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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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密かな教えと気付き

「素晴らしい贈り物をくださった皇太后様と、お届けくださったレイルズにも心からの感謝を。戻ったらすぐにお礼のカードを書きます」

 満面の笑みのジャスミンの言葉に、ニーカとクラウディアもこれ以上無いくらいの笑顔で頷く。

「喜んでもらえて良かった。じゃあ、僕はこのお茶を頂いたらもう帰らせてもらうね。お勤めで忙しいのに抜け出して来てくれてよかった。僕の怪我のせいでしばらく会えてなかったから、皆の顔を見られて嬉しかったよ」

 淹れてもらった紅茶を飲みながら、レイも嬉しそうな笑顔になる。

 そんなレイと巫女達を横目に、タドラは先ほどから無言で考え込んでいる。

 ジャスミンは何か言いたげにそんなタドラをちらちらと見ていたが、あえて何も言わずに大人しく出された紅茶とビスケットをいただいていた。



「もう怪我はすっかり良いみたいね」

 紅茶のカップを置いたニーカの言葉に、レイは得意気に胸を張る。

「うん、もうすっかり元気だよ。朝練にも参加してるからね」

「そうなのね。元気になってくれてよかったわね、ディア」

 そう言って隣に座るクラウディアの膝を叩く。

「え、ええ、そうね」

 ぼんやりとレイを見つめていたクラウディアは、突然のニーカの行動に飛び上がって、慌てたようにそう言って頷く。

「大丈夫? ああ、ちょっとお茶がこぼれたわね」

 笑ったニーカが机の上を拭く。

「もう、驚かせないでちょうだい」

 困ったようにそう言いつつも、カップをよけてニーカが机を拭きやすいように場所を開ける。

 それから少しだけお互いの近況や訓練所での再会を約束して解散となった。



「じゃあ、お勤めがんばってね」

 手を振り笑顔で帰って行くレイを、巫女達は揃って両手を握って額に当て、跪いて深々と頭を下げて最敬礼で見送ったのだった。



「さてと、じゃあ僕は一仕事してくるから、ジャスミンはこのあとはまた、神殿でのお手伝いだね」

「はい、頑張ってきてくださいね。本当に、私が見てても危なっつかしいったらありゃしない。本当に大丈夫かしら」

「まあ、あれでもかなり改善されてるんだよ。こんな感じで一度でも経験すれば分かるみたいだから、今はとにかくいろんな事を彼に経験させるんだってルークは言ってたね」

「そうなんですね。じゃあルーク様にも頑張っていただきましょう」

 大人びた口調でそう言うジャスミンを見てタドラもうんうんと大きく頷く。

 それから、顔を見合わせて小さく吹き出して笑い合ったタドラとジャスミンだった。



「さあ、僕も帰ったらサマンサ様にお礼のカードを書かないとね。どのカードにしようかなあ」

 本部へのもうすっかり歩き慣れた道を通りながら、レイは帯飾りをお願いするのなら、誰に頼めば良いか真剣に考えていた。

 あの時ジャスミンは、わざわざ自分は持っているけれど、クラウディアとニーカは持っていないと言った。あれは恐らくだけど、自分に向かって彼女達に贈りなさい、と言ってくれているような気がしたのだ。

「ねえ知識の精霊、ちょっと教えてくれるかな。えっと、特に何もなくても、彼女とニーカに帯飾りを贈っても構わないよね?」

 レイの問いかけに目の前にニコスのシルフ達が現れる。


『その前に一つ質問』

『主様はすぐにでも贈った方がいいと思った?』


「えっと、ジャスミンがわざわざ彼女達は自分の帯飾りを持っていないって言ったでしょう。あれはもしかしたらなんだけど、こっそり僕に贈り物をした方が良いよって、そう教えてくれてるような気がしたんだ。僕は最初、今度の降誕祭の贈り物にしようと思ったんだけど、あれは普段から使うものみたいだから、出来れば早い方が良いでしょう? だからそんな改まった物よりも、普段使いに出来るような簡単な細工の物の方が良いかと思ったんだ。それなら何もなくても、持っていないって聞いたからよかったら使ってね、て感じで届けても良いかなって……思ったんだ」

 だんだん自信無さげになり、声も小さくなっていく。

 しかし目の前のニコスのシルフ達は、もうこれ以上無いくらいの満面の笑みになっている。


『主様大正解だよ』

『仰る通り!』

『ジャスミン様は主様に贈り物をした方が良いよって』

『こっそりそう教えてくれていたんだよ』

『よく気がついたね』


 最後にはブルーのシルフまで現れて揃って拍手をされてしまい、悲鳴を上げそうになって、まだここがお城の中だと気付いて慌てて背を伸ばしたのだった。

「えっと、じゃあ本部に戻ったらラスティに相談して、誰にお願いすれば良いのか聞いてみるね。あ、クッキーのところでも良いかな。それとも、宝石付きだったらドルフィン商会? ううん、巫女用の専用の道具なんだから、もしかしたら専用の商人がいるかもしれないね」

 彼女達の喜ぶ顔を思い浮かべて、レイもまた自分に出来る事を見つけて嬉しくなるのだった。

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