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蒼竜と少年  作者: しまねこ


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朝練と今日の予定

「うああ、体に見えない鎧を着てるみたいな気がする」

 いつもと全然違う柔軟体操を、それでも念入りにやっていたレイが顔を上げて情けなさそうにそう呟く。

「ああ、上手い事言うなあ。確かに怪我した後の体って最初はそんな感じだよな」

 苦笑いするルークの言葉にレイも大きなため息を吐いて頷き、またゆっくりと体を伸ばした。

 ほとんど柔軟と屈伸、それからゆっくり走っただけで朝練を終えたレイは情けなさそうに最後に大きなため息を吐いて体を伸ばした。

 それでも始めた頃に比べたら少しは体が動くようになってきた気がする。

 確かに焦らずにゆっくり戻していくしかないのだろう。

「でもやっぱり焦っちゃうよね」

 もう一度ため息を吐いたレイは、ロベリオ達と一緒に走り込みを行なっていたティミーが終わるのを待って、一緒に部屋へ戻って行った。

 軽く湯を使って着替えをしたら、まずは朝食だ。



「ううん、やっぱり体を動かした後の食事は美味しい気がします」

 食欲はすっかり戻っているレイがいつものように山盛りに料理を取ってくるのを見て、ルーク達は密かに安堵していた。

「まあ無理せずゆっくり戻せばいいよ。肋程度なら特にリハビリも必要無いしな」

 自分の左腕の怪我の時には、まず日常生活に戻るのにもかなりかかっていたのを思い出したルークが、そう言って肩を竦めて笑う。

「そうだね、じゃあ空き時間が出来たらまた訓練所を借りて運動しようっと。ああ、そういえばそろそろ日常勤務に戻るって聞いてますけど、僕、今日の予定をまだ聞いてないです」

 パンにレバーフライを二枚挟んで食べていたレイが、ふと思い出してルークを振り返ってそう尋ねる。

「おう、午前中は事務所で資料作りの手伝いを頼むよ。午後からは倶楽部に見学に行っておいで」

「えっと何の倶楽部……ああ、もしかして刺繍の花束倶楽部ですか!」

「正解。少し前にミレー夫人から、お誘いを兼ねた予定の確認連絡と一緒に招待カードが届いててね。ラスティに預けてあるから後で確認しておけよな」

「了解しました!」

 嬉しそうな笑顔になるレイに、ルークも笑って持っていたパンをちぎって口に入れた。



 午前中は言われた通りに事務所でルークとマイリーに教えてもらいつつ、マイリーが作っている資料作りを手伝って過ごした。

「レイルズは計算が早いから、手伝ってもらうと楽が出来るよ」

 出来上がった資料をまとめながらマイリーが嬉しそうにそう言って笑うのを見て、レイも嬉しくなる。

 まだまだ出来る事は少ないが、こんな風に自分に出来るんだと思える事が、少しずつでも増えていくのは純粋に嬉しかった。

「これくらいお安い御用です。いつでも言ってくださいね」

 得意気に胸を張るレイを見て、マイリーとルークも嬉しそうに笑っていたのだった。



 ルーク達と一緒に昼食を食べたあとで、事務所に戻ったところでラスティから倶楽部の招待状を渡された。

 流暢なミレー夫人の文字で、日付と会場の場所と一緒に、どうぞお気軽にお越しくださいと書かれた綺麗なカードを見てレイも笑顔になる。

「えっと、じゃあ瑠璃の館で頂いた、あのお道具箱を持って行けば良いのかな?」

「はい、ご用意しておりますので、どうぞお使いください」

 それを聞いたルークが笑って手を振る。

「おう、それじゃあ行っておいで。戻ったら、どんな風だったのか教えてくれよな」

「確かに刺繍の倶楽部の集まりは、俺達には未知の世界だなあ」

 マイリーも苦笑いしながらそう言い、揃って見送ってくれる二人に手を振って、レイはラスティと一緒に城にある倶楽部の開催される部屋に向かった。




「へえ、ここは初めて来ますね」

 ラスティの案内で到着したのは、竪琴の会などの楽器演奏の為の部屋の近くにある棟で、そこは、手工芸などの物作りを主目的とした倶楽部の集まりが開催される場所だった。

 刺繍の花束倶楽部が開催されている部屋は、黄水晶の部屋と呼ばれる、綺麗な装飾模様の入った薄茶色のタイルが壁一面に貼られたとても広い部屋だった。

 その部屋にはすでに大勢のご婦人達がいて、賑やかにおしゃべりの真っ最中だった。

 しかし中には男性の姿も何人か見えて、男性が自分一人では無いと分かったレイは、密かに安堵していた。



「レイルズ様、ようこそ刺繍の花束倶楽部の会へ。皆、待ちかねておりましてよ」

 笑顔のミレー夫人に出迎えられて、レイも笑顔で挨拶を交わした。

 ラスティが持ってきてくれたあの裁縫道具が入った箱と、それから糸が入った箱が部屋付きの執事に届けられる。

 ミレー夫人に伴われて、まずは主だった倶楽部の会員の方々と笑顔で挨拶を交わして回ったのだった。



『ふむ、なかなか賑やかな事だな。一応光の精霊達に確認させたが、悪しき気配を纏ったものはおらぬようだ。あとは頼んだぞ』

 小さくため息を吐いたブルーのシルフの言葉に、ニコスのシルフ達は胸を張って大きく頷き、早速レイの周りを飛び回っては挨拶する人達の顔と名前を覚えていったのだった。

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