょうど数名で走っていた兵士達が近くを通ったため、顔を上げたマークが改まった口調でそう教えてくれる。

「そうなんだね。じゃあ今度聞いてみようっと」

 嬉しそうにそう言って重りを持ち上げるレイを見て、マークとキムはまた顔を見合わせる。

「あの、よければ一緒に行きますか?」

 マークもレイよりも小さな重りを持ち上げながら、少し考えて嬉しい提案をしてくれる。

「ううん、すっごく嬉しい提案なんだけど、残念ながら今日は午前中は会議に出席の予定が入ってるんだ。だから駄目だね」

「あれれ、そうなんですか。会議なら仕方がないですね。それじゃあ教授にレイルズ様も閲覧を希望していたって伝えておきます」

 走って戻ってきた兵士達を見ながら、苦笑いしたマークがそう言い、レイも苦笑いしながら何度も頷いていたのだった。

「それじゃあ午後からになるけど、事務所に顔を出すね」

 驚く二人に、レイは笑顔で肩を竦める。

「ちょとした届け物があるんだ。午後からどれくらい時間が取れるか分からないから今はなんとも言えないけど、時間が有りそうなら、資料作りの手伝いくらいするよ」

 少し大きな重りに変更したレイがそう言って笑う。

「お忙しい中、恐れ入ります!」

「いいよ、そんなにかしこまらないで」

 改まった口調で直立する二人を見て一瞬口を尖らせたレイだったが、また近くを兵士達の団体が走るのを見て、小さなため息を吐いて笑顔で二人の背中を叩いたのだった。



 改めて敬礼してから仲間達のところへ走って戻るマークとキムを見送ってから、ルークとタドラに木剣と棒で交互に相手をしてもらってしっかりと汗を流し、戻って朝食を食べた後はルークと一緒にお城の会議に参加した。

 発言権の無い聴講という形なので、レイは気になる点を黙々とノートに取り、正直に言うとかなり退屈な午前中を過ごした。

 退屈な会議を終えて本部に戻って昼食をルークやラスティ達と一緒に食べた後、少しだけ事務所で日報を書いたり自分の資料整理をしてから、ルークにもう午後からは自由にして良いと言われて、大喜びで荷物を抱えてたレイは、マーク達の使っている会議室へ向かったのだった。

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