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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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サマンサ様からの贈り物

「じゃあ、ようやくレイルズ君も自分が持って来たこれの意味を理解したところで、とにかくいただいた贈り物を開けてみてごらん」

 ジャスミンに向かってタドラが笑いながらそう言うと、ジャスミンも軽く咳払いをして笑っていたのを誤魔化すようにして頷いた。



「贈り物に、心からの感謝を。では、一番に開けさせて頂きます」

 机の上に置かれた小さな小袋を両手でそっと捧げ持つようにして、目を閉じて小さな声でそう呟く。

 目を開いて顔を上げたジャスミンは、一度深呼吸をしてからそっと小袋を開いた。

「まあ、帯飾りだわ。なんて綺麗なのかしら」

 取り出したそれは15セルテほどの細長いやや平らな棒で、その先端部分には真っ白な生地の2セルテ角の小さな菱形の刺繍が施されたお守りが取り付けられていた。

 そのお守り部分には、両面に幾何学模様の細やかな刺繍が金茶色のごく細い糸で全面に渡って施されていて、中には綿が詰まっているのか少しだけふくらんでいるようだ。そしてその菱形の真ん中部分に縫い付けられているのは、刺繍用のごく小さな金属の台に固定された真っ赤なルビーで、小粒だが真っ赤なルビーは凛とした輝きを放っていた。そして反対側の面には、ルビーの場所に大粒のルチルクオーツのビーズが縫い付けられていた。

 また菱形のお守りの下側には、刺繍の色とお揃いの綺麗な金茶色の房飾りも付いている。

「帯飾り? えっと、それはお守りなんだよね?」

 不思議そうなレイの質問に、笑顔のジャスミンは嬉しそうにその帯飾りを両手で包むようにしてそっと撫でた。

「そうよ。お守りで帯飾りね。これはここに挿すのよ。巫女の持つ正式なお守りの一つなのよ」

 そう言って、自分のお腹部分の10セルテほどの幅の広い麻の布が巻かれたサッシュベルトの左側を示した。

 ごく薄い麻布の長いベルトを腰に三重に巻いてから左横で結んで垂らしているのだ。

 言われてみると、そのベルトにごく小さなかんざしのようなものが挿されていて、先端部分には同じような金属製の細工の入った菱形の飾りがぶら下がっていた。菱形部分の下には短いがふさ飾りも付いている。

「これは巫女が持つ正式な衣装飾りの一つよ。だけどこれは個人の品だからね。私は父上から色々と贈って頂いて沢山持っているけれど、クラウディアやニーカは、自分では買えないから先輩のお古を貸してもらって使ったりしてるのよ。正装の時には私の帯飾りを貸してあげているのよ」

 その言葉通り、クラウディアとニーカの腰のベルトに挿してあるそれは、単なる銀色の菱形の金属の板で薄茶色の短い房飾りがあるだけの簡単なものだ。

「ええ、そうなの? 知らなかったよ。言ってくれればいくらでも贈ったのに」

 多分、自分達の正装の際の襟飾りやカフリンクスのように、巫女達も装飾品の一部は個人装備なのだろう。これは是非とも次の降誕祭の時の贈り物の参考にしようと、密かに考えたレイだった。



「素晴らしいわ。なんて見事な刺繍なのかしら。これは誰にでも刺せるものじゃないわ」

 うっとりとしたため息と共にジャスミンがそう呟き、嬉しそうにベルトにそっと差し込んでみる。

「よく似合ってるよ」

 タドラの嬉しそうの言葉に、ジャスミンも嬉しそうに笑顔で頷いてそっと帯飾りを撫でた。

「ねえタドラ様、これはさすがに普段使いではなく正装の際に使うべきですよね?」

「ううん、そうだね。普段は精霊の守りを与えて保管しておいて、正装の際に使うのが良いだろうね」

 苦笑いするタドラの言葉に、ジャスミンも頷いてそっと帯飾りを引き抜いて小袋に戻した。

「ねえ、二人のはどんなのかしら?」

 ジャスミンの言葉に、呆然と彼女を見ていたクラウディアとニーカが我に返ったように目を瞬いて頷く。

 二人は顔を見合わせて頷き合って、まずはニーカが先に小袋を手にした。



「贈り物に心からの感謝を。開けさせていただきます」

 ジャスミンと同じように両手で捧げ持って小さくそう呟いたニーカだった。

 顔を上げて唾を飲み込んだ彼女も、両手で小さな小袋を開ける。

「同じ帯飾りね。私の刺繍はピンク色ね。ああ房飾りが灰色だからスマイリーの色になってる」

 嬉しそうなニーカの言葉に皆笑顔になる。

 同じく真っ白な生地に薄紅色の刺繍糸で細やかな刺繍が施されたそれには、片面にはルビーが、もう片面には大粒のロードクロサイトが縫い付けられていた。

「なんて綺麗なのかしら」

 ニーカもうっとりと何度もそれを撫でてから、嬉しそうに自分のベルトにそっと差し込んだ。

「似合ってるよ。遠くから見てもルビーの存在感はすごいね。小粒だけれど、そこまで真っ赤なルビーはそうは無いよ」

 タドラの言葉に、ニーカとジャスミンも揃って頷いて嬉しそうに手を叩き合った。



「ほら、ディアも開けてよ」

 ニーカの言葉に、まだ少し赤い顔をしていたクラウディアが最後の一つをそっと手に取った。

「贈り物に心からの感謝を。開けさせて頂きます」

 二人がしたように両手で捧げ持ってから、深呼吸をしてそっと小袋を開いた。

「ああ、やっぱり青だったわね」

 ジャスミンとニーカの声が重なり、またクラウディアが真っ赤になる。

 彼女が手にしているのは、同じ形の帯飾りのお守りで、真っ白な菱形部分には濃い青色で刺繍が施されていた。しかしその青は一色では無く時折部分的にごく薄い水色や濃い青糸で刺されている。

 房飾りも同じく白と青の濃淡の糸で作られていて、それはまさにブルーの鱗の色そのままだった。

「なんて綺麗……」

 両手でそれを持って呆然とそう呟いたきり黙り込んでしまうクラウディア。

 当然の如く、そのお守りの両面には真っ赤なルビーと、吸い込まれそうなほどの深い青色の大粒のラピスラズリが縫い付けられていた。

「綺麗ね……本当になんて見事な刺繍なのかしら」

「そうね、とても綺麗だわ」

 目を輝かせて、横から覗き込むジャスミンとニーカの言葉に、タドラとレイもこれ以上無い笑顔で揃って頷いていたのだった。

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