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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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陣取り盤の精霊の事

「まさか初対面の其方達に、彼女が姿を表すとはな」

 大きなため息と共に、アルジェント卿が苦笑いしながらそう言って首を振る。

「えっと、なんだかうっかり姿を見せちゃったって感じでしたよ。ねえ」

 レイが慌てるようにそう言ってティミーを見る。

「ええ、確かに僕との勝負の途中で姿を表した時に、彼女がそんな事を言ってましたね」

 ティミーの言葉に、アルジェント卿の目が見開かれる。

「何と、彼女が無意識に姿を表すと言う事は、それほどギリギリの戦いをしたのか。さすがだな」

「ああ、確かにその通りだよ。さすがはティミーとターコイズだな」

 アルジェント卿とルークが揃って感心したようにそう言うのを聞いて、レイとティミーは困ったように顔を見合わせる。

「怖かったよね」

「うん、あれは怖かった」

 揃ってうんうんと頷き合う二人を見て、アルジェント卿とルークが首を傾げる。

「何が怖いんだよ。あの陣取り盤の精霊は、ドレスを着た小さなシルフみたいな女性だろう?」

「それの何が怖いと言うのだ?」

 ルークの言葉に、アルジェント卿も頷きながら不思議そうにしている。

 揃って無言になるレイとティミー。



『成る程。あれはあやつの本性と言うわけか。これまたずいぶんと大きな猫を被っていたものだな』

 呆れたようなブルーのシルフの言葉に、ターコイズの使いのシルフも苦笑いしながら頷いている。

「どういう事だ?」

 真顔になったアルジェント卿の前にブルーのシルフが立つ。

『では、昨夜彼らの前であやつが見せた本性を少しだけ見せてやろう』

 ブルーのシルフが軽く手を振ると、もうその瞬間にそこに立っていたのは昨夜見たあの、陣取り盤の精霊である小さな少女だった。これは幻術の一つである姿写しだ。

「お、おいおい……」

 軽く体を震わせたきり無言になるアルジェント卿を見て、慌てたようにテーブルを挟んで向かい側に座っていたルークが立ち上がり、アルジェント卿の隣へ移動した。

 そして、ルークもそのまま無言になる。

『あの精霊はこう言ったらしい。一番最初に姿をレイに見咎められた時、ああ大変、うっかり姿を見せてしまったわ、私に勝たないと、貴方達を開放してあげられなくなっちゃった。とな』

 怒りを含んだブルーのシルフの言葉に、レイとティミーが揃って顔を覆って机に突っ伏す。

『そしてべらべらと自分の楽しみを述べたあとに、部屋に我らを拒絶する結界を張りこう言った。私は静かに良い勝負がしたいだけ。出たければ私を倒しなさい、さもなくば私を納得させられるほどの戦いぶりを見せなさい。とな。そうそう。こうも言ったそうだぞ。私はただ、陣取り盤を楽しみたいだけなの』

 その言葉とともに、真顔で顔色を無くす二人を見て、レイとティミーはこれ以上ないくらいの大きなため息を吐いた。

「本気ですっごく怖かったんですから。彼女がそう言って笑って舌なめずりをした途端に、シルフがガーゴイルになったかと思ったくらいの変化だったんですから」

 思いっきり嫌そうなティミーの言葉に、レイ首がもげそうなくらいにブンブンと何度も力一杯頷いていた。



「これは驚いた。まさかそんな話は初めて聞くぞ」

「ですよね。俺も二度ほど彼女の姿を見たことがあるけど、どちらも楽しそうに笑って陣取り盤を楽しんでいたのに」

 こちらも顔を合わせたアルジェント卿とルークが揃って大きなため息を吐く。

「それで、一応聞くけどその後どうなったわけだ?」

 こちらも嫌そうなルークの問いに、鼻で笑ったブルーが元の姿に一瞬で戻る。

『もちろん、徹底的に有無を言わさず叩きのめしてやったさ。己が何に手を出したのか、心底思い知らせねばならぬからな。二度は無い』

「つまり、陣取り盤で叩きのめした?」

 ルークの質問に、ブルーのシルフは鼻で笑った。

『当然であろうが。あれでもまだ、手加減してやったのだからな』

「うわあ、あれでもまだ手加減していたんですか。怖い!」

 ブルーのシルフの言葉に、ティミーが顔を覆って叫ぶ。

「……一体どうなったわけだ?」

 恐る恐ると言った感じのルークに聞かれて、レイは無言で首を振った。

「僕はブルーに言われた通りに指していたんだけど、正直言って後半は怖かったよ。あまりにも一方的な展開に」

「彼女を相手に、そこまで出来るか。さすがは最強と名高い古竜だな。陣取り盤の腕も最強というわけか」

 何か言いたげなアルジェント卿の言葉に、ブルーのシルフが笑う。

『見たいのなら、其方達も叩きのめしてやるぞ、何なら二人同時に相手をしてやろう』

 平然とそう言われると、当然陣取り盤の腕にはそれなりの自負のある二人が黙ってはいなかった。

「そこまで言われて引き下がるほど腕は萎えてはおらぬぞ。では後ほどお相手願おう」

「俺も是非ともお願いするよ。そう簡単には負けないからな」

 予想通りの答えに、ブルーのシルフは満足気に頷き、レイとティミーはまたしても揃って顔を覆って机に突っ伏したのだった。

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