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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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お祝いの品の相談

 カウリが正式に竜騎士としての叙任を受けると聞き、また、ヴィゴが見事な短剣をお祝いの品としてカウリに贈ったのを見て、レイは自分はお祝いを用意していない事に気がついて本気で大慌てをしていた。

 それで、ヴィゴの贈り物である剣を見せてもらった後に、資料の山が積み上げられた小会議室へ戻った時にルークに相談したのだ。

 だって、そもそもカウリに何を贈ればいいのかすら全く分からないのだから、教えてもらわないとどうしようもない。



「ああ、お前はまだ見習い扱いだからそんな大層に考えなくていいよ」

 しかし、相談を受けたルークは苦笑いして顔の前で手を振っている。

「そうだな。お前が贈るとしたら……」

 本気で困っているレイを見て、ルークは笑いを堪えて腕を組んで考えてくれている。

「教えてください。僕は何を用意したらいいですか?」

「まずティミーは、おそらく実家のヴィッセラート家から彼とお母上の連名でカウリ宛に祝いの品が贈られてると思うぞ。だけどお前の場合は、ちょっと違うんだよな」

「えっと、どう言う事ですか?」

 確かにティミーはまだ未成年だから、ティミー個人からではなくヴィッセラート伯爵家からのお祝いの品、として何か用意しているのだろう。

「まず、お前とカウリは同時期に竜騎士見習いとして紹介されたわけで、年齢的な事からカウリの方が早く竜騎士としての叙任を受ける事になったわけだ」

 全くその通りなので、うんうんと頷く。

「そこで、お前の身分が関わって来るんだよな」

「僕の身分……? えっと、竜騎士見習いって事以外に、僕に身分なんてないと思いますけど? あ、もしかしてマティルダ様が後見人だと何か問題ありますか?」

 慌てるレイを見て、またルークが笑う。

「まあお前の後見人がマティルダ様な事はこの場合は置いておいてくれ。お前は成人年齢になったとはいっても、まだ十代で、カウリよりもはるかに年齢は下だろう?」

 これもその通りなので、また頷く。

「だからさ、この前の結婚式の時みたいに大層な贈り物は必要ないんだ。例えば、日常使えるような筆記具や身につけるちょっとした装飾品なんかで充分なんだよ」

「えっと、ちなみにルークは何を贈ったか聞いてもいいですか?」

 思わずちょっと上目遣いになるレイを見てルークは堪えきれずに吹き出す。

「俺は、カウリと相談して馬具を一式贈らせてもらったよ。ちょうど、知り合いの革細工師の子が素晴らしい馬具を仕上げたところだったんだ。なのでそれを丸ごと一式買わせてもらったんだ」

「ええ、良いなあ」

 思わず口を尖らせてそう言うレイを見て、ルークは笑っている。

「マイリーは、実家のクームス産の宝石を使ったカフリンクスや襟飾りなどの装飾品を一式用意したって言ってたし、ロベリオ達若竜三人組は連名で、屋敷に飾る装飾用の弓矢と鎧一式を贈ったって言ってたなあ。殿下からは、ミスリルの槍を贈るんだって聞いてるよ」

「うう、もう僕が贈れそうな物がありません」

 眉を寄せるレイを見て、ルークが苦笑いしてその額を突っつく。

「だから言っただろう。そんな大層な物じゃあなくていいって。ああそうだ。この間カウリが万年筆を一本駄目にしたって言ってたから、少し良い万年筆を贈ってやるのはどうだ? 彼の事務作業は本当にすごい量だから、万年筆は何本あっても構わないよ。それならお前の友達に頼めばすぐに持って来てくれると思うぞ」

「ああ、それは良いですね。じゃあすぐに頼んでみます」

「おう、ラスティに言えばすぐに連絡してくれると思うぞ」

「分かりました。ありがとうございます!」

 そう言って積み上がった資料を整理するレイを見て、ルークがふと何かを思いついたみたいで顔を上げた。

「なあ、これも良いかも」

「ええ、何ですか?」

 持っていた資料を置いて慌てて振り返る。

「お前が作ってるまじない紐。あれはどうだ? ああいった手作りの品は、万年筆に添えてやると、きっと喜ばれると思うな。それにほら、お前がしている剣に取り付けるふさ飾り。それも最近はまた人気が出て付けている人も増えてるからさ。これも喜ばれると思うぞ」

 その言葉に、レイは驚いて自分の剣に付けているふさ飾りを見た。それから少し汚れて色が薄くなった手首に結んだまじない紐も。

「ええ、こんな物で良いんですか?」

「うん、それは良いと思うぞ」

 手首に巻くまじない紐の編み方は知っているが、このふさ飾りは作り方を知らない。

 困っていると、目の前にニコスのシルフ達が現れて得意げに揃って胸を張った。


『大丈夫だよ』

『我らが知ってるから教えてあげる』

『厄災除けの色に合わせて作るのが良いと思うね』


 口々に告げられたその言葉に思わず笑顔になる。

「うん、じゃあよろしくね」

 隣に並んだブルーのシルフも一緒になって笑顔で頷いているのを見て、贈る物が決まって安心出来たレイは、ようやく笑顔になったのだった。

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